「共犯者たち」李明博、朴槿恵政権の露骨な言論弾圧とジャーナリストの壮絶な闘い

(2018年12月22日)

  • 共犯者たち
  • 「共犯者たち」(ポレポレ東中野)

韓国の李明博政権、朴槿恵政権の9年間にわたる露骨なマスメディアへの政治介入に対して報道の自由を守るために闘い続けたMBC、KBCを中心とした記者やキャスターたちの活動を記録した迫真のドキュメント。

元MBCのプロデユ―サーで、政権に批判的な報道をしていた同局の番組「PD手帳」から外され、170日ストライキで解雇されたが、その後非営利独立メディア「ニュース打破」で調査報道を続けたチェ・スンホ氏が監督を務め、自らの突撃取材で政権の言論弾圧を暴きジャーナリストたちの闘いを追跡する。

2008年、米国産牛肉BSE問題などの報道で国民の支持を失いかけた李政権は、公共放送局のKBSとMBCの人事に介入して政権に批判的な経営陣を一掃して、調査報道チームは解散させられ、記者たちは非制作部門に異動された。両局の労組はストライキで対抗するが、政権が送り込んだ経営陣は容赦なく解雇や懲戒処分を繰り返す。

そして修学旅行中の高校生ら299人が死亡した「セウォル号沈没事故」(2014年4月)で現場の記者の報告を無視して「全員救出」の大誤報を流すなど政権寄りの報道を続け政権の広報機関になってしまう。それでもあきらめないジャーナリストたちは、市民の支援で立ち上げた独立メディア「ニュース打破」で、「主犯」の大統領と「共犯者たち」の実態を暴露していく。昨年5月に文在寅政権になってからスンホ氏はMBCに社長として復帰したという。

テレビ局の前に装甲車と機動隊を配置し局内に私服警官を動員してまで、政権に批判的な社長を解任する理事会を強行するなど李明博政権、朴槿恵政権のマスメディアへの政治介入の露骨な実態が次々に暴露していく。そして、はたして日本でも対岸の火事ではないと考えさせられるドキュメントだ。(2018年12月1日公開)