映画「ルノワール」、第78回カンヌ国際映画祭で 早川千絵監督らがフォトコールと公式会見に出席 早川監督、鈴木唯を海外メディア絶賛

(2025年5月19日11:30)

映画「ルノワール」、第78回カンヌ国際映画祭で 早川千絵監督らがフォトコールと公式会見に出席 早川監督、鈴木唯を海外メディア絶賛
フォトコールに出席した㊧から石田ひかり早川千絵監督、鈴木唯、リリー・フランキー(©Kazuko WAKAYAMA)

第78回カンヌ国際映画祭でコンペ部門に出品されている映画「ルノワール」の早川千絵監督、主演の鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキーが17日(現地時間)、フォトコールと公式会見に出席した。現地からのオフィシャルレポートを公開――。

17日(現地時間)、コンペティション部門での公式上映を無事に終え、約6分間ものスタンディングオベーションで称えられた『ルノワール』(英題:REINOR)。翌日の18日には、早川監督をはじめ、主演の鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキーがフォトコールと公式会見に出席した。本作は、最高賞である「パルム・ドール」を競うコンペティション部門に選出された唯一の日本映画で、昨日のワールドプレミアを経て、早速海外メディアから「エレガントで思慮深い作品」(Screen Daily)、「ニューカマーである鈴木唯の演技がまばゆく美しい」(The Hollywood Reporter)などと絶賛の声が上がっている。

晴天に恵まれたカンヌ。真っ青な青空をバックに、変形の白いシャツと黒のパンツという装いに身を包んだ早川監督、大きな白襟が特徴的な紺色のワンピースで可憐な雰囲気の鈴木、淡いグリーンの模様の着物の姿の石田、セットアップに揃いの黒いハットを装ったリリーの4名がフォトコールの場に登場。

映画「ルノワール」、第78回カンヌ国際映画祭で 早川千絵監督らがフォトコールと公式会見に出席 早川監督、鈴木唯を海外メディア絶賛
早川千絵監督㊨と鈴木唯(©Kazuko WAKAYAMA)

昨夜の熱狂そのままに世界各国から集まった大勢のスチールカメラマンやマスコミ陣から、激しいフラッシュを浴び、シャッターが切られた。特に、早川監督と鈴木には「チエ!」「ユイ!」などとの呼び声が集まり、飛び交う目線やポーズのリクエストに、2人は笑顔を見せた。また、石田、リリーもリラックスした様子で手を振りながらマスコミの撮影に応じた。

■公式記者会見、早川監督「子どもが主役の映画を撮りたいという思いを、今回、実現させることができました」

映画「ルノワール」、第78回カンヌ国際映画祭で 早川千絵監督らがフォトコールと公式会見に出席 早川監督、鈴木唯を海外メディア絶賛
記者会見に出席した㊧から石田ひかり、鈴木唯、早川千絵監督、リリー・フランキー(©Kazuko WAKAYAMA)

続いて、パレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレで行われた公式記者会見には、プロデューサーの水野詠子、Jason Gray、Christophe Bruncherも出席した。
本作の制作意図を尋ねられた早川監督は、「私が映画を撮りたいと思い始めたのは、『ルノワール』の主人公・フキと同じぐらいの年頃でした。その時に抱えていた気持ち、感覚をいつか絶対に映画にしたいと長年思ってきました。いつしか、子どもが主役の映画を撮りたいという思いを、今回、実現させることができました」と万感の表情。
また、「子ども時代というのは、自分が何を感じているのか、起きているのかをなかなか言語化できない時期だと思うんです。当時、感じていた何か分からなかったものを、大人になって段々と分かってきて、自分は寂しかったんだ、哀しかったんだ、傷付いていたんだという気持ちを描きたいと思いました」と本作に込めた感情を明かした。

続いて、早川監督と現場でどのようなやり取りがあったのかと質問を受けた鈴木は、「早川監督と一緒にフキちゃんの行動や考え方を話し合いました。監督と私は相性が良かったんじゃないかなと思うほど、スポン、スポンとピースがはまっていくような感じでした」と堂々と回答。

早川監督は、「唯ちゃんにはディレクションをしなくても、彼女が自然にそのままのお芝居でやってくれたものがほんとうに素晴らしかった」と絶賛、そして、「彼女が言う通り、私たちはとても相性が良かったです。フキという少女について、私と唯ちゃんは誰よりも彼女のことを理解していたので、撮影の中盤からは何も説明してなくても分かるから大丈夫だという状況になっていました」と振り返った。

セリフが少なく、出演者の演技から多くを感じ取る作品であると評したジャーナリストから、キャスティングについて聞かれた早川監督は「フキはキャスティングがとても重要になると考えていたので、見つかるまでとにかく何百人でもオーディションを続けようと臨んだのですが、鈴木唯ちゃんが一番最初にオーディションに現れた瞬間、“ここにフキが居る”と思い、すぐに決まってしまいました」と衝撃の出逢いだったことを明かした。

今回、三度目のカンヌ国際映画祭の参加となったリリーは、「昨日、レッドカーペットを歩いている時、この映画そのものが出演しているような感覚がありました。映画『ルノワール』が温かく受け入れられ、評価されたことがとても嬉しかったです。皆で楽しくレッドカーペットを歩くことが出来たのも印象的です。この映画は、特定の国や文化を超えて、誰の心にも響くものがあると思います。登場人物の記憶や、子どもの頃の思い、もしくは後悔や自分自身の感情などいろいろな感覚を呼び起こしてくれます。私自身、この映画の大ファンとして、みんなと共にレッドカーペットを歩けたこと、そして多くの方に観ていただけたことをとても嬉しく思っています」と笑顔を見せ、手ごたえを感じていると振り返った。

早川監督は、海外のメディアから、劇中に“ルノワール”の絵画が登場することについて尋ねられると、「私が子どもの頃に、西洋美術の絵画がとても人気で、あらゆるところでレプリカが売られていました。偽物の絵画なのに、すごくゴージャスで、額縁に入れられていて。劇中にも出てくるイレーヌの少女の絵は、私も憧れて、父親にねだったという思い出があるんです。自分自身の子どもの時代と80年代後半の当時の日本の社会への郷愁もあり、そういった理由であの絵が登場します」と理由を明かした。

また、ロケーションについての質問には、「80年代後半の町の面影のある場所を探していたところ、本作の撮影監督を務めている浦田秀穂さんから、ご自身の生まれ故郷である岐阜市を提案してもらいました。実際にロケハンで伺ってみたら、求めていた雰囲気があり、80年代の建物も残っていてとても美しい町並みだったんです。特に魅力的だったのは、長良川が流れていることです。とてもシネマティックでここしかないなと思い、岐阜で撮影することを決めました」と回答。
これは子どもの目線の映画なんだとはっきり意識するわけではないが、気付くとその目線に惹き込まされたというメディアは、カメラのアングルなどこだわった点について質問され、早川監督はカメラと被写体の距離感が重要だと考えたそうで、「被写に対して非常に近い距離ではあるのですが、決して近すぎない絶妙な距離を保つようにしています。また、カメラの奥行きも大切にしました。映像に深みを持たせることで、画面に映るものの意味や重要性が観客に自然と伝わるようにしたかったのです」と答えた。また、「この作品には説明的な要素があまりないため、観客が感じ取れるリズムも意識しました。私自身が好きな映画のリズムというものがあり、それをベースに構成しています」とこだわりを明かした。

日本のメディアからは、国際共同製作というのがもたらしたメリットについて質問されると、プロデューサーの水野は、「今回の映画は、日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタールと皆さんの協力があって出来上がった作品です。もちろん資金の面での協力もありますが、それよりもクリエイティブな意味で非常に大きな協力関係を得られたと思います」と回答。
早川監督の作品をプロデュースすることになった経緯について、水野は、「早川監督がシネフォンダシオン部門で『ナイアガラ』が上映された際に出会ったことがきっかけで、本作を入れて三度目のコラボレーションをさせていただいております。人間の魅力、在る姿を作り込むのではなく、非常にオーガニックに描き、在るがままに表現されるところに魅力を感じています」と語った。

また、ジェイソン(Jason)は「水野さんが仰ったように、私たちは長い間一緒に仕事をしてきて、その関係は映画を重ねるごとにより豊かで深いものになっています。私は、早川監督が真の作家主義の映画監督だと信じています。音やビジュアル、演出といった当然の要素だけでなく、ポスターやサウンドトラックなど細部に至るまで、彼女は全てにおいて、こだわり、携わっています。彼女のような、緻密なビジョンを持つ監督と一緒に仕事ができるのは光栄なことです。そして、早川監督の映画を、私たちのすべてのパートナーと共に、同じチームとして世界中の観客に届けられることもまた大きな喜びです」と感謝を述べた。

そして、クリストフ(Christophe)は、「以前から、水野さん、ジェイソンさんのことはよく知っていて、一緒に仕事がしたいと思っていました。彼らはクリエイティブなプロデューサーです。そして、日本とヨーロッパの架け橋をつくる能力があります。だから、本作のプロジェクトが効率的な国際共同製作になると確信していました」と語り、参加した理由を語った。

映画「ルノワール」、第78回カンヌ国際映画祭でワールドプレミア 早川千絵監督、鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキーが参加 6分間のスタンディングオベーション
「ルノワール」ポスタービジュアル

【作品情報】
高齢化社会が深刻化した近い将来の日本を舞台に、75歳以上の国民に生死の選択を迫る衝撃的な物語を描いた『PLAN 75』から3年――。待望の最新作『ルノワール』で綴られるのは、80年代後半の夏、闘病中の父と、仕事に追われる母と暮らす11歳の少女・フキの物語。主人公・フキを演じるのは多数の候補者の中からオーディションで抜擢された、驚異の新人・鈴木唯。役柄と同様 11 歳だった彼女の、真っ直ぐに大人を見つめる視線、この年齢ならではの自然な躍動感、時折見せる寂しげな表情など、スクリーン一杯に広がる瑞々しい演技に誰もが心奪われる。フキの母・詩子役に石田ひかり、父・圭司役にリリー・フランキーと、数々の映画賞を受賞してきた名優に加え、フキが出会う大人たちには、中島歩、『PLAN 75』に続き河合優実、そして坂東龍汰ら大ブレイク中の若手実力派俳優陣が出演する。
マイペースで想像力豊かな主人公・フキは、事情を抱えた大人たちと触れあう中で、11歳の小さな体に宿る“うれしい・楽しい”という感情をむくむくと膨らませていくが、時折見せる子供特有の残酷な一面や鋭い視線にどきりとさせられることも。早川監督は、少女が積み重ねていく感情のひだを細やかに描写すると共に、大人たちの人生のままならなさや、人間関係の哀感を温かなまなざしとユーモアを持って描き出した。観客は自分にも覚えのある子どもならではのひりひりとした感情と、今の自分に似た大人たちの孤独や痛みに共感し、激しく心を揺さぶられるだろう。

【STORY】
1980 年代後半のある夏。11 歳のフキは、両親と3人で郊外の家に暮らしている。ときには大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性をもつ彼女は、得意の想像力を膨らませながら、自由気ままに過ごしていた。ときどき垣間見る大人の世界は、複雑な感情が絡み合い、どこか滑稽で刺激的。闘病中の父と、仕事に追われる母の間にはいつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常も否応なしに揺らいでいく――。

【CREDIT】
出演:鈴木唯 石田ひかり 中島歩 河合優実 坂東龍汰 / リリー・フランキー Hana Hope  高梨琴乃 西原亜希 谷川昭一朗 宮下今日子 中村恩恵
  プロデューサー:水野詠子 Jason Gray 小西啓介 Christophe Bruncher Fran Borgia
製作:ハピネットファントム・スタジオ ローデッド・フィルムズ 鈍牛俱楽部 KINOFACTION テンカラット Ici et Là Productions/Akanga Film Asia/Nathan Studios/Daluyong Studios/ARTE France Cinema/KawanKawan Media/Panoranime
企画・制作:ローデッド・フィルムズ 制作協力プロダクション:キリシマ1945
  製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ 助成:文化庁文化芸術振興費補助金(国際共同製作映画)
2025年/日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタール/122分/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/日本語、英語/英題:RENOIR/G
© 2025「RENOIR」製作委員会 / International Partners
公式HP:https://happinet-phantom.com/renoir/
公式X:https://x.com/renoir_JP 公式Instagram: https://www.instagram.com/renoir_JP/ #映画ルノワール
6月20日(金) 新宿ピカデリー他全国ロードショー