東京国際映画祭3冠「敵」 先行プレミア上映で長塚京三らが舞台挨拶

(2024年12月12日10:00)

東京国際映画祭3冠「敵」 先行プレミア上映で長塚京三らが舞台挨拶
登壇した㊧から吉田大八監督、瀧内公美、長塚京三、河合優実、黒沢あすか(11日、東京・新宿区のテアトル新宿で)

第37回東京国際映画祭で東京グランプリ、最優秀男優賞(長塚京三)、最優秀監督賞(吉田大八監督)を受賞した映画「敵」(2025年1月17日公開)の先行プレミア上映が11日、都内で行われ、主演の長塚、共演の瀧内公美、河合優実、黒沢あすか、吉田監督が舞台挨拶に登壇した。

本作の主演には、『ザ・中学教師』(92)で初主演を飾り、『ひき逃げファミリー』(92)で第 47 回毎日映画コンク ール男優主演賞、『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(97)で第 21 回日本アカデミー賞優秀主演男優賞するなど、 1974 年にフランスで俳優デビューしてから実に50年、名優として日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長 塚京三。
2013 年公開の『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』以来、12 年ぶりの主演映画となる。“理想の上 司像”の印象も強い長塚が、本作では元大学教授・渡辺儀助を演じ、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。

清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子には瀧内公美、亡くなってなお儀助の心を支配 する妻役には黒沢あすか、バーで出会い儀助を翻弄する謎めいた大学生には河合優実。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩ら実力派俳優陣が脇を固める。

舞台挨拶では、東京国際映画祭での3冠獲得を祝し、女優陣から長塚、吉田監督にサプライズの花束贈呈が行われたほか、2024 年を振り返りそれぞれにとっての“敵”について語った。

東京国際映画祭3冠「敵」 先行プレミア上映で長塚京三らが舞台挨拶
長塚京三

主人公・渡辺儀助役で12年ぶりの映画主演を務める長塚は、この度の快挙に「ビックリしました。受賞当日は会場に監督と並んで座っていたので、名前を呼ばれた ときは二人とも飛びあがりました」と照れ笑いしたが、作品について「出演した自分が言うのもおこがましいですが、俳優を50年やって来て自分の姿を見て自分の声を聞いて初めて感 動しました。大人気ないかもしれませんが、胸に来るものが ありました」と手応えを得ていた。

吉田監督も「撮影が去年の前半、東京近郊の町の小さな家の 中でみんなでコツコツ小さくやっていた映画です。それがあ のような華やかな場所でみんなに褒めてもらえるなんて。思ってもいない結果でした。こういう夢が映画にはあるんだと 改めて思いました」と三冠受賞の喜びを噛みしめていた。

東京国際映画祭3冠「敵」 先行プレミア上映で長塚京三らが舞台挨拶
河合優実

儀助の大学教授時代の教え子・鷹司靖子役の瀧内は長塚との共演に「幼い頃からテレビや映画で見てきた大先輩であり、日本の宝である長塚さんの現場での佇まいを隣で拝見し、勉強でしかなかったです。最終日の前日には『もう会えない んだ』と思うと涙が止まらなくなりました。それくらい豊かな時間を過ごさせていただきました」と感激していた。

儀助を先生のように慕う大学生・菅井歩美役の河合は「撮影中は儀助さんと長塚さんを重ねて見ていたので、目や体から滲み出るものを受けて集中力を使いました。長塚さんは本当に素晴らしくて、儀助さんは映画の主人公として魅力的 な役。映画を観て長塚さんのお芝居に感動して、素晴らしい役者さんとご一緒出来ていたんだと改めて思いました」としみじみ。

東京国際映画祭3冠「敵」 先行プレミア上映で長塚京三らが舞台挨拶
黒沢あすか

儀助の元妻・信子役の黒沢は「長塚さんとはスマートなセリフの受け渡しをすることが出来ました。リハを何度も重ね る中で自分がクリアになって、長塚さんのお陰で自分の中身とセリフに雑味がなくなっていくのを感じました」と感謝。

3人の実力派女優陣との共演に長塚は「とても緊張しましたけれど、凄くいい勉強をさせていただいた。皆さん力のある女優さんでぶつかって来られるわけですから、受け止めるのに一生懸命でした。本当に素晴らしい女優さん方でした」 と称賛した。

東京国際映画祭3冠「敵」 先行プレミア上映で長塚京三らが舞台挨拶
吉田大八監督

長塚抜擢の理由について吉田監督は「脚本執筆時は原作者の筒井康隆先生の姿を想像していましたが、書き終わった時 に長塚京三さんが思い浮かんだ」と明かし「長塚さんのお体を借りて決定稿を完成させました。撮影前に何度か読み合 わせをしたり、雑談をさせていただけたことで、撮影前に自分の中で長塚さんと儀助を重ね合わせる作業が出来たのは 良かった」と当て書きに納得の表情。

一方、長塚は本作のオファーについて「コロナ禍があって、役者活動もここで辞めるのを余儀なくされるのかと思って おり、歳をとって人生を閉じていく人間の役をやらなければと思っていた矢先の事だったので、『あ、来るものが来る んだ』と思った」と待ち受けていた役に出会えた喜びを口にしていた

■「今年の敵」とは?

タイトルにちなんで自身の“今年の敵”を発表。黒沢は自分が理想とするルートを走ってくれないという理由で「カーナビ」と明かし場内爆笑。
河合は「怠惰な心」といい「これは自分の失くしたいところであり勝ちたいところ。怠けたく なる欲求に勝てないです、いつも。今年もやるべき優先するべきことに辿り着けませんでした」とブレイクしているの にもかかわらず、反省しきりだった。

東京国際映画祭3冠「敵」 先行プレミア上映で長塚京三らが舞台挨拶
「敵」は「弱さと強気」と書いた瀧内公美

瀧内は「弱さと強気」といい「今年は本当に目まぐるしく、自分の弱さが露呈した 1 年だと思います。そんな時に強気 で立ち向かって行こうとすると空回り。反省ばかり」としながら「来年は素直さと謙虚さと感謝を忘れず、生きていき たい」と新年への抱負を述べた
一方、穏やかなイメージのある長塚は「わがままなわたし」と発表し「僕は短気でどんなこともわがままなわたしがぶち壊すことが多い。これからは人にも自分にも優しく、僕も許すから皆さんも許してというスタンスで生きていきたい」と意外な一面を明かして会場を驚かせていた。

最後に主演の長塚は「みなさん、ゆっくり楽しんでください」とこれから本編を鑑賞する観客にメッセージ。吉田監督 も「今日は皆さんのお陰で盛り上がった舞台挨拶となり、嬉しくて驚いています。ただこれから映画が始まりますので、 舞台挨拶の内容は一度忘れていただいて、まったく違う 4 名が登場しますので、映画を楽しんでご覧ください」と呼び 掛けていた。

【物語】
渡辺儀助、77 歳。大学教授の職を辞して10年。妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に暮らしている。料理は自分でつくり、晩 酌を楽しみ、多くの友人たちとは疎遠になったが、気の置けない僅かな友人と酒を飲み交わし、時には教え子を招いて ディナーを振る舞う。預貯金が後何年持つか、すなわち自身が後何年生きられるかを計算しながら、来るべき日に向か って日常は完璧に平和に過ぎていく。遺言書も書いてある。もうやり残したことはない。だがそんなある日、書斎の iMac の画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。

【クレジット】
出演:長塚京三 瀧内公美 河合優実 黒沢あすか 中島歩 カトウシンスケ 髙畑遊 二瓶鮫一 髙橋洋 唯野未歩子 戸田昌宏 松永大輔 松尾諭 松尾貴史
脚本・監督:吉田大八
原作:筒井康隆『敵』(新潮文庫刊)
企画・プロデュース:小澤祐治 プロデューサー:江守徹
撮影:四宮秀俊 照明:秋山恵二郎 美術:富田麻友美 装飾:羽場しおり 録音:伊豆田廉明 編集:曽根俊一 サウンドデザイン:浅梨なおこ 衣裳:宮本茉莉 ヘアメイク:酒井夢月 フードスタイリスト:飯島奈美 助監督:松尾崇 キャスティング:田端利江 アクション:小原剛 ガンエフェクト:納富貴久男 ロケーションコーディネーター:鈴木和晶 音楽:千葉広樹 音楽プロデューサー:濱野睦美 VFX スーパーバイザー:白石哲也 制作プロデューサー:石塚正悟 アシスタントプロデューサー:坂田航
企画・製作:ギークピクチュアズ 制作プロダクション:ギークサイト 宣伝・配給:ハピネットファントム・スタジオ/ギークピクチュアズ 製作:「敵」製作委員会
ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
公式サイト:https://happinet-phantom.com/teki 公式 X:https://x.com/teki_movie
2025 年 1 月 17 日(金)テアトル新宿ほか全国公開