韓国映画「高速道路家族」のチョン・イル 、イ・サンムン監督が初日舞台挨拶

(2023年4月21日23:30)

韓国映画「高速道路家族」のチョン・イル、イ・サンムン監督が 初日舞台挨拶に来日登壇
初日舞台挨拶に登壇したチョン・イル㊨とイ・サンムン監督(21日、都内)

映画「高速道路家族」の初日舞台挨拶が21日、都内で行われ主演のチョン・イルとイ・サンムン監督が来日して登壇した。  

同作はホームレス一家と裕福な訳あり夫婦、2つの家族の偶然の出逢いが火種となるパラサイティック・スリラー。人気ドラマシリーズ「太陽を抱く月」のチョン・イルと「ガール・コップス」のベテラン女優ラ・ミランのW主演作で、21日より全国順次公開になった。  

第27回釜山国際映画祭で「『パラサイト 半地下の家族』に次ぐ大傑作」などと高く評価され、本国の公開でも、観客・批評家の熱狂を呼んでスマッシュヒットを記録した話題作。主演のチョン・イルは「太陽を抱く月」、「ポッサム ~愛と運命を盗んだ男~」など多くの大ヒット作品に出演し、ホームレス一家の父親ギウ役を演じた本作が7年ぶりのスクリーン復帰となった。

韓国映画「高速道路家族」のチョン・イル、イ・サンムン監督が 初日舞台挨拶に来日登壇
チョン・イル

イルはポケットからカンペを取り出して、「皆さんこんにちわ…映画『高速道路家族』で…ギウ役を演じたチョン・イルです」とたどたどしい日本語で読み上げ挨拶して観客を笑わせた。そして母国語で「この映画を持ってこうやって日本を訪れることができてとても感激しています」と笑顔で語理「皆さんはまだ映画を見る前ですが、この映画を少し期待してもいいのではないかなと思います」と作品に自信をのぞかせた。

そしてイ・サンムン監督は「『高速道路家族』は、皆さんご覧になると少し心が痛む、そんな映画ではないかと思うので申し訳ないなと思うのと同時に、映画を見るために足を運んでくださり本当にありがとうございます。この映画を見て、皆さんが今生きている暮らしている世の中、そして周りの人のことをもう一度考え直す時間を持っていただければ嬉しいなと思います」と述べた。

イルはギウ役について「今回7年ぶりに映画に復帰を果たすことになりました。久しぶりの復帰ということもありましたので、ごく一般的なありふれたキャラクターではない役柄を演じられるといいなと思いました。そんなときに贈り物のようなこの『高速道路家族』という映画に出会ったわけです。私が演じたギウという役柄ですが、きっと私でなくてもほかの男優さんなら誰もが演じてみたいと思うような役だと思います。感情の幅がとてもダイナミックで、私が今まで皆さんに見せたことがないような姿を見せられるだろうと思たので、このお話をいただいた時にすぐに出ようと決心しました」と明かした。

韓国映画「高速道路家族」のチョン・イル、イ・サンムン監督が 初日舞台挨拶に来日登壇
イ・サンムン監督

サンムン監督は俳優イルについて「精神的にも肉体的にも渾身の力を込めてこの役に取り組んでくださいました。それを見るだけでもこの映画を見る意味が十分あると信じています。2時間の間チョン・イルさんの演技をぜひ楽しんでいただきたいと思います」と語った。

そしてイルは「この映画は家族の意味について改めて考えることのできる、そしてそれ以外にも多くのメッセージが含まれた映画になっています。みなさんも共感できるところがたくさんある、そんな素材を扱った映画だと思いますので期待をしていただいていいかなと思います」とアピールした。

その後、観客から質問を受けるコーナーになり、客席から5人を選んでステージに挙げて、それぞれの質問を受けた。
あるファンは「今まではイケメンでさわやかな役柄が多かったと思いますが、今回こういう役に対して大変なところはありましたか」と聞かれ、イルは「本当にたくさんお方が同じような質問をしてくださいます。私は俳優というものは今に位置に安住することなく、絶えず変化し続けていかなければいけないと思っています。そういった意味でも、今までのチョン・イルという皆さんが持っているであろう決まったイメージを脱皮したいなと思っていました。そういった意味でもこのギウという役を選びました。このキャラクター^は本当に感情の起伏の激しい、そして心に大きな痛みを抱えたキャラクターです。そういったところで演じるのが難しくもありましたが、いつも監督が横で私を助けてくれました」と答えた。

「この役を演じる前と演じ終わった後でどのような変化があったか。また目標が変わったことはあるたのか」との質問には「韓国でこの映画が公開された後、いろんな人がチョン・イルはこんなこんな演技もできるんだといういい評価をしてくださいました。とてもうれしかったです。私は俳優を始めた当初から今も目標は変わっていません。まずは柔軟性のある俳優でありたい。そして当然のことではありますが、演技のうまい俳優でありたい。そして皆さんいい影響を与えられるような俳優でありたいというのが目標です」と述べた。

■イル「高速道路のサービスエリアで座ったり食べたりしたが誰も僕に気が付かなかった」

前の回に映画を見たというあるファンは「汚れっぷりというかホームレスぶりがすごくて、においそうなぐらいでしたけど、汚すことで苦労したことは」と聞かれ「私が劇中で来ている衣装は監督が買ってきてくれたものです」と明かした。さらに「劇中で僕が履いている靴は、スニーカーなんですけど、20年以上僕が持っていた古いそのまま履いています」という。
「高速道路のサービスエリアで多くの撮影が行われたんですが、ホームレスの役なので、カメラが回っていない時もあちこちに座り込んだり、何か食べたりしていたんですが、誰も僕に気が付きませんでした。だからこれは成功だなと思いました」と撮影裏話も明かした。

もう一人、映画を見たファンは「イルさんの新境地をたくさん見せていただいた。ギウもあらゆる側面があるキャラクター。ギウを演じる時に一番大切にしていたことは?」との質問には「監督とも実に多くのことを話しました。ギウという人物は、世の中で家族がすべてで、家族が生きる理由になっています。いろんなことを経験した末に社会に対しては門戸を閉ざし自分の中の世界で生きている。その中で頼れるのは家族だけです」といい「その点に関して監督もギウを演じるにあたってどの点を一番重要と考えルカ監督の話を聞いてみたいです」と監督に水を向けた。

■サンムン監督「ギウという人物を通して、世の中を皆さんにいま一度見直してほしいと思いました」

サンムン監督は「ギウというキャラクターについてチョン・イルさんと本当にいろんな話をしながら一緒に作り上げていきました。このギウという人物を通して、世の中を皆さんにいま一度見直してほしいと思いました。韓国においてもセーフティネットというものがありますが、そこから滑り落ちてしまった人たちがいる。資本主義の社会の中で適応できずにいる人たちがたくさんいます。そうした人たちがいろんな心配、そして怖さを抱えている。それが極限に達しているものがギウという人物である。だから常に何かから逃げている。世の中から遠ざかろうとしている。そんな姿が描かれています。ですから本作を通して、皆さんも周りの人たち、そして世の中について今一度考えていただければ嬉しいなと思います」とこの作品に込めた想いを語った。

最後のファンは「この映画にはたくさんの子供たちが出ているが、子供たちと仲良くするエピソードなどがあれば教えてください」と質問。イルは「子供たちと仲良くなるには、子供たちの視線でいろんなものを見て行動を考える。そして、話を聞いてあげる。その準備を自分もするということが大切かなと思います。平たく言えば一番簡単にこどたちと仲良くなるには子供たちが好きなおやつなどを食べてもらい仲良くなるということではないかなと思います。現場でも監督が僕が子供たちと仲良くなれるようたくさん手助けをしてくれました。そしてこどたちと一緒に遊んだりして自然に触れ合うようにしていました」と振り返った。そして質問をした5人に、ハンカチのプレゼントをしてファンサービスに勤めていた。

韓国映画「高速道路家族」のチョン・イル、イ・サンムン監督が 初日舞台挨拶に来日登壇
チョン・イル

そしてイルは「この場をお借りして監督にすごく感動したことをお話ししたいと思います。実は監督は日本にいらして舞台挨拶をするスケジュールではありませんでした。こうして本作は日本で本作が公開されることを祝うためにも、今回自費で日本を訪れてご一緒してくださいました」と監督に感謝の言葉を述べた。そして「僕にとって本当に贈り物のような作品に出演を提案してくださったことにも心から感謝したいと思います」と語った。

最後に、サンムン監督は「『高速道路家族』が、こうして日本の皆さんの前でこのように上映の日を迎えることができて、上映の機会を与えられたことにとても光栄に思っています」と語った。
そしてイルは「この映画は家族の意味をもう一度考えさせてくれる映画ですそれ以外にもたくさんのメッセージが含まれています。そして映画の結末は、ご覧になった皆さんが判断していただければと思います。私は今こうしてきちんとしていますが、皆さんが映画を見終わった後はギウの姿のほうがよく似合うと思うかもしれませんね」といって舞台挨拶を締めくくった。

チョン・イル「高速道路家族」の初日舞台挨拶に来日登壇
「高速道路家族」(Ⓒ 2022 Seollem film, kt alpha Co., Ltd. All Rights Reserved.)(4月21日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開)(配給: AMGエンタテインメント)

【STORY】
テントで寝て、夜空の月を照明として暮らすギウ(チョン・イル)と3人の家族。彼らは、高速道路のサービスエリアを転々とし、再び遭遇することのない訪問者に2万ウォンを借りながら食いつないでいる。ある日、すでにお金を借りたことのあるヨンソン(ラ・ミラン)と別のサービスエリアで再び遭遇してしまう。不審に思ったヨンソンはギウを警察に届け出る。ヨンソンは残されたギウの妻ジスク(キム・スルギ)と子供2人を放っておけず、家へ連れて帰り一緒に暮らすことに。何不自由のない生活を送るジスクと子供たち。そんな家族をギウは取り戻そうとするが…相反する二つの家族の出逢いがとんでもない結末を迎えることとなる。

■作品情報

監督・脚本:イ・サンムン
音楽:イ・ミンフィ 『ひと夏のファンタジア』『最善の人生』
美術:ソン・ソイル 『ポエトリー アグネスの詩』『バーニング 劇場版』
出演:チョン・イル、ラ・ミラン、キム・スルギ、ペク・ヒョンジン、ソ・イス、パク・ダオン
2022 年/韓国/韓国語/128 分/英題:Highway Family/字幕翻訳:具美佳定
配給:AMGエンタテインメント/公式サイト:https:kousokudouro-kazoku.jp