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東京国際映画祭と「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」のとっておき情報

(2020年11月3日18:40)

映画評論家・荒木久文氏が、東京国際映画祭と「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」のとっておき情報の見どころととっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、10月27日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

「きみの瞳(め)が問いかけている」と「花と沼」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   荒木さーん!こんにちは。よろしくお願いします。

荒木   こんにちは。荒木です。よろしくお願いします。10月も最終週ですね。 この週末に開催されるイベントをいくつかご紹介したいと思います。まず一つ目は、東京国際映画祭についてです。ダイちゃんは行ったことありますか?

鈴木   行ったことないんですよ。

荒木   そうですか、なかなか雰囲気が良いので、是非今年行けたら行ってみてください。

東京国際映画祭(TIFF)は毎年10月に開催される国際映画製作者連盟 (FIAPF) 公認の国際映画祭。長編作品のみを対象とする、日本最大の映画祭です。
今年はコロナウイルスの影響で三大映画祭と言われる、ベネチア、ベルリン、カンヌなど世界中の映画祭の多くが中止、あるいは規模縮小等を余儀なくされています。
そんな状況の中で断固、新型コロナ対策を全力で実施の上「フィジカルな上映」を基本として開催するとしています。つまり、人を入れてスクリーンで映画を見せることをするということです。

今年で33回を迎え、六本木がメイン会場で期間は10/31~11/9の10日間です。 今回の特徴は、従来のインターナショナル・コンペティションに替えて内外のすぐれた作品をひとまとめにした「TOKYOプレミア2020」として、今までのコンペ部門、アジアの未来部門、日本映画スプラッシュ部門をひとつに統合します。
いろいろな賞を争うのではなくこの部門の全作品32作品ですが、これを対象に観客賞  一作品を選ぶことになります。

鈴木   文字通り「お祭り」じゃないですか!

荒木   そうですね。
観客の投票でナンバーワンを決めるので、観客の皆さんの重要度が増すことになります。賞はそれだけです。「TOKYOプレミア2020」部門以外は、特別招待作品やワールドフォーカス部門などは従来通りです。

我々が普段見られないアジアや東欧の映画やドキュメンタリーなど、今年の作品も質のいいものが揃っています。チケットもまだ余裕がありますので、安い価格で封切り前の映画が見られるチャンスです。

アラキンのムービーキャッチャー/東京国際映画祭と「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」のとっておき情報
「アンダードッグ」(©2020「アンダードッグ」製作委員会)

注目されるのは、今年のオープニング作品とクロージング作品です。
今年のオープニング作品は武正晴監督、足立紳さんが原作・脚本を担当しています。『百円の恋』が有名なコンビですね。『アンダードッグ』という作品です。
森山未來さん、北村匠海さん、勝地涼さんをキャストに迎えたボクシング映画です。
11月27日に公開される前後半あわせて4時間を超す作品です。アンダードッグというのは英語でかませ犬のことです。
森山未來さんが栄光から落ちぶれていった「かませ犬」を演じ、3人のボクサーのそれぞれの人生が交錯していく人間ドラマが描かれている傑作です。

そしてクロージング作品は橋本一監督の作品『HOKUSAI』。
そう、あの富嶽三十六景などで知られる江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎の人生を描いています。
壮年時代を柳楽優弥さん、老年時代を田中泯さんが演じ、喜多川歌麿や東洲斎写楽滝沢馬琴などの江戸文化を中心とした人間模様を描いています。
こちらは来年公開予定です。これもすごい作品です。
日本最大の映画のお祭り、コロナ禍ですが行ける人は一度是非行ってみてください。

鈴木   荒木さん、今回の東京国際映画祭のオープニングとクロージング、邦画ということですが、邦画で始まって終わるというのは珍しいんですか?

荒木   そうですね。いつもはほぼどちらかは洋画が入っていましたね。今年は両方とも邦画ですね。東京国際映画祭についてお話ししました。

荒木   続いては、この時期と言えばの「ハロウィン」です。

鈴木   なんか今年はちょっとムードが違うな。

荒木   普通なら31日が土曜日で絶好のタイミングですよね。
みんなでワーッと繰り出したいところですが、渋谷では渋谷区長が感染拡大防止のため「ぜひご自宅で楽しんでいただき、渋谷に来ないでね。」と、来訪自粛を呼びかけました。 毎年多くの人が集まっていた池袋・川崎・栄ハロウィンはリアルイベントの中止を発表し、配信プラットフォームを利用したオンラインイベントを予定しているそうです。
そんな中でちょっと面白いのは、今や日常の必須アイテムになったマスクをテーマにしたハロウィンイベントを行うところもあるようですよ。
川崎市多摩区のよみうりランドでは「マスクで安心、マスクで楽しい、マスクでお得!」をテーマに今『よみラン マスクdeハロウィン』を開催しているそうです。

鈴木   マスク着用でマスクで何か仮装しようということかな。

荒木   そうなんです。いつもしているマスクをハロウィン仕様に可愛く色を塗ったり、凝ったデザインをしたり、いわば、デコレーションしたマスクを着用した上で、帽子やマントなどハロウィーンアイテムを使った仮装をすると、1800円ぐらいする入園料が無料になり、アトラクション乗り放題のワンデーパス(年齢によって3,400円~5,500円)を1,000円引きで購入できるそうですよ。

鈴木   それはお得だな~!

荒木   とにかく今年は、例年に比べて寂しいハロウィンになりそうです。 鈴木   まあそうですよね。

荒木   今年だったらどんな仮装が流行っただろうな。でもやる人もいるのかもしれないですね。きっと鬼滅の刃のコスプレとかだろうね。

鈴木   そうでしょうね。その辺りはかなりいそうですね。

荒木   今年は本来であれば、映画界でも通常この時期にはハロウィンムービーと呼ばれる作品が並ぶものですが、今年はざっと眺めても見るべきものがありません。

そうそう、この話だけはしておきましょう。
そのタイトルも『ハロウィン』という作品で、私が一人で唱えている日本ハロウィン起源1978年説つまり、日本ハロウィン元年の重要なファクターである、この年公開されたジョン・カーペンター監督の映画です。
ハロウィンだけに現れる仮装用のマスクを被った殺人鬼「ブギーマン」ことマイケル・マイヤーズが登場するこのシリーズ、怖いですよね。10月31日のハロウィン当日か、その前日あたりに現れて凄惨な事件を起こします。
闇の中に潜み標的を見定め、逆手に握った包丁でグサグサと刺し殺す姿が怖くて、熱狂的なファンも多く、これまで10作を超える関連作品が公開されています。実はこのシリーズ、2021年に新作の『ハロウィン・キルズ』が公開される予定だったのですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、公開が2年後に延期されてしまいました。

鈴木   2年後?1年後じゃなくてですか?

荒木   そうなんです。だから2022年に公開予定です。
殺人鬼ブギーマンも、コロナウイルスには勝てなかったということですね…。
ハロウィンについては映画もイベントも今年は我慢で、来年に盛大に楽しみたいですね。

鈴木   渋谷とか規制をしているとのことですが、若者たちは本当に渋谷に来ないんですかね?

荒木   いやー来てるでしょうね。昨日あたりも仮装なのかそうじゃないのかギリギリの感じでしたが、全身黒一色で頭に角が生えたお姉ちゃんがいましたから。

鈴木   何人かはうろうろしているんですね。ハチ公前の交差点はいつもの雰囲気じゃないんですかね。

荒木   昨日はハチ公前いましたよ。なんの仮装かはわからないけど。まあ、いつも仮装みたいなファッションの人いますからね。

鈴木   そうなんですよ。

荒木   でも何人かは渋谷に出てくるでしょうね。密の状態を作るのはよくないので、気を付けましょう…。
さあ 最後の話題ですが、いきなりクイズです。
ダイちゃんは、ルパン3世のモデルになった実在の俳優って誰だか知ってますか?

鈴木   知らないな…。昔の初期のルパンのモデルってことですか?

荒木   そうです。
実在の俳優いるんですけど、やっぱり世代が違うから知らないかな。

鈴木   日本の俳優ですか?

荒木   外国の俳優さんですね。ラジオ聴いている方も知っている人いるのかな。ジャン=ポール・ベルモンドです。

アラキンのムービーキャッチャー/東京国際映画祭と「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」のとっておき情報
「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」(CARTOUCHE a film by Philippe de Broca © 1962 / STUDIOCANAL - TF1 DA - Vides S.A.S (Italie))

鈴木   うわー!言われてみたら雰囲気似てるわ。

荒木   そうなんですよ。
彼がモデルだと言われていますね。寺沢武一さんの漫画の『コブラ』も彼がモデルと言われています。

ジャン=ポール・ベルモンドは、1960~70年代にかけて、スティーブ・マックイーン、クリント・イーストウッドと肩を並べた“アクション界の大スター”にしてフランスの国民的スーパースターです。1933年4月9日生まれ、と言いますから今87歳です。
ルパンやコブラのモデルになっただけでなく、後のジャッキー・チェンやトム・クルーズなどのように、スタントマンを使わず、自ら体を張ったスタントで世界を魅了した最初の俳優と言っていいでしょうね。
日本ではジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』など、ヌーヴェルヴァーグ時代の作品が語られることがほとんどなのですが、彼の本領はむしろアクションやコメディにあるんだという人も多いんです。

父は彫刻家で、母は画家という芸術家の家庭に生まれ、57年の『歩いて馬で自動車で』で本格的に映画デビュー。その後『二重の鍵』と『勝手にしやがれ』で、ヌーヴェルヴァーグ旋風に乗ってフランス映画界を代表する国際的スターとなったんです。65年の『気狂いピエロ』を最後にゴダール監督とは袂を分かち、ベルモンドはアクション、コメディ、ラブ・ストーリーと、エンタテインメントの王道をいく作品を中心に出演して次々と大ヒットを飛ばし、フランス映画の顔として大活躍することになりました。ふてぶてしい独特な個性と特徴的な風貌ですよね。ハンサムではないですが。

鈴木   そうですね。一度見たら絶対忘れないですもん。

荒木   国際的スターになり、スタントもやりながらどこかコミカルなテイストがありますよね。フランス映画の顏です。
そのころ世界中で大人気のアラン・ドロンと比べられることが多かったのですが、フランス国内的にはジャン=ポール・ベルモンドの方が人気が高かったといわれています。
そんなベルモンドの傑作選が、10月30日から新宿武蔵野館ほか全国で順次公開されます。 鈴木   何本もやるんですか?

荒木   そうなんですよ。近年観る機会の少ないアクション・コメディが中心です。 ゴダール作品は日本でもDVDで観られますが、このあたりは39年から57年ぶりというのが多いです。
上映作品は、『大盗賊』(61年)、『大頭脳』(69年)、『恐怖に襲われた街』(75年)、『危険を買う男』(76年)、『オー!』(68年)、『ムッシュとマドモアゼル』(77年)、『警部』(79年)『プロフェッショナル』(81年)の全8作品。珍しい作品が多いので聞いたことない人が多いと思います。
古い人は知っているかもしれませんが、『大盗賊』は18世紀のパリの義賊の恋と盗みの大冒険、まさにルパンです。

鈴木   ルパンじゃないですか!

荒木   そうなんです。『危険を買う男』は一匹狼の仕事人が悪を退治する話です。 また、連続殺人犯を追う凄腕の刑事が大暴走する『恐怖に襲われた街』など、ベルモンドの魅力が満載です。

『大盗賊』は4Kリマスターですし、それ以外の作品はHDリマスターによる最高画質での劇場公開です。『プロフェッショナル』は日本初劇場公開になります。

「ジャン=ポール・ベルモンドすごい懐かしい!」という人と、「誰だろう」という人といると思いますが、ルパン三世のモデルになった方を是非観てみたいという人もいるかもしれませんね。

鈴木   いるでしょうね。

荒木   いい機会なので劇場に行って観てみてください。87歳ですからいつどうなってもおかしくないですからね…。
『ジャン=ポール・ベルモンド傑作選』についてご紹介しました。 今日はイベントについてお話しました。

鈴木   ルパン三世の話ですが、『大盗賊』をモンキー・パンチさんや色んな方が見るじゃないですか。それであの一味ができあがっていくと思うと、やっぱりどんなものにもオリジナルだけじゃなくて何か憧れたものがあるんでしょうね。

荒木   そうですね。ヒントというかインスパイアされるという言い方よく聞きますね。 モンキー・パンチのルパン三世にもオマージュがあったりしますので、みんな何かものを作り上げていくときは何かに影響を受けていますよね。
ジャン=ポール・ベルモンドだと言われて見ると本当にそうだなと思います。 そういうものが世の中にいっぱいありますので、それを探すのも一つの楽しみかもしれません。

鈴木   映画の作品じゃなくてこういう話も非常に楽しくていいですね。

荒木   そうですか。ありがとうございます。

鈴木   荒木さん、また来週もよろしくお願いします。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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