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「SHADOW 影武者」  チャン・イーモウ監督の凄みが増した戦国時代劇

(2019年9月6日)

「SHADOW 影武者」  チャン・イーモウ監督の凄みが増した戦国時代劇
「SHADOW 影武者」(TOHOシネマズ新宿)

「紅いコーリャン」(1987年)、「初恋の来た道」(1999年)、「HERO」(2002年)、「グレートウォ-ル」(2016年)など数々の名作、ヒット作で知られ、2008年北京オリンピック開会式の演出を担当した中国の巨匠・チャン・イーモウ監督の最新作。「私は長い間、影武者についての映画を作りたいと思っていた。自分が本当に撮りたい物語に巡り合った」と語ったという今作は、重臣の影武者として生きる男の生きざまを描いて監督の新境地を見せている。

■ストーリー

時は戦国時代。弱小の沛(ペイ)国は、20年前に領土の境州を強大な炎国に奪われ、休戦協定を結んだ。若き王(チェン・カイ)は屈辱的だが平和な日々に甘んじていたが、重臣の都督(トトク=ダン・チャオ)ら開戦派は不満を募らせ、境州の奪還を狙っていた。そうしたなか、都督は王の許しを得ずに、炎国の楊蒼(ヤン・ツァン)将軍に境州での対決を申し込み、王は激怒するが、国民からも敬愛される名将・都督に強くは言えず妹の反対もあって重罪にはせず、琴の名手の都督と妻の小艾(シャオ・アイ=スン・リー)の)合奏を命じる。しかし小艾は「境州が戻るまで琴は弾かないと天に誓った」とかたくなに拒否する。実は都督は刀傷が原因で病になり表舞台には立てず、王の前にいるのはそっくりな影武者(ダン・チャオが二役)だった。

都督は小艾と共に密かに影武者に傘を使った武術の秘技を教え、「楊蒼を殺せば自由の身にする」と約束する。8歳の時に母親と生き別れになり都督の叔父に拾われて影武者に育てられた彼は、自由の身になるために、どんな相手も三太刀で瞬殺する楊蒼との決死の闘いに立ち向かう。それと同時に開戦派の田戦(ティエン・チャン=ワン・チエンユエン)は密かに集めた部隊を率いて境州に潜入して奪還の戦いを繰り広げる。

■みどころ

雨が降って霧が漂う峡谷に囲まれた城や兵士たちの映像が水墨画のようで、戦国時代の陰鬱な雰囲気を醸し出す。クライマックスで開戦派の田戦が率いる軍団が、鎌のような鋭利な刃物を傘の形状に装着した特殊な武器で敵陣に乗り込む斬新な戦闘シーンは圧巻だ。そして自由の身を求めて命懸けで闘う影武者の孤独と情念と野望。謀略と裏切りが絡み合い二転三転する展開もあり、一段と凄みを増したチャン・イーモウ監督の世界を感じさせるエンターテインメントになっている。
(2019年9月6日公開)