「ぼくは君たちを憎まないことにした」 パリ同時多発テロで妻を失ったジャーナリストのベストセラーを映画化

(2023年8月9日10:30)

「ぼくは君たちを憎まないことにした」 パリ同時多発テロで妻を失ったジャーナリストのベストセラーを映画化
「ぼくは君たちを憎まないことにした」ポスタービジュアル

パリ同時多発テロで妻を失ったジャーナリストが、世界を駆け巡ったテロリストに向けたエモーショナルなメッセージなどをつづったベストセラー手記を映画化した「ぼくは君たちを憎まないことにした」が11月10日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショーが決まり、特報映像とティザーポスターが解禁になった。

本作は、家族3人で幸せに暮らしていたジャーナリストのアントワーヌが妻エレーヌが犠牲になったテロ発生から2週間の出来事をつづった世界的ベストセラー「ぼくは君たちを憎まないことにした」の映画化。最愛の人を予想もしないタイミングで失った時、その事実をどう受け入れ、次の行動に出るのかが描かれている。

誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続く育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子のメルヴィルと二人で「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージだった。一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」という詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていったという。

パリ中心部にあるコンサートホールのバタクランで行われたアメリカのバンド、イーグルス・オブ・ザ・デスメタルのライブ中に3人の男たちが1500人の観客に銃を乱射し、立てこもった。少し前には、パリ郊外のスタジアムで行われていたフランス対ドイツのサッカー親善試合や周辺のレストランでイスラム過激派組織「ISIL」の戦闘員が自爆テロを起こしていた。バタクランには、アントワーヌの妻、エレーヌと友人がいた。安否確認すらままならないカオスの中で、2日後に判明したのは、友人は生き延び、エレーヌは犠牲となった受け入れがたい事実だった。
2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロは、イスラム過激派組織ISILの戦闘員とみられる実行犯たちが、3つのグループに分かれて、国立スタジアム、コンサートホールのバタクラン、カフェレストランを襲撃。バタクランで90人を無差別に殺害するなど死者130人、負傷者300人以上の大惨事となった。

監督は、マラソンに挑戦する老人たちをほのぼのと描くコメディ「陽だまりハウスでマラソンを」(13)のキリアン・リートホーフ。アントワーヌの手記は、メルヴィンと同じ年頃の娘を持つリートホーフ監督の心を打ちすぐさま映画化を決断。ドイツ人の立場からフランスで実際に起きた悲劇を客観的に見つめ、平明な言葉で憎しみの連鎖を拒絶するアントワーヌに焦点を当てた。

主演は、「万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-」(14)で綾瀬はるかと共演し、「エッフェル塔 創造者の愛」(21)にも出演する実力派ピエール・ドゥラドンシャン。負の感情と自らの言葉の間で苦悩する、感受性豊かなアントワーヌを熱演している。妻のエレーヌ役にはシンガーソングライターでもあるカメリア・ジョルダーナ。19年出演のアクション「レッド・スネイク」ではISILを征伐する女性特殊部隊の一員として出演している。お風呂と絵本が大好きなメルヴィルには、当時3歳だったゾーエ・イオリオ。子役コーチによる演技訓練や長時間にわたるリハーサルに耐え、ママの不在に悲しみの涙を流し、笑顔を忘れたパパを支える愛息を演じている。

このほど解禁になった特報映像では、愛する妻を突然失って悲しみに暮れるアントワーヌが、それでも小さな息子と前を向いて生きていこうと決意する姿に胸を打たれる。ティザーポスターも大きなタイトルと、親子が抱き合う姿が配されたシンプルながら、背中を向けるアントワーヌの力強い意志を感じさせるようなデザインとなっている。

 無差別テロから1年後の2016年11月12日。バタクランはエンターテインメントを愛する人々に支えられ、全面改装してスティングのコンサートで再オープンした。2023年現在も人気の会場として営業を続けている。

【STORY】
2015年11月13日金曜日の朝。ジャーナリストのアントワーヌ・レリスは息子のメルヴィルと一緒に、仕事に急ぐ妻のエレーヌを送り出した。息子のために健康的な朝食を手作りして体調管理に気を配り、おしゃれでユーモアのセンスもある。最高の母であり、最愛の妻が、突然、天国へ行ってしまった。そんな時でも息子はお腹を空かせ、砂で遊び、絵本の読み聞かせをねだる。誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続くワンオペ育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子と二人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。

監督・脚本:キリアン・リートホーフ『陽だまりハウスでマラソンを』
原作:「ぼくは君たちを憎まないことにした」
2022年/ドイツ・フランス・ベルギー/フランス語/102分/シネスコ/5.1ch/原題: Vous n‘aurez pas ma haine/英題:YOU WILL NOT HAVE MY HATE /日本語字幕:横井和子/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム/後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion
11月10日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー