第38回東京国際映画祭 アニメ部門
「ホウセンカ」特別上映 木下麦監督登壇

(2025年10月10日11:30)

第38回東京国際映画祭 アニメーション部門 「ホウセンカ」特別上映 木下麦監督登壇
登壇した㊧から藤津亮太プログラミング・アドバイザー、木下麦監督、市山尚三プログラミング・ディレクター(©2025 TIFF)

第38回東京国際映画祭(10月27日~11月5日)の アニメーション部門に出品された「ホウセンカ」が9日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で上映され、木下麦監督が登壇。東京国際映画祭と日本外国特派員協会(FCCJ)との共催で記者会見が行われた。「ホウセンカ」は、「オッドタクシー」(21)の木下監督、此元和津也(脚本)と制作スタジオ・CLAPによる世界が注目する最新作。以下オフィシャルレポート公開。

はじめに、市山尚三プログラミング・ディレクターより、今年の映画祭について紹介。「今年は昨年に続き非常に力強い作品が集まった。昨年は中国作品が多いという傾向にあったが、今年は注目すべき点として、東南アジアの作品が多い。これは意図してプログラミングをしたわけではなく、東南アジアの産業の変化が影響していると思う。個人だけでなく企業による映画への投資が活性化してきている。もう一つの特徴として、史実・歴史上の人物にフューチャーした作品が多いことが上げられる。我々が認識している人物像とはまた違い、制作者が綿密に調べて新たに描き直している」と語った。

注目のイベント、ゲストについては「生誕100年記念として三島由紀夫特集を行う。アメリカのポール・シュレイダー監督作の『MISHIMA』は今まで日本では上映されてこなかった作品。東京国際映画祭の第1回目で上映するという話もあったが、なぜか無くなった。当時の関係者などがおらず詳細な理由はわからないが、念願かなっての日本初上映となる。Blu-rayでも観ている方はいると思うが、4Kレストア版ですし、スクリーンで見ると全く違うと思うので、ぜひ見ていただきたい作品」と述べた。

次に藤津亮太プログラミング・アドバイザーよりアニメーション部門の特色や注目イベントについて紹介。「今年のアニメーション部門は12作品。国内作品は“表現の挑戦”に関した6作品、国外作品は“世界と私の関係”に関した5作品を選出しました」とし、『ホウセンカ』と木下監督については「この作品は大変ユニークな作品かつ、日本のアニメーションが培ってきたセンスを継承している。また高畑勲監督の日常生活を丁寧に描くという手法の延長線上にある作品だと思い、選出しました。大変繊細な作品でもある」とした。

第38回東京国際映画祭 アニメーション部門 「ホウセンカ」特別上映 木下麦監督登壇
木下麦監督(©2025 TIFF)

木下監督は、今回アニメーション部門に選ばれたことについて、「『ホウセンカ』は2年半前に立ち上げて、丁寧に映像を作っていくということを目標に作った作品なので、皆さんに『美しい』、『丁寧だ』と言っていただけて嬉しい」と感想を述べた。

影響を受けた監督について、「高畑勲監督、宮崎駿監督はもちろん、実写でもマーティン・スコセッシ監督やクエンティン・タランティーノ監督、北野武監督にも、影響を受けています。基本的に人間を描く作品に強く影響を受けている。映画は人間を描くことと思っているので、そこは大事にしています」という。
またオリジナル作品を作る意義について、「オリジナル作品については、まだ生まれていない作品を作りたいという思いがあって、昨今のアニメは躍動的なものが多い中で、それを否定するわけではありませんが、静けさだったり、構図だったり、ライティングだったりで感情や物語を伝えることができると思い、今回の作品ではそれを表現しました」と語った。
そして、「アニメーションは国の垣根を超える素晴らしいカルチャーだと思っています。日本のアニメは海外でも人気ですが、まず日本の文化に根差したものを作っていくことを念頭に置いています。日本の文化を題材にしてかつ芸術性があり、新しいものを創り出していきたいです」と抱負を語った。「ホウセンカ」は10月10日(金)公開。

第38回東京国際映画祭 アニメーション部門 「ホウセンカ」特別上映 木下麦監督登壇
「ホウセンカ」ポスタービジュアル(©此元和津也/ホウセンカ製作委員会)
第38回東京国際映画祭 アニメーション部門 「ホウセンカ」特別上映 木下麦監督登壇
「ホウセンカ」場面写真(©此元和津也/ホウセンカ製作委員会)
第38回東京国際映画祭 アニメーション部門 「ホウセンカ」特別上映 木下麦監督登壇
(©此元和津也/ホウセンカ製作委員会)



木下麦監督プロフィール
アニメーション監督/イラストレーター 多摩美術⼤学在籍時からイラストレーター/アニメーターとして活動。アニメーターや監督補佐を経て、オリジナルTVアニメーション「オッドタクシー」で⾃⾝初となる監督、キャラクターデザインを担当。同作でCrunchyroll Anime Awards 2022 / Best Director、第25回⽂化庁メディア芸術祭 アニメーション部⾨ 新⼈賞などを受賞した。アニメーションの演出やコンセプトアート、キャラクターデザインなど幅広く活動分野を広げている。P.I.C.S. management所属。

【第38回東京国際映画祭 開催概要】
■開催期間:2025年10月27日(月)~11月5日(水)
■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区
■公式サイト:www.tiff-jp.net
【TIFFCOM2025開催概要】
■開催期間:2025年10月29日(水)~10月31日(金)
■公式サイト:www.tiffcom.jp