第77回毎日映画コンクール 映画「ケイコ 目を澄ませて」最多5部門受賞

(2023年1月19日15:20)

第77回毎日映画コンクールの各賞が18日に決まり、映画「ケイコ 目を澄ませて」が日本映画大賞、女優主演賞(岸井ゆきの)、監督賞(三宅唱)、撮影賞(月永雄太)、録音賞(川井崇満)の最多5部門で受賞した。

男優主演賞は「土を喰らう十二カ月」の沢田研二、男優助演賞は「ある男」の窪田正孝、女優助演賞は「さがす」の伊東蒼、田中絹代賞に寺島しのぶ、スポニチグランプリ新人賞に「サバカンSABAKAN」の番家一路とマイスモールランド」の嵐莉菜が選ばれた。また日本映画優秀賞に「夜明けまでバス亭で」(高橋伴明監督)、外国映画ベストワン賞に「ベルファスト」(ケネス・ブラナー監督)が選ばれた。表彰式は2月14日、東京・目黒パーシモンホールで開催される。

第77回毎日映画コンクール 映画「ケイコ 目を澄ませて」最多5部門受賞
「ケイコ 目を澄ませて」(全国公開中)(配給:ハピネットファントム・スタジオ)(©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS)

■岸井ゆきの&三宅唱監督のコメント

岸井ゆきのは「映画『ケイコ 目を澄ませて』が作品、監督、撮影、録音、主演の五部門で賞を受賞と聞きました。三宅組の全スタッフ、そして映画を観てくださった皆様に感謝致します」としたうえで「撮影時のひとりひとりの仕事と映画への愛がまさにフィルムのようにわたしの心に焼き付いて消えません。日々の私を見守ることで懸命に支えてくださり、映画ができていく瞬間を共にした大切な仲間です。このような賞を一緒に受賞できたことを心から嬉しく思います」と喜びのコメントを発表した。

三宅唱監督は「岸井さんの受賞、そして月永さんと川井さんの受賞がとても嬉しいです。作品賞については、個別の部門が設定されてはいない各部のプロフェッショナルな仕事のすべてが結実したものとして勝手に受け止めさせていただき(総スケ賞、弁当賞、雨降賞etc.)、素晴らしい役者たち、スタッフたちとともに働くことができたことを誇りに思います。主人公のモデルである小笠原恵子さんのかっこよさを追いかけながら、このような時代に無事に、新たに映画を作ることができた幸せを噛み締めつつ、今後も精進します。自分はまだまだです」とコメントを寄せた。
そして「長い歴史を持つ毎日映画コンクールを支える審査員並びにスタッフの皆さま、また、劇場公開以来全国各地のスクリーン越しにリングに上がるケイコさんを見つめてくださった多くの皆さま、映画館の皆さまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた。

同作は第65回ブルーリボン賞で作品賞、主演女優賞にノミネート、第36回高崎映画祭では最優秀作品賞、最優秀主演俳優賞を受賞した。

そしてこのほど岸井演じるケイコの新場面写真が公開された。ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、じっと「目を澄ませて」闘うケイコの試合シーンを切り取った気迫に満ちた1ショットになっている。

第77回毎日映画コンクール 映画「ケイコ 目を澄ませて」最多5部門受賞
「ケイコ 目を澄ませて」(全国公開中)(配給:ハピネットファントム・スタジオ)(©2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS)

■「ケイコ 目を澄ませて」の内容

聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんをモデルに、彼女の生き方に着想を得て、「きみの鳥はうたえる」の三宅監督が新たに生み出した物語。ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、じっと「目を澄ませて」闘うケイコの姿を、秀でた才能を持つ主人公としてではなく、不安や迷い、喜びや情熱など様々な感情の間で揺れ動きながらも一歩ずつ確実に歩みを進める等身大の一人の女性として描き、彼女の心のざわめきを16mmフィルムで捉えた。2月に開催されたベルリン国際映画祭でプレミア上映されると「すべての瞬間が心に響く」「間違いなく一見の価値あり」と熱い賛辞が次々に贈られ、その後も数多くの国際映画祭での上映が続いている。

主人公・ケイコを演じた岸井ゆきのは、厳しいトレーニングを重ねて撮影に臨み、新境地を切り開く。そして、ケイコの実直さを誰よりも認め見守るジムの会長に、日本映画界を牽引する三浦友和。その他、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子など実力派キャストが脇を固める。

【STORY】嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです 」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す――。(2022年12月16日よりテアトル新宿ほか全国公開中)