「12日の殺人」凄惨な殺人事件の捜査で刑事たちが迷い込んだ迷宮

(2024年3月18日18:00)

「12日の殺人」凄惨な殺人事件の捜査で刑事たちが迷い込んだ迷宮
「12日の殺人」メインビジュアル

フランスの地方都市で若い女性の凄惨な殺人事件が起きて、捜査線上に次々と容疑者が浮上するが、アリバイがあるなど空振りが続き、捜査班の班長らが懸命な捜査をするが迷宮に迷い込んでいく異色のサスペンス。2013年にフランスで実際に起きた事件をもとにしたフィクション。

思いもよらぬ様々な「偶然」が重なって起きるある殺人事件を描いた「悪なき殺人」(19)のドミニク・モル監督が未解決事件を題材にした最新作で、第75回カンヌ国際映画祭プレミア部門に出品され、第48回セザール賞では、作品賞、監督賞、助演男優賞、有望若手男優賞、脚色賞、音響賞と最多受賞となり、第28回リュミエール賞など各映画賞で高い評価を得た。
主演の捜査班の班長ヨアン役に2915年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品「禁断のエチュ―ド マルグリットとジュリアン」などのバスティアン・ブイヨンのほか、相棒のマルソー役にブーリ・ランネ―ル、被害者のクララにルーラ・コットン・フラピエなどのキャスト。

「12日の殺人」凄惨な殺人事件の捜査で刑事たちが迷い込んだ迷宮
「12日の殺人」ヨアン㊧とマルソー(© 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma Fanny de Gouville)
「12日の殺人」凄惨な殺人事件の捜査で刑事たちが迷い込んだ迷宮
ヨアン(左端)ら捜査班チーム(© 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma)
「12日の殺人」凄惨な殺人事件の捜査で刑事たちが迷い込んだ迷宮
クララの友人㊧から話を聴くヨアン(© 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma)

【Story】
2016年10月12日の夜、フランス南東の地方都市グルノーブルの警察署で、引退する殺人捜査班の班長の壮行会が開かれる。後任にはヨアン(バスティアン・ブイヨン)が任命された。その夜、山あいの町で21歳のクララ(ルーラ・コットン・フラピエ)が友人たちとのパーティーの帰宅途中に、何者かに火をつけられ、翌朝焼死体という無惨な姿で発見される。ヨアンを班長とする捜査班が結成され、クララの友人ナニーの協力で、クララと交際歴のあるバイト先のウェズリー、ボルダリンジムで知り合ったジュール、さらには「燃やしてやる」というラップを自作していた元カレのギャピなど、次々と容疑者が捜査線上に浮かぶが、アリバイがあったり決定的証拠をつかめず、ヨアンや相棒のマルソー(ブーリ・ランネ―ル)らは謎の多い事件に翻弄されていき事件はいつしか迷宮入りとなってしまう。3年後に事件の再捜査が行われるが…。

■見どころ

捜査の過程で次々に浮かび上がる容疑者は被害者のクララと関係のあった男たちで、彼女の奔放な男関係が浮かび上がり、事件が複雑で謎めいた様相を見せていく展開に引き込まれる。実際の事件をもとにしたフィクションということで、捜査が難航し、刑事たちが事件に翻弄されていく様子ががリアルに描かれている。犯人が逮捕され事件の真相が明らかになるというカタルシスはなく、犯人や犯行動機も不明のままというなかで、班長のヨアンが直面する迷宮に未解決事件の”闇”と捜査員たちの苦悩やそこを乗り越えていこうとする心情などが精緻に描かれ、最後まで緊張感が続くサスペンスになっている。ヨアンの相棒のマルソーが、ジャンヌ・ダルクのように火あぶりにされるのはいつも女だと呟き、クララの友人のナニーが「女だから殺された」というくだりが印象的だが、そこに女性に対する暴力や性加害といった現代的な問題が透けて見える。

■クレジット

監督:ドミニク・モル 脚本:ドミニク・モル/ジル・マルシャン
原案:ポリーヌ・ゲナ作「18.3. Une année passée à la PJ」
出演:バスティアン・ブイヨン/ブーリ・ランネール/テオ・チョルビ /ヨハン・ディオネ /ティヴー・エヴェラー/ポーリーヌ・セリエ/ルーラ・コットン・フラピエ
配給:STAR CHANNEL MOVIES
© 2022 - Haut et Court - Versus Production - Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma
12th-movie.com X:@STAR_CH_MOVIES
2022/フランス/原題:La Nuit du 12/114分/ビスタ/カラー/5.1/字幕翻訳:宮坂愛
2024年3月15日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラスト有楽町ほか全国ロードショー