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「頑張る若者たち」を描いた「行き止まりの世界に生まれて」「田園ボーイズ」のとっておき情報

(2020年9月8日11:30)

映画評論家・荒木久文氏が、「頑張る若者たち」を描いた「行き止まりの世界に生まれて」と「田園ボーイズ」の見どころととっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、9月1日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

「頑張る若者たち」を描いた「行き止まりの世界に生まれて」「田園ボーイズ」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   お呼びしましょう、荒木さーん!

荒木   はい。ダイちゃん、誕生日おめでとう!

鈴木   ありがとうございます!

荒木   54歳だよね?

鈴木   54歳ですよ。

荒木   立派なおじさんですね。

鈴木   もう完璧なおっちゃんですよ。

荒木   僕の中でダイちゃんはまだ30代半ばくらいの意識なんですね。

鈴木   自分でもそうですもん。

荒木   初めて会ったのがそのくらいなので、ずーっとそのつもりでいたんですけども。1966年、昭和41年生まれだもんね。9月1日は何曜日か知っていますか?,br>
鈴木   生まれた日のですよね?木曜日!

荒木   そう。よく知ってますね。

鈴木   昔調べた記憶があるんですよ。

荒木   大安ですよね。

鈴木   そうなんだ?

荒木   この年は、丙午(ひのえうま)ということで、出産数が136万人でした。今と比べれば多いんですが当時は極端に少ない年ですよね。160万人とか190万人とかが普通でしたから。

1966年生まれは、長嶋一茂さんや小泉今日子さん、マイク・タイソンなんかもですね。9月1日生まれの有名人だと、小澤征爾さんや若山富三郎さんですよね。

鈴木   そうなんです。

荒木   あと、ルート・フリットもですね。 鈴木   そうですか!グーリットともフリットとも呼ばれるあの彼!

荒木   そうそうそう。
1966年当時は、首相は佐藤栄作さんで、今の安倍さんの大叔父さんでしたね。
飛行機事故が多かった年で、全日空が羽田沖に不時着し、あの「逆噴射」ですよね。 3月にはカナダ機着陸失敗や英国航空空中分解などがありました。
また、常磐ハワイアンセンターが開設された年でした。
流行歌は日本の曲だと『君といつまでも』『こまっちゃうナ』『霧の摩周湖』『想い出の渚』など、海外のポップスだと、ママス&パパスの『マンデー・マンデー』『夢のカリフォルニア』、ザ・モンキーズの『恋の終列車』などですね。
ダイちゃんの生まれた1966年の出来事で一つだけ選べと言われたら、僕は「ビートルズ来日」ですね。こんな大イベントがあった年に生まれたダイちゃんですから、そういう意味でも音楽の申し子と言えるんじゃないかなと思います。
鈴木   なるほど。上手いなぁ!!!荒木さん!

荒木   これからも頑張って、DJとしていい音楽をみんなに紹介していってください。

鈴木   荒木さん、なんか泣きそうなくらい嬉しいんですけど。嬉しい。ありがとうございます。

「頑張る若者たち」を描いた「行き止まりの世界に生まれて」「田園ボーイズ」のとっておき情報
「行き止まりの世界に生まれて」(公式サイトから)

荒木   さっき言ったように、僕の中ではダイちゃんは万年青年というか、頑張る青年というイメージがあって、今日の映画はそんな「頑張る若者たち」を描いた作品を2本ご紹介します。
共通しているのは、“苦しい現実から抜け出そうと頑張る若者たち”を描いている点ですね。

2本とも9月4日から公開なのですが、まず1本目。
『行き止まりの世界に生まれて』というアメリカのドキュメンタリーです。 米国のイリノイ州と言えば自動車、鉄鋼などの主要産業が衰退した、いわゆる「ラストベルト」と呼ばれる地域なんです。

鈴木   錆びついた地帯ですよね。 荒木   そうです、そうです。
その中でもロックフォードという町はアメリカで最も劣悪なひどい町と言われています。 全米最も惨めな都市ランキング3位(2013年 Forbes)。全米最も危険な都市ランキング8位(2019年 24/7 Wall St)。全米最も劣悪な都市ランキング16位(2018 24/7 Wall St)にランクインするくらい非常に惨めな町と言われています。
そんな街が舞台のドキュメンタリー映画です。

この町に暮らす3人の少年、キアー、ザック、ビンの3人の少年は、幼い頃から貧しい暴力的な家庭に育ち、彼らはそれから逃れるようにスケートボードに夢中になります。
スケボー仲間は彼らにとって唯一の仲間で、家族のようだったのですが、彼らも大人になるにつれ少しずつ道が分かれていきます。
キアーはようやく見つけた低賃金の仕事を始め、ザックは父親になり、そしてビンは映画監督になります。

この映画はそのビン監督が、10代の頃からスケートボードを楽しむために撮り始めたビデオを、12年間カメラを回し続けて記録した作品です。
前大統領のバラク・オバマが2018年の年間ベスト映画10本のうちの1本に選出しています。

若者たちのパーソナルな物語なんですけど、結果的には今のアメリカを映し出したということで、多くの映画祭、アカデミー賞やエミー賞にもノミネートされました。
苦境の中で生きながら、それでも「前に進みたいんだ」と願う彼らの背中にエールを送りたくなるようなそんな作品です。
主人公たちの等身大の物語の一方で、今のアメリカの現実が見えてきます。ダイちゃんもご存知のように、2016 年の大統領選で、“ 夢を失った ” ラストベルトの人々による投票がトランプ大統領誕生に大きな影響を与えたと言われていますね。
「行き止まりの世界」とはそんなロックフォードを表す言葉でもあります。

ただ、私が思うのは、この映画は世界で最も豊かな国、アメリカの中の「寂れた都市」の若者の環境を記録した作品であるということです。世界にはアメリカとは比べ物にならないほど貧しい国や地域があり、その寂れた地域はロックフォードとは比べ物にならない貧しさがあります。情熱を注げるスケートボードもなければ、仲間を映すカメラもない世界で子どもたちは貧困の中で労働力としてしかとらえられていないという、アフリカやアジアなどのもっと過酷な現実があるということを忘れてほしくないですね。
ということで、1本目はドキュメンタリー『行き止まりの世界に生まれて』という作品でした。

「頑張る若者たち」を描いた「行き止まりの世界に生まれて」「田園ボーイズ」のとっておき情報
「田園ボーイズ」(©2020「田園ボーイズ」製作委員会)

続いては日本の劇映画です。 過酷な環境の中にいるというわけではないのですが、田舎で頑張る若者たちのコメディです。同じく9月4日公開の『田園ボーイズ』という作品です。

舞台は見渡す限りの青々とした田んぼが連なる堂々とした田舎です。その田んぼの中にぽつーんと一軒家があります。それが新規オープンした「田園」という名前のホストクラブです。オープンさせたのは場末のガソリンスタンド店員のシンジ、町役場の公務員ヤスオ、農家の息子ジロウ、そして自称「歌舞伎町No.1ホスト」だったという、どこかうさん臭いカタオカ君の、ちょっとイケてない微妙なイケメン4人組。
ホストクラブ「田園」開店はしたものの、お客のほとんどは近所の農家のおばちゃんや、下手したら腰の曲がったおばあちゃんたちで、お茶と自分のところで付けた漬物を持参する始末です。

ほとほと困り果てた4人は、営業スタイルを基本的に見直し、人のいない駅前で街宣カーを出したりビラ配りしたり、出張ホストサービスを盛り込む企業努力を一生懸命します。それが功を奏してか、新しいお客さまが飛び込みで来店するようにもなります。常連の女性客もつくようになります。

ある日、近くで映画の撮影が行われることとなり地元のエキストラの募集があります。お店の宣伝になるんじゃないかと、ホストたちは全員でエキストラオーディションに参加した結果、シンジとジロウの二人のホストが合格します。その撮影の後、その映画のヒロイン女優が遊びにきて、彼女が写真をSNSに上げた事で一躍有名となり、お店はお客が殺到し繁盛する事になります。ところが、メンバー全員誰しもが想像も出来ない事実が発覚して、さあ、ホストクラブ「田園」はどうなるのか?

出演者はシンジ役を有澤樟太郎(ありさわしょうたろう)、カタオカ役を伊万里有、(いまりゆう)、ヤスオ役を田中尚輝(なおき)とご存知ないでしょうね。 2.5次元ミュージカルってご存知ですか?

鈴木   うーん…。

荒木   2.5次元舞台、2.5次元ミュージカルというのは、漫画やアニメ、ゲームなどを原作・原案とした主にミュージカル形式の舞台です。
『テニスの王子様』とか聞いたことあるでしょ?

鈴木   はいはいはい。

荒木   他には『弱虫ペダル』や『戦国BASARA』、最近では『ミュージカル「刀剣乱舞」』などが2.5次元ミュージカルの筆頭ですね。このようなジャンルに出ている役者さんたちが多いので、微妙なイケメンという言い方がぴったりと言っては失礼ですが、みんないい味出していますよ。

もともとは今年1月から全国11局で放送されたテレビのオリジナルドラマ『田園ボーイズ』の続編となるのがこの作品です。監督は『チェリーボーイズ』の西海謙一郎さん。

田園風景が広がる小さな田舎町でくすぶる4人の青年が、ホストクラブ開業を目指して奮闘する姿を描くという、さっきの作品に比べるとこちらは極端な設定の大笑いの作品です。ちょっとSFも入ってるので、観ていただくと面白いですよ。
日本の田舎のどこにもこうしたくすぶっている、目的や周りの状況にうんざりしているという感じの若者たちはたくさんいるわけです。地方に住む若者たちが、逆境の中で夢に挑戦するということで自己の存在やアイデンティティを確認するというのはドラマなどではよくありますよね。現実には「ホストクラブ田園」のようには上手くいかないでしょうし、そんな簡単じゃないと怒る方もいるかもしれませんが、でも「超頑張れ!若者頑張れ」とエールを送っている作品だと思います。

今日誕生日を迎えたダイちゃんは、若者のときから目標を持って、自分の生きる道をきちんととらえて努力してきた人ですよね。僕もよく知っていますけど。まああんまり自分では言わないでしょうけどね。大変な努力家ですし、そういう意味で、今ラジオを聴いている逆境にある若者たちに何かメッセージみたいなのはありますか?

鈴木   まじですか!?突然荒木さんに振られましたけど、荒木さんに出会ったとき30代半ばくらいじゃないですか。あのときやっぱり、こういう業界にいたり目指している人間にとって、30代半ばはまだまだ20代前半の小僧みたいなものなんですよね。それで音楽が好きで、何か人に伝えたいという思いしかない一人の青年が、ただただ音楽の良さとか世の中の面白いことを伝えたいなと思いながら一生懸命頑張ってきたら、あっという間に、本当に気が付いたら54歳なんですよ、今日。だから、ラジオのリスナーさんは結構自分探しというか一生懸命悩んで生きている方が多いと思っていて、悩みのメッセージなんかも昔からよくくるんですよ。「ダイさん、どうしよう?」って言われて、それぞれ人生が違うからジャストフィットする答えはないんだけど、でももし、小さくてもいいから好きなものや夢中になれるものがあったら、それを兎に角とことん突き詰めてほしいし、それがまだ見つからなくてもがいている方は、見つかるように広く大きくアンテナを広げて日々ただ生きてほしいなと思います。そして、あっという間に50代になっちゃったって言えるような人生になればいいなと思ってます。

荒木   なるほどねぇ。さすが54歳のコメントですよね。今まで苦労してきたし、ぼーっと生きてきてないですよね。偉い!

鈴木   いやいや、ぼーっと生きてるようだけど、やっぱり悩んでやってるんですよ。多分みんなそれぞれ。

荒木   一生懸命やってきたのはよく知ってますよ。
ということで、ダイちゃんの誕生日メッセージも聞けたし、でも感覚的には若い子と変わらないから、益々身体に気を付けて頑張ってください。

鈴木   そうですね。体調だけは気を付けて頑張ります。

荒木   ということで今日は2本、若者向けの作品をご紹介しました。

鈴木   荒木さん、ここでエールのやり取りというのも変なんですけど、荒木さんの存在というのは僕にとって非常に刺激であり非常に支えになっているので、これからもよろしくお願いします。

荒木   こちらこそありがとうございます。

鈴木   荒木さん、ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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