「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開

(2024年10月22日9:15)

ノアール映画の傑作ジョゼフ・H・ルイス「暴力団」ほか日本未公開7作を含むギャング・ノアール全15作品を一挙公開する「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」が 11 月 8 日(土)より新宿 K’s cinema にて開催される。

「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
 「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ポスタービジュアル

本映画祭の開催にあたって、映画評論家の吉田広明氏よりコメントも到着した。初日の11月8日(土)には吉田広明と同じく映画評論家の上島春彦によるトークイベントも開催される。

■映画評論家・吉田広明氏のコメント

「犯罪を描く映画としてギャング映画の後継となったのがフィルム・ノワールということになるが、その中に現れるギャングは 30 年代の最盛期にあった陽性の爆発力を失い、彼らの暴力は暗く、陰湿なものとなって ゆく(『復讐は俺に任せろ』や『暴力団』)。ギャング自身が自己破滅/破壊的な存在だったり(『ギャングス ター』、『ラケット(脅迫者)』)、ギャング(というかこの場合はその弁護士)にも同情の余地があり、必ずしも黒白が明確でなかったり(『悪の力』)、ギャング・ノワールは限りなく灰色の世界に近づく。ギャング 組織に潜入する捜査官の孤独(『国境事件』)、誰が敵か味方か分からない疑心暗鬼の世界(『その女を殺 せ』)。ギャングへの復讐心ゆえに揺らぐ、刑事とギャングの境界線(『復讐は俺に任せろ』)。ノワールに 侵食されたギャング映画=ギャング・ノワールが湛える闇は、ノワール以上に暗く、淀んでいる。」

30 年代の不況期に一斉を風靡したギャング映画。その後、犯罪、性、暴力、およびその他 の物議を醸す主題の描写が禁止された自主規制=ヘイズ・コードにより、ギャング映画は一 気に衰退の一途をたどるが、その流れは途絶えることはなく、B 級映画専門の制作会社を 中心に続々と制作されることになる。のちにフィルム・ノワールと呼ばれる作品群がそれだが、今回の上映は、1940~50年代に制作されたフィルム・ノワールのなかでギャング映画に 焦点を当てた15 作品を一挙上映する。

「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
 『暴力団』 The Big Combo(1955)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
『悪の力』 Force Of Evil(1947)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
 『身代金誘拐事件』 World For Ransom(1954)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
『秘密調査員』 The Undercover Man(1949)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
『闇の波止場』 The Mob(1951) 
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
『ギャングスター』 The Gangster(1947)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
『ラケット(脅迫者)』 The Racket(1951)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
 『犯罪王デリンジャー』 Dillinger(1945)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
 『復讐は俺に任せろ』 The Big Heat(1953)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
『ギャングを狙う男』 99 River Street(1953)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
 『国境事件』 Border Incident(1949)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
 『替え玉殺人計画』 His Kind Of Woman(1951)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
 『情無用の街』 The Street With No Name(1948)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
『土曜日正午に襲え』 Crime Wave(1953)
「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」ギャング・ノアール全15作品を一挙公開
『その女を殺せ』 The Narrow Margin(1952)

まずは『拳銃魔』で知られるジョセフ・H・ルイス監督のもう 1 つの代表作にして傑作『暴力団』がスクリーンに登場。日本未公開作としては、同じくルイスの『秘密調査員』、マーチン・スコセッシにも影響を与え たというエイブラハム・ポロンスキー監督『悪の力』、ロバート・アルドリッチの長編2作目『身代 金誘拐事件』、ブロデリック・クロフォードが刑事を演じる、ロバート・パリッシュ『闇の波止場』、 幼なじみの 2 人がギャングのボスと敏腕警部として対決する犯罪アクション『ラケット(脅迫 者)』、名匠 A・マンによる『T メン』のセルフリメイク作『国境事件』、前半の出来を気に入らなかった製作の RKO 社長ハワード・ ヒューズが後半をリチャード・フライシャーに変えて監督したという『替え玉殺人計画』。全7作品が上映となる。

その他、実在のギャング、ジョン・デリンジャーを描き大ヒットしたモノグラム・ピクチャー製作、マックス・ノセック監督『犯罪王デリンジャ ー』。モノグラムのキング兄弟がその成功に気をよくして作ったゴードン・ウィリス監督『ギャングスター』。言わずとしれた名作フリッツ・ ラングの『復讐は俺に任せろ』。リチャード・フライシャーの出世作『その女を殺せ』。フィル・カールソン『ギャングを狙う男』、ウィリア ム・キーリー『情無用の街』、アンドレ・ド・トスによる後期ノワールの佳作『土曜日正午に襲え』がラインナップ。 これを逃すといつスクリーンで観ることができるのか分からない、貴重なギャング・ノワールの作品群が揃った。

■「アメリカン・ギャング・ノワール映画祭」開催概要
場所:新宿 K’s cinema 東京都新宿区新宿3丁目35−13, Showakan-Bld, 3F
日程:2025 年 11 月 8 日(土)~12 月 5 日(金)
★開催記念トークイベント 11/8(土)『暴力団』14:30 回 上映終了後 登壇:上島春彦(映画評論家)、吉田広明(映画評論家)
【上映作品】
『暴力団』 The Big Combo(1955)
『悪の力』 Force Of Evil(1947)★
『身代金誘拐事件』 World For Ransom(1954)★
『秘密調査員』 The Undercover Man(1949)★
『闇の波止場』 The Mob(1951)★
『ギャングスター』 The Gangster(1947)
『ラケット(脅迫者)』 The Racket(1951)★
『犯罪王デリンジャー』 Dillinger(1945)
『復讐は俺に任せろ』 The Big Heat(1953)
『ギャングを狙う男』 99 River Street(1953)
『国境事件』 Border Incident(1949)★
『替え玉殺人計画』 His Kind Of Woman(1951)★
『情無用の街』 The Street With No Name(1948)
『土曜日正午に襲え』 Crime Wave(1953)
『その女を殺せ』 The Narrow Margin(1952)
(★…日本未公開)
配給:アダンソニア 宣伝・配給協力:ブライトホース・フィルム 協力:ブロードウェイ、仙元浩平 デザイン:千葉健太郎 字幕 (『暴力団』):上條葉月