「孤狼の血」やくざ社会にどっぷりつかったマル暴刑事を役所広司が熱演

(2018年5月17日)

  • クリス・プラット
  • 「孤狼の血」
    (TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

暴力団の抗争の中に身を投じて破天荒な捜査を続ける暴力団担当の刑事の活躍を描いた袖月裕子の小説「弧浪の血」を、役所広司、松坂桃李、真木洋子、江口洋介、ピエール瀧ら豪華キャストで白石和彌監督がメガホンを取った話題作。12日から公開されて興行収入20億円を見込むヒットだという。

昭和63年、暴力団対策法成立直前の架空の都市呉原が舞台。新たに進出してきた広島市の巨大組織・五十子会系の加古村組と地場の「尾谷組」との構想の火種が燻る中、「加古村組の関連企業の金融会社の社員・上早稲(駿河太郎)が失踪する事件が起きる。殺人事件とみた暴力団担当刑事・大上(役所)は、新人刑事の日岡(松坂)とともに捜査を開始する。

暴力団相手に「警察は何をしてもいいんじゃ」とうそぶきぼこぼこにしたり、暴力団から金を受け取り癒着するなどほとんど違法の強引なやり方をやめさせようとしながら、しだいに大上に巻き込まれてゆく日岡。そうしたなか、加古村組組員・吉田(音尾琢真)による、クラブママ・里佳子(真木)の恋人の尾谷組組員・タカシの殺害事件が勃発。暴力団抗争がドラスティックに展開して衝撃的なラストが待ち受けるというストーリー。

広島弁が飛び交い暴力団同士が激しくぶつかり合い、やや暗く粗いトーンの映像、事件の説明のナレーションなどは「仁義なき戦い」シリーズを彷彿とさせる。ただ、この作品はやくざ社会にどっぷりつかった刑事・大上と彼の捜査スタイルに疑問を感じ、監視して上司に報告しながらも、一方では次第に大上に思い入れをしてゆくまじめな新米刑事の2人が軸になっているところがみどころだ。幹部役の石橋蓮司、伊吹吾郎、嶋田久作、江口洋介、竹野内豊や鉄砲玉の中村倫也、また滝藤賢一ら警察側の俳優陣、クラブママ役の真木などが熱演している。
(5月12日公開)