「アルキメデスの大戦」 菅田将暉が戦艦大和の建造を阻止しようとした天才数学者を熱演

(2019年7月27日)

「アルキメデスの大戦」 菅田将暉が戦艦大和の建造を阻止しようとした天才数学者を熱演
「アルキメデスの大戦」(TOHOシネマズ渋谷)

戦艦大和の建造を数学で止めようとした若き天才数学者の闘いを描いた三田紀房の同名人気漫画を菅田将暉主演で実写映画化した話題作。監督は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「永遠のゼロ」(2013年)、「海賊と呼ばれた男」(2016年)、「DESTINY 鎌倉物語」(2017年)などのヒット作で知られる山崎貴で、一連の作品で見せたVFXで戦闘シーンなどを再現している。

主演の天才数学者・櫂直に若手の個性派俳優菅田将暉のほか、彼を補佐する海軍少尉・田中正二郎に柄本佑、大和健造に反対して空母の必要性を唱える海軍少将・山本五十六に舘ひろし、大和建造推進派の造船中将・平山忠道に田中泯、櫂を助ける尾崎財閥令嬢・尾崎鏡子に浜辺美波、大里造船社長・大里清に笑福亭鶴瓶などの豪華キャストで戦艦大和建造をめぐる海軍内部の抗争とそこに巻き込まれる天才数学者の苦闘が描かれる。

■ストーリー
満州にかいらい政権・満州国を樹立(1932年)し、国際連盟を脱退(1933年)するなど陸軍が太平洋戦争に向けて暴走するなか、海軍省では世界最大の戦艦を建造する計画が秘密裏に進んでいた。しかし、海軍少将・島田繁太郎(橋爪功)と造船中将・平山(田中)ら大和建造推進派と、空母建造を主張する海軍中将・永野修身(國村隼)と海軍少将・山本五十六(舘)が激しく対立。山本は東京帝大(現・東大)を中退した100年に一度といわれる天才数学者・櫂(菅田)に目をつけ、数学で安すぎる大和の建造費の疑惑を解明させようとする。なんでもメジャーで図らないと気が済まず、軍隊が嫌いな変人の櫂はアメリカの大学に留学することを理由に固辞するが、山本の「巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は必ず戦争を始める」という言葉に動かされ、一転して山本らに協力することを決意し、数学の力で大和建造の費用のからくりを暴き建造を阻止することに挑戦する。

■見どころ
山本五十六などの海軍省の将校たちは実在の人物で、戦艦大和も実在の戦艦だが、この映画はそうした歴史的事実を基にしたフィクションである。登場する数学の数式などもどこまでがリアルなのかはさておいて、大和建造に投入された莫大な費用(税金)が一瞬にして海の藻屑と化した悲劇や戦争の愚かさを改めて浮き彫りにしている。大和はまさにその象徴として描かれているところが見どころになっている。

軍事機密として厳重に管理されていた大和の設計図や建造にあたっての人件費を含めた費用を数学で解き明かそうと不眠不休の戦いを続ける天才数学者を菅田が熱演。ドラマにリアリティや深み、エンターテインメントを与え、緊迫のドラマに引き込まれる。そして、櫂の補佐役を柄本が好演しているほか、櫂に想いを寄せる財閥の令嬢を浜辺が可憐に演じて作品に華を加え、舘が山本五十六役で重厚な存在感を見せている。戦艦大和を天才数学者の視点で数学で再検証してみるという奇抜で斬新なアイディアで見せるエンターテインメントになっている。

■戦艦大和とは
戦艦大和は史上最大で46センチ砲9門を搭載した全長263メートルの巨大戦艦で、建造費は約1億3780万円(現在の価格に換算すると約1556億円)といわれる。太平洋戦争開戦直後の1941年12月に広島県呉海軍工廠で竣工。山本五十六大将を司令長官とする連合艦隊の旗艦1番艦(2番館は同型の武蔵)となり、1942年のミッドウェ―海戦に出撃するが敗退。1945年3月29日、特攻作戦で沖縄線に向けて呉から出撃したが、米軍戦闘機の爆弾や魚雷の猛攻撃を受けて鹿児島県坊ノ岬沖で撃沈された。乗組員3332人のうち、生還者はわずか276人だったとされる。生還兵の一人は「世界一の戦艦で特攻したら日本は終わりだと思っていた」などと語ったという。
(2019年7月26日公開)

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    (7月27日~7月28日、観客動員数)(カッコ内は先週順位)(興行通信社調べ)