「ニューヨーク・オールド・アパートメント」マーク・ウィルキンス監督オフィシャルインタビュー「希望の表と裏を両方描いています」

(2024年1月12日14:30)

「ニューヨーク・オールド・アパートメント」マーク・ウィルキンス監督オフィシャルインタビュー「希望の表と裏を両方描いています」
「ニューヨーク・オールド・アパートメント」

NYの片隅で疎外されて生きる移民の母と息子たちの葛藤と成長を描き、最優秀作品賞・監督賞・女優賞など 9 冠受賞するなど欧米映画祭を席した「ニューヨーク・オールド・アパートメント」(1月12 日より、新宿シネマカリテほか全国公開)のマーク・ウィルキンス監督のオフィシャルインタビューや兄弟が謎を秘めた美女と出会う本編映像が公開された。

同作は安定した生活を夢見て、祖国ペルーを捨て NY で不法移民として暮らすデュラン一家が中心の物語。母ラファエラはウェイトレスをしながら二人の息子を女手一つで育て、息子たちも配達員として家計を支えるギリギリの毎日。街から疎外された自分を「透明人間」だと嘆く二人の息子はある日、謎を秘めた美しい女性クリスティンと出会い、恋に落ちる。一方母ラファエラも白人男性からの耳触りのいい話に誘われ飲食店を開業するのだがーー。アメリカン・ドリームを夢見る母と年頃のピュアな息子たち。そんな“大都会の弱者”である貧しい移民家族に訪れた悲劇。日陰で生きる、何者でもなかった彼らが恋をして、大切な何かに気づき、はじめて自分として生きる意味を見出していくという内容。

短編「ボン・ボヤージュ」が世界各国の賞を受賞した欧米注目の新進気鋭監督マーク・ウィルキンス待望の長編デビュー作で、ベストセラー作家のオランダ人作家アーノン・グランバーグの小説「De heilige Antonio」をもとに、アメリカが抱える移民問題を背景に親子の絆の物語をリアルに描きだした。

南米ペルーのオーディションで兄弟役に選ばれたシンデレラボーイ、アドリアーノ・デュランとマルチェロ・デュランは本当の双子で、本作が映画デビュー作となる。母ラファエラ役には、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞し、アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作『悲しみのミルク』などで知られる国際派女優のマガリ・ソリエル。ミステリアスな美女クリスティン役には、今注目の若手女優タラ・サラー。そして、ベテラン個性派俳優サイモン・ケザーなどが脇を支える。

■監督「詩的な美しさに満ちたこの移民の物語に、私が『アメリカン・ドリームの首都』に感じ続けてきた疑問が集約されていると感じました」

「ニューヨーク・オールド・アパートメント」マーク・ウィルキンス監督オフィシャルインタビュー「希望の表と裏を両方描いています」
マーク・ウィルキンス監督

マーク・ウィルキンス監督は、同作について「希望は私たちを無防備で愚かにし、私たちの最大の欠陥になり得ると同時に、人間の最大の美徳の一つでもあります。『ニューヨーク・オールド・アパートメント』は、希望の表と裏を両方描いています」と語る。

そして、製作に至ったきっかけについて「ニューヨーク在住中、私はアーノン・グランバーグの小説「Deheilige Antonio」(英題:SAINT ANTONIO /『聖なるアントニオ』)を見つけました。ウィット、ユーモア、詩的な美しさに満ちたこの移民の物語に、私が「アメリカン・ドリームの首都」に感じ続けてきた疑問が集約されていると感じました」と明かした。

映画のテーマになっている移民問題について「私自身は恵まれた移民だと思います。いままでたくさんの移住を経験しました。ドイツで育ち、ベルリンに住み、ニューヨークに住み、今はウクライナのキーウにいます。私自身は人種差別をされた経験はありませんが、目撃したことはたくさんあります。ニューヨークにおいてです。悲しい気持ちになりました。自分が恵まれた境遇なことに罪悪感を感じたりもしました。その罪悪感がゆえに、私とは違った理由でニューヨークに来ることになった登場人物を描くことになったと考えています」と自身の体験をまじえて説明した。

さらに「本作は甘美な物語です。純朴そのものなティーンエイジャーの双子・ポールとティト。ミステリアスなクロアチア人女性・クリスティン、兄弟の母親・ラファエラ、スイス人の恋人・エドワルド。これらの登場人物たちは、私自身が『見知らぬ人』『部外者』として扱われた体験に由来する拒絶の感情や、住んでいる場所に属せていなく『愛され、受け入れられたい』と切望した、かつての体験による産物です」と伝えた。

「私たちは責任の所在を問いかけたり、いたずらに哀れみを誘発するだけではない『移民の物語』を製作することに挑戦しました。主人公たちの等身大な姿を描くことで、実存を保証されたいという私たちの普遍的な欲求を深掘りしました。あなたが不法滞在しているペルー人の自転車配達人であろうと、自暴自棄なクロアチア人の恋人であろうと、孤独なスイスの大衆小説家であろうと、人々は『自分の人生』を受け入れながら生きたい。という願望に突き動かされているという点では、同じなのです」という。

そして「この映画が日本で公開されることをとても嬉しく思っています。この物語が、何かしら皆さんの心に響いたり、ポール・ティト・クリスティンに親近感を頂いていただければ嬉しいです」と締めくくった。

■兄弟が謎を秘めた美しい女性クリスティンと出会う本編映像公開

この度解禁された本編映像では、双子の兄弟ポールとティトが通う語学学校で、ある日入学してきた神秘的な魅力を放つ美女・クリスティンと初めて言葉を交わすシーンが切り取られている。
彼女に興味津々な二人は、教師の「隣の人と組んで将来的に欲しいものを3つ言い合いなさい」という課題をきっかけに、初めてクリスティンと言葉を交わす。ポールの「居場所がほしい。透明人間のように扱われるのはもう嫌なんだ」という答えに心を許したクリスティンは、帰りにアップタウンに寄って行かないかと兄弟を誘う。
通りを並んで歩いていると、突然、「私の写真欲しい?」と尋ねるクリスティン。おもむろにリュックから封筒に入った写真を取り取り出し「今は見ちゃダメ。絶対なくさないでよ。私が『返して』って言ってすぐに出てこなかったら、あんた達のこと無視するから」と言いながら写真を手渡す。写真を受け取りつつも、思わず顔を見合わすポールとティトだった。

【クレジット】
監督:マーク・ウィルキンス 脚本:ラ二・レイン・フェルタム 原作:「De heilige Antonio」(アーノン・グランバーグ)
出演:マガリ・ソリエル、アドリアーノ・デュラン、マルチェロ・デュラン、タラ・サラー、サイモン・ケザー 日本版テーマ曲:THE ティバ「winnie」
2020 年/スイス/英語、スペイン語/97 分/シネスコ/5.1ch/原題: The Saint Of The Impossible/配給・宣伝:百道浜ピクチャーズ
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