「世界のはしっこ、ちいさな教室」エミリー監督のオフィシャルインタビュー「『天職』という概念を探求したかった」

(2023年7月20日9:30)

「世界のはしっこ、ちいさな教室」エミリー監督のオフィシャルインタビュー「『天職』という概念を探求したかった」
「世界のはしっこ、ちいさな教室」ポスタービジュアル

「世界の果ての通学路」製作チームが贈る、未来に明かりを灯そうとする3人の先生と、学びに目覚めた子どもたちを描く感動ドキュメンタリー「世界のはしっこ、ちいさな教室」(7月21日公開)のエミリー・テロン監督のオフィシャルインタビューが公開された。

シベリアの雪深い遊牧民のキャンプ、ブルキナファソの熱帯の僻地の村、バングラデシュのモンスーンで水没した農村地帯の3か所で奮闘する3人の教師と、学びに目覚めてゆく子供たちの感動的なドラマが描かれる。同作に込めた熱い思いを監督が語った。

「世界のはしっこ、ちいさな教室」エミリー監督のオフィシャルインタビュー「『天職』という概念を探求したかった」
「世界のはしっこ、ちいさな教室」シベリアの特設テントの教室で学ぶ子供たち

就学費用がない、近くに学校がない、学校に先生がいないなど、さまざまな理由から小学校で学べない子どもたちが1億2,100万人いるという。そうしたなか、日本でも大ヒットした「世界の果ての通学路」(2012年)の製作チームが、今度は世界の果ての先生に注目した。

識字率アップが国家の使命である西アフリカのブルキナファソの新人教師で2人の子どもの母でもあるサンドリーヌ。バングラデシュ北部のボートスクールで、子どもや女性の権利を守るために粘り強く戦う若きフェミニストのタスリマ。広大なシベリアに暮らす現役の遊牧民でありエヴェンキ族の伝統の消滅を危惧するスヴェトラーナは各地の集落を移動しながら特設テントを設営して遊牧民の子供たちに教える。
彼女たちが直面する困難も個性も三者三様。子どもたちに広い世界を知ってほしいという情熱を胸に、家族と離ればなれになっても、両親から反対されても、「子どもたちには明るい未来がある」と、信じる道を進み続ける。先生たちと子どもたちの笑顔に、いつかの自分を思い出す感動の教室ドキュメンタリーで、教育の原点がここにある。

「世界のはしっこ、ちいさな教室」エミリー監督のオフィシャルインタビュー「『天職』という概念を探求したかった」
「世界のはしっこ、ちいさな教室」ブルキナファソの教師サンドリーヌ㊧

同作のエミリー・テロン監督のオフィシャルインタビューが同作の製作意図やエピソードについて語った。(以下一問一答)

――「世界のはしっこ、ちいさな教室」の製作の始まりについて聞かせてください。

「前作『MON MAITRE D'ECOLE』の後、私は再び『伝達』というテーマに取り組みたいと考えていました。よりアクセスしにくく、より複雑な場所で職業を実践することで、子どもたちにより多くのものを与えられることが出来るに違いない。私はこのことについて掘り下げてみたいと思いました。『天職』という概念を探求したかったのです。そんな時に、同じテーマに取り組んでいたプロデューサーのバーセルミー・フォージェア(『世界の果ての通学路』に出会ったのです」

――本作の舞台は、ブルキナファソ、バングラデシュ、シベリア。なぜこの3つの場所を選んだのですか?選んだ先生がたまたまその国にいたのですか?それとも地政学的な配慮?
「ドキュメンタリーの場合、常にアングルの問題があります。本作を作るにあたり、腕に覚えのあるようなベテランの先生を中心に据えたくはなかったのです。先生のデビューの瞬間や、変化を見逃したくなかったからです。そういう意味で、まだ完成されていない人を見つけたかったのです。その上で場所を選びました。アフリカや寒い国、全く違う環境にしたいと思っていました」

――このプロジェクトはどのように進めたのですか?
「3か月間、ジャーナリストと一緒にたくさん調査しました。地域がどこであれ、教師たちは同じ困難に直面しています。資源の不足、教育とはしばしば相反する慣習、戦争、気候変動などです。人口が急増しているブルキナファソの場合、識字率を上げるために教師が緊急に派遣される。バングラデシュでは貧困や伝統的な因習から学習を諦める子どもを減らすために教師が奮闘する。シベリアではエヴェンキ族が二重の文化を前提として学習することで、自分たちのルーツの消滅を防ぐ。この3つの例に大変惹かれました」

――例えばサンドリーヌにとって教師は初めての任務です。彼女がどのように行動するのか、確信はあったのでしょうか?
「いいえ、それは分かりませんでした。ですが、彼女が荷物をまとめ小さな娘と別れたとき、そして彼女が村に到着して校舎を見たとき、最初の授業、落ち込んだとき、勝利の瞬間…素晴らしいことに私たちはその瞬間に彼女と一緒に立ち会ったのです。国によって状況や困難は異なります。しかし私は、この職業の素晴らしさは変わらないと深く確信しています」
――ナレーションにカリン・ヴィアールを起用したのはなぜですか?

「私がこの映画に強く望んでいた女優です。彼女の声、少しかすれ気味で、ハスキーで、柔らかい。声の抑揚、時々起こる小さな脱線、どれもとても美しく感動的です。彼女たちの物語は、いかにもパリジェンヌといったような白っぽい分かりやすすぎる声にはしたくなかったのです。彼女のエージェントに連絡するとすぐに反応してくれて嬉しかったです」

――音楽について聞かせてください。
「国ごとに音楽を変えようとは思いませんでした。伝統的すぎたり、エスニックすぎるのも違うと思いました。逆にこの映画に統一感を持たせるようなサウンドトラックが欲しかったのです。弦楽器や打楽器といった純粋な楽器で構成され、かつ有機的で現代的な音楽です。作曲したレミ・ブーバル(『PLAN 75』)はヴァイオリンをはじめとする弦楽器の音を、現代風にアレンジしてくれました」

「世界のはしっこ、ちいさな教室」エミリー監督のオフィシャルインタビュー「『天職』という概念を探求したかった」
「世界のはしっこ、ちいさな教室」バングラデシュの女子生徒たち

■作品情報
監督:エミリー・テロン 製作:バーセルミー・フォージェア(「世界の果ての通学路」)
  ナレーション:カリン・ヴィアール(「エール!」) 出演:サンドリーヌ・ゾンゴ、スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ、タスリマ・アクテル
2021年/フランス映画//仏語・露語・ベンガル語/82分/原題:Être prof/英題:Teach me If you can/字幕翻訳:星加久実
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ 提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム hashikko-movie.com
© Winds - France 2 Cinéma - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendôme Production
宣伝:ポイント・セット
7月21日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開