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映 画
「世界の涯ての鼓動」極限の状況下での生物学者とスパイの恋
(2019年8月3日)
カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞した「パリ・テキサス」(1984年)や、同敢闘賞を受賞した「ベルリン・天使の詩」(1987年)、音楽ドキュメンタリー「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」(1999年)などで知られるドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督(73)の2017年の作品で米・仏・スペイン・ドイツの合作映画。J・Mレッドガードの小説「Submergence」をジェームズ・マカヴォイとアリシア・ヴィキャンデルなどのキャストで映画化したヴェンダース監督の深い洞察と独特の感性が満載のラブサスペンスになっている。
■ストーリー
フランスのノルマンディの海辺のホテルでジェームズ(ジェームズ・マカヴォイ)とダニー(アリシア・ヴィキャンデル)が出会い、お互いに強くひかれあい熱烈な恋に落ちる。ダニーは生物学者でグリーンランドの深海に小型潜水艦で潜り地球の生命の起源を解明する調査を孤なっていることを打ち明けるが、ジェームズはソマリアで水道工事を行うとうそをついていた。実はイギリスの情報機関MI-6の諜報員で、南ソマリアに潜入して爆弾テロを阻止する秘密の任務を追っていた。再会を約束してわかれた2人だったが、ジェームズは南ソマリアでイスラム過激派に拘束され、激しい拷問に会い地下の穴倉に監禁されて殺害される危機に。一方、ダニーの深海潜航作業もトラブルが待ち受ける。はたして2人の運命はというストーリー。
■みどころ
「X-MEN」シリーズや「スプリット」(2017年)の多重人格者役で鬼気迫る演技を見せるなど演技派のマカヴォイと、「リリーのすべて」(2015年)でトランスジェンダーの夫を支える妻を演じてアカデミー賞助演女優賞を受賞したヴィキャンデルの競演は見ものだ。前半はノルマンディの広大で美しい自然を舞台に情熱的なラブロマンスが展開するが、2人が分かれてそれぞれの任務に就くところから俄然緊迫した展開が続いて最後まで引き込まれる。南ソマリアで生死の境をさまようジェームズと潜水作業などのダニーのシーンが交互に繰り返され、ラストへと向かっていくなかで、2人の互いへの思いは消えることなくむしろ極限状況の中で純化されて、ホテルで交わした2人の情熱的なベッドシーンや、生と死や世界情勢、海底の神秘と生命の起源など深遠な洞察を含んだ饒舌な2人の会話の回想シーンが織り交ぜられていく展開は圧巻だ。
(2019年8月2日公開)