映画「有り、触れた、未来」初日舞台あいさつ 桜庭ななみ、北村有起哉、山本透監督が登壇

(2023年3月10日23:50)

映画「有り、触れた、未来」初日舞台あいさつ 映画「有り、触れた、未来」初日舞台あいさつ 桜庭ななみ、北村有起哉、山本透監督が登壇
が登壇
初日舞台あいさつに登壇した左から北村有起哉、桜庭ななみ、山本透監督(10日、都内)

映画「有り、触れた、未来」が10日、全国公開になり、都内で初日舞台あいさつが行われ、桜庭ななみ(30)、北村有起哉(48)、山本透監督(53)が登壇した。

本作の監督・脚本は「グッモーエビアン!」「九月の恋と出会うまで」などで知られる山本透。「コロナ禍の閉塞的な社会で、自殺者や不登校児童が増えるなか、命の大切さを伝える 力強い作品を作りたい」と、本作のために集まった総勢22人の若手俳優からなるプロデューサーチーム「UNCHAIN10+1(アンチェインイレブン・アシスタント)」と共に企画から資金集め、制作まで、自主映画としてゼロからスタートした作品。作品の舞台となる宮城県で3日から先行上映され、10日から全国公開された。
主演の桜庭ななみと、物語のキーパーソンの一人である北村有起哉、そして山本透監督が完成に至るまでの熱い想いを語った。

■山本監督「自分の周りに俳優たちが集まってくれた」

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山本透監督

山本監督はこの映画を製作したいきさつについて「2020年に、コロナがまん延し始めて緊急事態宣言が発令されて、その年に自分の身のまわりに命を絶つ俳優たちが現れ始めて、自殺者の増加に歯止めがかからず、僕自身は1人の大人として、父親として映画監督として、この事態に何かできることはないのかと考え抜いた挙句この映画を作ろうと思った」という。しかし、大手映画会社からはコロナが収まらないと、と言われるなど難航したという。「そんな時に自分の周りに俳優たちが集まってくれて、監督のやりたいことがあるんだったら手伝ってみたい、支えてみたいとと言ってくれた若者たちが沢山いて、ならば自主映画でやるかと思って、資金集めからロケ場所からオーディションから、本職は俳優なんですけど一緒にやってきました」と製作の経緯を明かした。

■北村有起哉「ものすごいエネルギーの詰まった群像劇」

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北村有起哉

自然災害で妻と息子を失い、自殺願望を抱く女子中学生の娘と生活しながら、酒浸りの日々を送る父親を演じた北村有起哉は「ものすごいエネルギーの詰まった群像劇なんですね。僕なんかは本当にここに立たせていただいてるのは恐縮なんですけど、本当にみんなそれぞれがう役であり、それぞれが人生を背負っている登場人物が出てくるんですけど、僕は一つのピースに過ぎなくて、スタッフ、ボランティアの方々、本当にたくさんの力添えがあってこの映画はできたんだなあと思って、本当にそれは最初の段階からやばいぞというぐらいの熱量を現場で感じました」という。

そして完成した映画を見て「見事に、言葉ではできないぐらい胸をいっぱいにさせていただいた作品です。なかなかこういった映画はないと思いますし、本当に参加できてよかったと思います」と感想を語った。



■桜庭ななみ「宮城だからこそできた作品」

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桜庭ななみ

交通事故で交際相手を亡くした元バンドマンの主人公の佐々木愛実を演じた桜庭ななみは「監督と初めてお会いした時に、監督の熱い思いというのは私にも響きましたし、監督の想いと温かい台本を読んだ時にチームの一員としてぜひ参加したいと思って演じました」と語った。

桜庭は撮影を振り返って「宮城のオールロケだったんですけど、そのときも現地の方にすごくサポートして頂いて、エキストラの方もたくさん参加して頂いて、すごく宮城ならではの温かさを感じたのですが、舞台挨拶の時もすごくその温かさを改めて感じる事ができて、宮城だからこそできた作品だと改めて感じました」という。

3日から先行上映された宮城での舞台挨拶では、共演した保育園の保育士の人たちや子供たちも駆けつけたという。「客席にいてくださったお子さんもいて『めぐみせんせー』と呼んでくれてすごく嬉しかった」と振り返った。映画には子役ではなく実際の保育園の園児たちが出演したという。さらに「実は、私の母が保育士で。可愛いけど大変、とよく聞いていたのですが、その言葉の意味がよく分かりました」という。

桜庭は元バンドマンの役で、パワフルにエレキギターを弾いて歌うシーンもある。「撮影に入る2か月ぐらい前から練習させてもらって、監督は音楽にとても詳しい方で、こだわりもかなりあるので、ドキドキしながら演じました」という。
山本監督は「ななみちゃんはギターとボーカルの練習をして、ドラマーは別にやっていて、3人で合同練習をして、そのころ宮城では太鼓の練習をして、演劇は演劇でやって、同時期のみんなあちこちで一生懸命練習していました」と明かした。

その言葉に桜庭は「毎回、監督からみんなが頑張っている姿(の映像)を見せられて(笑)」と、離れていてもそれぞれ(のチーム)が刺激し合い、作品作りに挑んでいたと説明した。

■北村「映画にはこれでもかというくらい監督の思いが詰まっている」

北村は「映画にはこれでもかというくらい監督の思いが詰まっていて、まさにてんこ盛りです」とニッコリ。「僕のパートは、手塚理美さん演じる祖母と娘(碧山さえ演じる里見結莉)とのシーンがメイン。娘役はオーディションで決まった方で、演技をするのは本作が初めて。(芝居について)何も知らない子が感情を思い切りぶつけてきたときには『本気で受け止めないと!』という思いが芽生え、とてもスリリングなシーンになりました。彼女から教わったことがたくさんありました」と撮影中に受けた刺激や、現場で込み上げた感情などにも触れた。

北村の母役の手塚については「ちゃんと距離をとって見守ってくれて、一番偏ったことを言わない役。特に地元の方には(心に)すーっとしみ渡るようなセリフを口にする存在だと思っています」と解説。
さらに作中に登場する“こいのぼり”をあげるシーンを挙げ、「自分の出番じゃないときも「UNCHAIN10+1(アンチェインイレブン・アシスタント)」がお手伝いしている姿が印象的でした」と総勢 22 名からの若手俳優からなるプロデューサーチームの活躍についても言及した。

桜庭は後半に登場する家族を思うシーンが忘れられないと話し、「もともと台本にはなかったけれど、愛実の感情を表現したくて監督と相談して出来上がったシーンです。思い入れ深いシーンなので、注目してほしいです」と呼びかけた。

■山本監督「名優である有起哉さんにすべてを預けました」

山本監督は、桜庭がギターに挑戦しながら、愛実の心の中の傷を落とし込んでいく様子を間近で見られたことが印象に残っているとコメント。
北村については「名優である有起哉さんにすべてを預けました。有起哉さんチームの撮影初日は台風で中止になったのですが、あの 1 日があったから、里見家について考える時間ができました。台風をラッキーだと思った日です」と撮影の思い出を振り返った。

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桜庭、北村、山本監督と「UNCHAIN10+1」のメンバー

最後の挨拶で桜庭は「震災復興の映画ではありません。でも、明日は 3 月 11 日。震災から 12 年が経ったこの日に映画の公開を迎えられることには意味があると思っています。たくさんの人に届けばいいなという思いです」と呼びかけた。

北村は「まだまだいろいろな作品が生まれていいと思います。今回、腹をくくったメンバーですごい映画ができました。映画を観たときは、特別元気がなかった状態ではなかったけれど、なんか元気が出ました。一人でも多くの方に観てほしいと率直に思っています」と感想を交えつつ作品をアピール。

山本監督は「映画監督として、今の世の中で起きている最悪な状況をどうにか突破したいという思いがあります。ありふれるものを大切にする、たったそれだけのことが大事。映画から何かを感じ、その何かをみなさんと共有できることを幸せに思います」と思いを伝え、イベントを締めくくった。
この日のイベントには本作のために集まったプロデューサーチーム「UNCHAIN10+1 (アンチェインイレブン・アシスタント)」の面々も駆けつけ、来場者に感謝を伝えた。

「有り、触れた、未来」イベントに山本透監督、UNCHAIN10+1登壇
「有り、触れた、未来」(©UNCHAIN10+1)

【ストーリー】彼氏を事故で失った、元バンドマンの女性(桜庭ななみ)。30歳を過ぎても、ボクシングを続けるプロボクサー(松浦慎一郎)とその妻(金澤美穂)。1分1秒でも長く生き、娘の結婚式へ出席したい、末期癌と闘う女性(仙道敦子)。将来に不安を感じながら「魂の物語」を演じる若い舞台俳優たち。そして、自然災害で家族を亡くし、自殺願望を抱く中学生の少女(碧山さえ)。妻と息子を亡くし少女の父親(北村有起哉)も生きる希望をなくしていたが、傷ついた娘のために、再び生きることに立ち向かいだす。そんな二人を懸命に支える年老いた祖母(手塚理美)、優しい親友(鶴丸愛莉)と担任教師(宮澤佑)。たくさんの人々の想いを受けて、少女の心は、少しずつ変化し始めるー。
全ての登場人物が抱えている問題は、角度は違っても全て「命」と向き合った物語。いくつもの物語が、複雑に折り重なり、それぞれの人生が交錯する。「支え合い、分かち合い、何度でも立ち上がる」それは、「ありふれた物語」であると同時に「有り、触れられないモノ」の哀しさと「有り、触れられるモノ」の尊さを教える。