Plusalphatodayツイッター

「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺していない」金正男暗殺事件の闇に迫った迫真のドキュメント

(2020年10月12日11:30)

「わたしは金正男を殺していない」金正男暗殺事件の闇に迫った迫真のドキュメント
「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺していない」(© Backstory, LLC. All Rights Reserved./ 配給:ツイン)(10月10日(土)~シアター・イメージフォーラムほかにてロードショー)

2017年2月13日、マレーシアのクワルンプール国際空港で起きた金正男暗殺事件の闇に迫ったドキュメント映画。北朝鮮の金正恩委員長の異母兄の金正男氏が、猛毒の神経剤VXを顔に塗られて直後に死亡するという手口の詳細や2人の女性がいかにして北朝鮮の工作員によって実行犯に仕立て上げられたのかなど、2人の女性のインタビューもまじえて再現し事件の闇に迫った迫真のドキュメント映画。監督はセックス・セラピストの波乱の人生を描いた「おしえて!ドクター・ルース」(2017年)、若い修道女の未解決殺人事件の真相を追跡したNetflixのオリジナル・シリーズ「キーパーズ」(2017年)、サンダンス映画祭で監督賞(ベン・コトナーとの共同監督)を受賞した「ジェンダー・マリアージュ~全米を揺るがした同性婚裁判~」(2013年)、ビートルズの秘書フリーダ・ケリーに迫った「愛しのフリーダ」(2013年)など数多くのドキュメント映画で知られるドキュメンタリー作家、ライアン・ホワイト。

■見どころ

実行犯として逮捕され殺人罪で起訴されたインドネシア人のシティ・アイシャ(当時=25)(上の写真㊧)と、ベトナム人のドアン・ティ・フォン(当時=28)(同㊨)の2人が、空港で金正男に駆け寄り背後から目隠しするような動作をして逃げ去る監視カメラの映像は事件当時、テレビのニュースで繰り返し流されて世界に衝撃を与えたが、映画では様々な角度から撮られた監視カメラの映像がふんだんに流され事件が再現される。そして、2人は北の工作員から「イタズラ動画に出てみないか」と誘われ、相手が金正男で実はVXで毒殺する目的だったことも知らずに行為に及んだとみられること。そして北の工作員が2人を別々に特訓させて実行犯に仕立てたことなどの詳細が関係者のインタビューなどで明かされている。
事件に関与した工作員ら北朝鮮側の関係者6人は1人も逮捕されず、実行犯の2人だけが逮捕され殺人罪で起訴されるが、裁判の途中で突然検察側がシティさんの起訴を取り下げ釈放となった。ドアンさんは殺人罪から傷害罪に切り替えられ禁固3年4月の実刑判決を受けたが、逮捕時からの拘束期間が引かれ計器の減免もあり2019年5月に釈放になった。2人の弁護士や当時事件を取材していた現地の記者が裁判の舞台裏を明かす。そして北朝鮮の取材を続け金正恩について書いた「The Great Succesor」(2019年)を出版しているワシントン・ポストの北京支局長アンナ・ファイフィールドが、金正恩委員長の思惑など事件の闇について解説する。さらには、すでに故郷に帰っている事件の”被害者“シティさんとドアンさんにインタビューして、事件について生々しく語り、2人が獄中で親友になったことなどのエピソードも語っている。北の工作員自らは手を汚さず、他国の普通の女性を暗殺者に仕立て上げるという卑劣で残忍な犯行。そして暗殺を指示した殺人の正犯者、事件に関与した北の工作員らが1人も裁かれていないという究極の理不尽は改めて北朝鮮の独裁体制の闇と金正恩委員長の言動に手を焼く国際社会のジレンマを浮き彫りにしている。(10月10日公開)