デヴィッド・リンチ監督死去 78歳 「ブルーベルベット」「ツイン・ピークス」など

(2025年1月17日10:45)

デヴィッド・リンチ監督死去 78歳 「ブルーベルベット」「ツイン・ピークス」など
デヴィッド・リンチ監督(Instagram/@davidlynchmfa)

映画「ブルーベルベット」、「デューン/砂の惑星」やドラマシリーズ「ツイン・ピークス」などで知られる伝説的な米映画監督デヴィッド・リンチ氏(78)が死去した。家族が16日(現地時間)にSNSで発表した。

米ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、リンチ氏の家族がフェイスブックで死去したことを発表した。「私たち家族は、深い悲しみとともに、デヴィッド・リンチ氏の死去をお知らせします。彼がいなくなった今、世界には大きな穴があいています。しかし、彼がよく言っていたように、『穴ではなくドーナツに目を向けてください』。今日は、金色の太陽と青い空がどこまでも続く美しい日です」などと追悼した。

死因は公表されていない。リンチ氏は昨年8月、肺気腫と診断されたことを明かし、最近は家から出られず、映画製作を続けることができなくなったと明かしたが、「決して引退しない」と明らかにしていた。「DEADLINE」によると、ロサンゼルスの山火事で自宅を移転せざるを得なくなった際に健康状態が悪化したという。

リンチ氏は1946年1月20日生まれ。米モンタナ州ミズーリ出身。1967年に短編映画「Absurd Encounter with Fear」の脚本家としてキャリアをスタート。シュルレアリスムを愛し、衝撃の長編監督デビュー作となった自主製作の「イレイザーヘッド」(77)は、もじゃもじゃ頭の主人公と胎児のような不気味な生き物のシュールで難解なストーリーがカルト的な人気を博し「カルトの帝王」と呼ばれ一躍有名になり、「エレファント・マン」(80)で、アカデミー賞の監督賞を含む8部門にノミネートされた。「ブルーベルベット」(86)と「マルホランド・ドライブ」(01)もアカデミー賞にノミネートされたがオスカー受賞はなかった。2019年に生涯の功績に対して名誉アカデミー賞を授与された。
ニコラス・ケイジ主演の「ワイルド・アット・ハート」(90)で、カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞。「マルホランド・ドライブ」ではカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞した。ほかにSF大作「デューン/砂の惑星」(84)などの作品がある。独特な作風で国際的に高い評価を得た。
そして、ワシントンの小さな町で人気の高校生の殺人事件を捜査する風変わりな警察官を追うABCのテレビドラマシリーズ「ツイン・ピークス」(90~91)が大ヒットし、エミー賞を受賞。映画「ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の日間」(92)も製作された。2017年には復活作「ツイン・ピークス: ザ・リターン」が放送された。コロナのパンデミック中に中止された「Unrecorded Night」というタイトルの新しいNetflixシリーズで復帰する予定だったがかなわなかった。

私生活では、ペギー・リンチなどと4回結婚・離婚。「ブルーベルベット」(86)に出演したイタリア人女優イザベラ・ロッセリーニとの交際で知られるが結婚はしていない。ペギーとの間の娘ジェニファー・リンチは「ボクシング・ヘレナ」(93)などの映画監督。

■カイル・マクラクランやスピルバーグ監督らが追悼

デヴィッド・リンチ監督死去 78歳 「ブルーベルベット」「ツイン・ピークス」など
デヴィッド・リンチ監督㊨とカイル・マクラクラン(Instagram/@kyle_maclachlan)

「デユ―ン/砂の惑星」や「ブルーベルベット」「ツイン・ピークス」などのリンチ監督作品に出演した俳優カイル・マクラクラン(65)は、インスタグラムにリンチ監督との写真を投稿して、「42年前、私には理解できない理由で、デヴィッド・リンチは私を無名から引き抜き、彼の最初で最後の大作映画に主演させました。彼は明らかに、私自身も気づいていなかった何かを私の中に見出しました。私のキャリア全体、そして実際のところ人生は、彼のビジョンのおかげです」とリンチ監督に感謝した。
そして、「私が彼に見たのは、創造の海が彼の中にあふれ出る、謎めいて直感的な男でした。彼は、私たち全員が到達したいと願う何かに触れていました。 私たちの友情はブルーベルベット、そしてツインピークスで開花し、私は彼が今まで出会った中で最も本物の生き生きとした人だといつも思っていました。 デヴィッドは宇宙と自分の想像力に同調しており、それは人間の最高のバージョンのように思えました。彼は答えに興味がありませんでした。なぜなら、疑問こそが私たちを私たちたらしめる原動力であることを理解していたからです。疑問は私たちの息吹なのです」などと称賛し、「デヴィッド、私は永遠に変わりました。そして永遠にあなたのカイルです。すべてに感謝します」と締めくくった。

2022年のドラマ「ザ・ファベルマンズ」にリンチ監督を起用した映画監督仲間のスティーブン・スピルバーグは、「手作り感あふれる映画を監督した先見の明のある夢想家」と評し、「世界はこのような独創的でユニークな声を失うことになるだろう。彼の映画はすでに時の試練に耐え、これからもそうだろう。」と追悼した。