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映画
“ロ-リング・ストーンズの女”「アニタ 反逆の女神」 公開初日トークイベントに立川直樹氏と浅野順子氏登壇
(2025年10月26日11:00)

ローリング・ストーンズのミューズとして知られるアニタ・パレンバーグのドキュメンタリー映画「アニタ 反逆の女神」が25 日、東京・新宿 K’s cinema、UPLINK 吉祥寺他にて公開初日を迎え、新宿 K‘s cinema では、プロデューサー、ディレクターの立川直樹さんと、画家、モデルの浅野順子さんによるトークイベントが行われた。オフィシャルレポートを公開――。
第 76 回カンヌ国際映画祭クラシック部門で上映された本作の主役の「ロ-リング・ストーンズの女」アニタ・パレンバーグ。 始まりはブライアン・ジョーンズとの恋、ブライアン没後はキース・リチャーズと運命的な絆を結び3人の子をもうける。そして 映画で共演したミック・ジャガーをも虜にしてしまう魔性の女。 しかし彼女は単なる彼らの「女」ではない。 創造の源となり、ファッションを一変させ、音楽そのものにかかわり、誰の影にもならず自分を生きた”反逆の女神”が当時の映像やキースらのインタビュー、そしてスカーレット・ヨハンソンの声(アニタの回顧録の言葉)で蘇る。
■立川直樹氏「彼女は自由に人生を、何も後悔せずに生きた。その生き様がよかった」

立川さんと浅野さんは1歳違いの同世代。立川さんが「あれを(映画の中のような事を)やっていたら、写真週刊誌がすぐ撮ったり、今なかなか不自由な時代になっているので(笑)。そう考えたら、その時代をここまで見事に切り取った映画ってすごいなと思う。たぶん女性監督2人が撮っているからか、質問の答えとか、男性の監督だったらこうは 撮れないなと思うところがあった。それは見どころです。そして編集が針仕事をするように細かいと思う。どうでしたか?」と浅野さんに聞くと、「私もそうなんですが、彼女は自由に人生を、何も後悔せずに生きた。その彼女の生き様がよかったです」と語る。立川さんはまた「ロックンロールをやる、ファッション、映画、アートをやるという と、それは僕らの世代では反社会的というか、一般社会でもう生きていく気がないんだねという事だったよね」と当 時の状況を語った。
アニタをいつ知ったのか?という立川さんの問いかけに浅野さんは「実はあまりよく知らなかったんです。この作品で状況も含めてよくわかったかな、という感じです。それまでも女性の存在というのは、いろいろ聞いていたけれど、アニタの存在をあからさまに知ったのは、今回初めてです」と話す。
立川さんが「アニタ・パレンバーグ、マリ アンヌ・フェイスフル、ニコが、僕はエキセントリック・ビューティーの極みだと思っている」と話すと「男の生き方とは違いますね。女の人というのは途中で妊娠したり、いろいろな覚悟を持って生きなければならない事がどんどん増えてくる。彼女の生き方は、子供の事、相手の事も考えているのだと思うが、自分の生き方に熱心で、自由に生きられたのではないかと思う。でも結果後悔がなく、あの様に生きられたというのは、人生にとってとても素晴らしい 生き方をされたなと思います。なかなかできないですからね」と浅野さんは答える。
「存在が女優とかモデルであるのを超えてしまって、いわゆるアイコンという言い方が、これほど似合う人はいないですね」という立川さんの問いかけに 「そうですね。最後のファッションショーに出てきた顔なんか、自信に満ち溢 れていて、素晴らしいなと思います。最後が良ければ、いいんじゃないかなと思いました、自分の人生を自分で恥じることはないと思います」と浅野さんらしい返答が。
アニタは美容整形が嫌いだということに立川さんが触れると、浅 野さんも「私もダメです。まあ痛いのが嫌いだということもありますが(笑)」と 共感していた。「MTVが 81 年に出て来てから後のロックの人たちって、ミック・ジャガーやキース・リチャーズがメイクしたのと、いわゆるビジュアル系の人たちがメイクしたのと、全然違うんですよね」という立川さんに、「そう思います」と浅野さんが答える。「この 映画を見ていて、何しろ覚悟っていうのがね」というと浅野さんも受けて「そうですね、覚悟があれば、最後には笑えると思う」と話す。
映画の作り方に関して立川さんは「描かれる時代は古い、60年代とか70年代なんだけど、作り方は全然今の時代とコミットする作り方をしているところがあって、すごくうまいと思う。勇気を貰えると思う」と語り、浅野さんは 「若い方にもどんどん見てほしいですね。ただ勘違いさえしなければ、ですが」と笑う。
■浅野順子氏「ブライアン・ジョーンズが一番好きだった。自分の子供にもみんな“ブライアン・ジョーンズカット”にしていたぐらい」

1963年に27歳の若さで死去したスト-ンズの初代リーダーでギタリストのブライアン・ジョーンズについて、立川さんが、「同世代の女性に聞きたいんだけど、ブライアン・ジョーンズに会って、 (アニタが)ひとめぼれするじゃないですか。ひとめぼれする瞬間って、どういう事が一番大きな要素なんですか?」と聞くと、「なんなんだろう、やっぱり色気かしら。その人が持っている…私もブライアン・ジョーンズが一番好きだったのですが。自分の子供にもみんな“ブライアン・ジョーンズカット”にしていたぐらいなので。彼がもし今でもいたら、音楽性も全然変わっていたのではないかと思う。そういう芸術的な部分で、アニタは見抜いたんだと思います。他のメンバーとは違う存在だった」と浅野さんは語る。
「アンドリュー・ルーク・ オールダムがミック・ジャガーをメインにしてやって行こうと決めた時 に、少し芸能系のノリが入ってきて、ミックもその辺は心得ていたんだと思う。ブライアン・ジョーンズの、少し世の中に背を向けた感じは、 ピンク・フロイドのシド・バレットと少し似ている感じがする。そのブライアンのあと、アニタはキースに行くじゃないですか。周囲に何を言われてもさらっとそうする」と話す立川さんに「自分の生き方に正直なんだと思いますね。そう思われようが、そういう事は彼女には関係ない んじゃない?すごいですね」と浅野さんは笑う。
また、アニタのすごい点として「女優になった時、演技のセンスが従来の女優のセンスじゃないところがあります。表に出た時に自分をどう見せるかっていうのを、浅野さんも考えると思うんですが、どうですか?」とういう立川さんの質問には浅野さんは「あまり考えない。もうこのままです。いいか悪いかわからないけれど、このまんま」と爽やかに答えた。
続いて立川さんからの「映画は何が好きなんですか?」という問いに「息子(浅野忠信さん)の映画かな?」と浅野さんは答え、最近作の映画『レイブンズ』が面白いという話題になる。「今、日本の俳優さんの方がロックなんだよね」という立川さんに、浅野さんは「そうですね。リアルな感じがしますよね」と返答。日本のロックバンドの話、 昔の女優の話、アニタと関係の深かったマリアンヌ・フェイスフルの話等、尽きぬ話題で盛り上がり、楽しいトークの時間は終了した。

【作品内容】
アニタ・パレンバーグ(1944-2017)は、ローリング・ストーンズのミューズであり共作者、女優、モデル、ボヘミアン・ロック・シックを生み出したファッションアイコン、そして愛情深い母親でもあった。 1960 年代から 70 年代の文化や風俗に多大な影響を与えた彼女の、波乱に満ちた人生が明らかになる。彼女は1965 年ストーンズの公演を観に行き、リーダーのブライアン・ジョーンズと恋に落ちる。横恋慕するキース・リチャー ズ、映画で共演したミック・ジャガーも彼女のとりこに。ブライアンの死後、キースとの間に三児をもうけるが末っ 子を生後10か月で亡くす。ドラッグの問題もあり逃げるように引っ越しを繰り返すファミリーには、さらなる決定的 な悲劇が待っていたー。しかし嵐の渦巻く地獄からアニタは不死鳥のごとくよみがえるー。 本人の死後発見された未発表の回顧録の言葉(声:スカーレット・ヨハンソン)を用いながら、息子マーロン、娘ア ンジェラ、そして彼らの父キース・リチャーズが、愛おしくも痛切な家族の秘話を語る。先ごろ(2025 年 1 月 30 日)亡くなった、ミックの恋人でありアニタと親友でもあったマリアンヌ・フェイスフル、アニタを崇拝するケイ ト・モスらがアニタの影響力のとてつもない大きさ深さを物語る。 未公開のホーム・ムービーや家族写真から浮かび上がる、ストーンズと過ごした激動の日々とその後の年月。アニ タ・パレンバーグは常に状況に立ち向かい新しい価値観を創造する女性だった。 監督は、アレクシス・ブルームとスヴェトラーナ・ジル。本作は、息子マーロン・リチャーズが母に捧げるべく製作総指揮を務めた。




アニタ・パレンバーグ
1942年生まれのイタリア系ドイツ人のモデル、俳優、ファッションアイコンであり、1960-70 年代のロック文化に おける象徴的存在。多言語を操り、反体制的で自由奔放。彼女は、自身のペルソナとクリエイティビティで時代を 体現した先駆者。彼女がいなければ、ローリング・ストーンズのイメージも、ロックとファッションの結びつきも 大きく違っていたかもしれない。周囲からは「ミューズ」「It Girl」「ロック界のワルキューレ」と称された。2017 年没。
【クレジット】
『アニタ 反逆の女神』
第 76 回カンヌ国際映画祭クラシック部門正式出品
監督:アレクシス・ブルーム/スヴェトラーナ・ジル
出演:アニタ・パレンバーグ/キース・リチャーズ/マーロン・リチャーズ/アンジェ ラ・リチャーズ/ケイト・モス/フォルカー・シュレンドルフ/スタニスラス・クロソウス キー・ド・ローラ/サンドロ・スルソック/ジェイク・ウエバー/ブライアン・ジョー ンズ/ミック・ジャガー/マリアンヌ・フェイスフル/ジェーン・フォンダ/ジェイムズ・フ ォックス/アレン・ギンズバーグ/ジャスパー・ジョーンズ/アンディ・ウォーホル
声の出演:スカーレット・ヨハンソン
2024 年/アメリカ/英語・フランス語・ドイツ語/113 分/1.78:1/ 原題:CATCHING FIRE: The Story of Anita Pallenberg/日本語字幕:福永詩乃
©2023 Brown Bag Productions, LLC
2025年10月25(土)より、新宿 K’s cinema、UPLINK 吉祥寺他にて公開中