「私がやりました」 殺人事件で容疑者になる新人女優と真犯人と名乗り出る元大女優の奇想天外クライム・コメディ

(2023年11月9日10:45)

「私がやりました」 殺人事件で容疑者になる新人女優と真犯人と名乗り出る元大女優の奇想天外クライム・コメディ
「私がやりました」ポスタービジュアル

1930年代のパリを舞台に、有名映画プロデューサー殺人事件で容疑者となった売れない新人女優が、裁判で性的暴行から逃れるための正当防衛を主張して無罪を勝ち取るが、彼女の前に私が真犯人と主張する往年の女優が登場して起きる、前代未聞のドタバタ劇を描いたクライムミステリー・エンターテインメント。
殺人事件の容疑者から一転してスターになる新人女優マドレーヌに、「悪なき殺人」(2019年)で第32回東京国際映画祭の最優秀女優賞を受賞(作品が観客賞受賞)したナディア・テレスキウィッツ、マドレーヌの弁護をする友人の弁護士ポーリーヌにレベッカ・マルデール、真犯人と名乗り出る大年の大女優オデットにフランスを代表する女優のイザベル・ユペールなどのキャスト。
監督はフランソワ・オゾンで、同監督の「8人の女たち」(02)、「しあわせの雨傘」(10)に次ぐフランスで動員100万人越えの大ヒットを記録した。1934年の戯曲「Mon crime」にインスピレーションを得て製作された作品。

監督・脚本:フランソワ・オゾン
出演:ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペール、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ
配給:ギャガ
THE CRIME IS MINE(英題)/2023年/フランス/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/103分/字幕翻訳:松浦美奈/原題:Mon crime
© 2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT-FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES - PLAYTIME PRODUCTION

「私がやりました」 殺人事件で容疑者になる新人女優と真犯人と名乗り出る元大女優の奇想天外クライム・コメディ

■ストーリー

1935年のパリ。貧しくてアパートの家賃を滞納している売れない新人女優のマドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)はある日、有名映画プロデューサーのモンフェランから豪邸に呼び出されるが、役と引き換えに愛人契約を要求され、無理やり抱きつかれて突き飛ばして家に帰ると、その日プロデューサーは銃で撃たれて遺体で発見される。マスコミが大きく報じる中、容疑者になったマドレーヌは、友人の弁護士ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)に相談。ポーリーヌが彼女の弁護を引き受け、「襲われそうになり自分の身を守るために銃で撃った」と正当防衛を主張。聡明で弁の立つポーリーヌは陪審員を前に男性上位社会の問題と女性の人権などを言葉巧みに訴え、女性たちの圧倒的支持を得て無罪を勝ち取る。マドレーヌは悲劇のヒロインとして一躍有名になり、女優としても注目を浴びる。さらには恋人の一流企業の御曹司は、富豪令嬢との結婚をやめてマドレーヌにプロポーズする。
ところが、そこに私が真犯人だと主張するトーキー時代の往年の大女優オデット(イザベル・ユペール)が現れる。マドレーヌたちが勝ち取った名声は自分のもので、”真犯人の座”は渡せないと2人に迫る。マドレーヌとポーリーヌのコンビはオデットに翻弄され映画プロデューサー殺人事件は前代未聞の展開になっていく。

■見どころ

オゾン監督は同作について「『8人の女たち』『しあわせの雨傘』に次ぐ、女性の地位をユーモア満載且つ魅力的に探求した僕の3部作の最終章とも言える。1930年代スタイルを楽しみながら再現したけれど、一見時代遅れに見える素材を使って、今の時代にも通じる生き生きとしたテンポ感で、現代性を強調することができたんじゃないかな」と語っている。
有名映画プロデューサーの性加害の被害者として正当防衛を主張し注目を集める前半の裁判劇で、ナディアとレベッカが生き生きと魅力的に時代のヒロインを演じている。映画界の性加害と女性の人権問題を逆手に取ったポーリーヌの作戦が女性たちの支持を得ていくあたりは現代にも通じるものがありユーモアとウイットに富んでいる。そして無罪を勝ち取った後に登場する元大女優オデットをユペールが大仰な身振り手振りを交えコミカルに熱演して、前代未聞のサスペンス劇を展開している。ユペールは「私はモーリン・カーニー 正義を殺すのは誰?」(23)で演じたフランスの原発政策の闇を告発する労働組合の幹部役から一転して、大いに笑わせる熱演で圧倒的な存在感を見せている。マドレーヌが着こなすハイブランドのドレス、ポーリーヌのクラシックなスーツなどのファッション、ベージュピンクを基調としたアールデコのインテリアなど、1930年代のパリの魅力も満載。男社会に立ち向かうマドレーヌとポーリーヌの颯爽とした裁判劇をはじめ、エスプリあり、ブラックジョークあり、サスペンスありで最後まで楽しませるエンタ―テインメントになっている。
2023年11月3日(金・祝)、TOHOシネマズシャンテ他全国順次ロードショー