第35回東京国際映画祭開幕 橋本愛、二宮和也「映画愛」を語る

(2022年10月25日8:30)

第35回東京国際映画祭開幕 橋本愛、二宮和也「映画愛」を語る
挨拶するアンバサダーの橋本愛 (24日、東京・千代田区の東京宝塚劇場)

第35回東京国際映画祭(10月24日~11月2日)が24日に開幕し、3年ぶりに屋外でのレッドカーペットが行われ、東京宝塚劇場(東京・千代田区)でオープニングセレモニーが開催された。フェステイバル・アンバサダーの橋本愛や、オープニング作品として上映された「ラーゲリより愛を込めて」に主演した二宮和也が登壇して「映画愛」を語った。

東京国際映画祭は昨年から会場を日比谷・銀座・有楽町エリアに移して開催。今年は「飛躍」をテーマに、上映会場を拡大し、上映本数も126本から169本に増やすなど規模を拡大した。またコロロナ禍ではあまりできなかった海外からのゲスト招へいを本格的に再開し、国内外の様々な映画が10日間にわたって上映される。レッドカーペットはガラコレクションに出品された「月の満ち欠け」の大泉洋と柴咲コウ、廣木隆一監督をはじめ、国内外の数多くの監督、俳優、プロデューサーらが登場し盛大に行われた。

オープニングセレモニーはフリーアナウンサーの宇賀なつみが進行を担当し、冒頭で宝塚歌劇OGの柚希礼音、紅ゆずる、美弥るりか、七海ひろきの4人がオープニングアクトを披露。その後、フェスティバル・アンバサダーの橋本愛が登壇してあいさつした。

橋本はレッドカーペットの復活に「去年は屋内だったので、野外での華やかなレッドカーペットはコロナ以来なのかなと思うと、今年はとても感慨深いですし嬉しかったです」と喜んだ。

そして、日本の映画について「日本の映画といってもいろんな映画がありますが、日本という小さい島国の中でどうしても閉鎖的な印象が強い国だなと、自分自身も含めてそう思うんですけど。その中でこれだけ豊かで繊細な感性というものが育っているんだなあと感じます。日本映画のとても好きなところは、湿度の高いところで、映像って平面的なのに、その場所の空気の匂いだったりとか、自然の豊かさのようなものがダイレクトに肌の感触に伝わってくるような、そういう生活感を感じる映画がとてもいいと思います」と独自の見解を述べた。

今年のテーマが「飛躍」ということで宇賀アナから「日本映画が世界に飛躍するにはどんなことが必要か」と聞かれて「きっとそれぞれの場所で、そのためにはどうしたらいいかということを、日々考えていらっしゃるのかなと思います。私自身は飛躍していくために、まずは世界を見渡すこと、世界を知ることが一番初めに大事なことかなと思います。世界を見渡して自分に翻ったときに、今の日本映画の自分の現在地というものをちゃんと見つめて、これからどうしたら世界を超えていけるのかということを見つめていくことが大事なのかなと思います」と語った。

「東京国際映画は本当にたくさんの方々が携わってこれだけ大きな規模の映画祭を開催することになって、無事に開催できてホッとしております。今年は169作品という去年の3割増しという上映作品で、数多くの作品を観ることができるので、この機会に、今は自分で時間を作って自分で好きな作品を選んで家の中で観るとか、主体性が個人にあると思っているんですけど、映画祭で映画を観るという体験は、決まった作品が決まった場所で上映されている作品を観るという、ある種の制約に自分が向かっていく、自分が迎えに行くということで出会えるということになるので、皆さん気軽に遊びに来ていただけたらいいです」と呼びかけた。

■二宮和也「やっぱり日本の映画っていいなと」

第35回東京国際映画祭開幕 橋本愛、二宮和也「映画愛」を語る
二宮和也と瀬々敬久監督 (24日、東京・千代田区の東京宝塚劇場)

今年のオープニング作品としてこの日に上映された「ラーゲリより愛を込めて」(12月9日全国公開)に主演した二宮和也と瀬々敬久監督が登壇して、同作や映画祭などについて語った。

「『ラーゲリ』を東京国際映画祭のオープニング作品に選出していただきまして、本当にありがとうございます。オープニングに見合うような作品ができたと自負しておりますので、どうぞ見て頂ければと思います」と二宮。
作品ごとに出演俳優や監督などが別々歩くレッドカーペットのトリを務めた感想を聞かれて「緊張しますし、僕たちは最後に歩かさせていただいたんですけど、最後っていうと華やかと言いますか、大所帯で歩くのかなと勝手に思ってたんですけど、(監督と)2人でした。ちょっと想像と違ってたんですけど、レッドカーペットができて、声をかけて頂いて、反対側では取材を受けるという光景が3年ぶりにやってるんだなあという実感でこみ上げてくるものがありましたね。嬉しかったです」と喜んだ。

映画について「もちろん作品もそうですし、役者の人達、撮影技術の人もそうだし、音もそうでエンターテイメントの一つだと思うんですけど。僕はいろんな国の映画がありますけど、やっぱり日本の映画っていいなと、回顧できる面白いエンターテインメントだな映画は、と思っているので、いくら最新の技術を学んでも最新お芝居を見ても、それは日本の人たちが作っているとみると、いいな日本の映画はと。日本の顔の一つじゃないけど、そういうエンターテイメントになっているのかなという気がしますね」と独自の”映画論”を語った。

第2次世界大戦終結後、ソ連軍の捕虜として不当にシベリアの収容所(ラーゲリ)に抑留された日本人・山本幡男氏が、絶望的な状況下で、妻を想い、仲間を想い、懸命に生きた壮絶な半生の実話を描いた「ラーゲリより愛を込めて」で山本を演じたことについて「日本の映画いいなと思ってもらえるでしょうし、出てる人たちもそうだし、作品もそうですけど。今回の映画って戦争の後にもたらした後遺症を描いた話ではあるんですけど、もちろんそこもそうなんだけど、人間らしさと言いますか、人間のすべての感情が詰まっているのではないかと思っていまして、そこを伝えたい」という。

瀬々監督は「二宮君は非常につらい状況でも希望を捨てない山本さんをやったわけであります 「苦しくて重たくて、しんどいが続くんですけど、だからこそその先にある希望だったり愛だったりとか、まあ日本人の絆っていうものがより深くわかるんじゃないかなと思うので、見て頂きたいなと思います」と語った。

そして東京国際映画祭について「たくさんの国の素晴らしい作品が集まったお祭りです。なので楽しんでいただきたい。僕らの作品は楽しむということに特化していないので、コメントがちぐはぐしちゃうんですけど、楽しんでいただきたいですし、いろんな映画を一気に観られる期間となっていますので、楽しんでいただければなと思います。そしてよろしければ我々の作品も楽しんでいただければと思います」と語った。

瀬々監督は「実際にウクライナで戦争が起こったりとかしている状況もあったりします。そういう意味では、平和って当たり前だなって思ったりもあったりする中で、今のこういう状況をどうやって生きていけばいいのかということを、日本の70何年前の話ですけども、日本の少し前の過去の時代をもう1回とらえ直すことで今の時代をとらえ直すことが出来たらと思って作りました。そういう意味では皆さん、遠い世界のことではないと思って観て頂けたらと思います」とこの作品に込めた思いを語った。
そして「コロナや戦争や辛い状況ですけども、そんな中でも生きる希望というか、それを訴え続けていた二宮君演じる人物を描いた映画です。最後にはものすごい愛の奇跡みたいなものも待ち受けている展開になってます。エンターテイメントの力というかそういうもので、明日もまた生きようと思って頂けたらと思っています。時間がありましたら是非見てください」と呼びかけた。

■ジュリー・テイモア審査委員長「今みんなで集まってそして共通の物語を語ることが重要」

第35回東京国際映画祭開幕 橋本愛、二宮和也「映画愛」を語る
ジュリー・テイモア審査委員長

今年のコンペティション部門の審査委員長を務める演劇・オペラ演出家で映画監督のジュリー・テイモアをはじめ、撮影監督の柳島克己、元アンステチュ・フランセ館長マリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル、映画監督ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、俳優のシム・ウンギョンの審査員が登壇。テイモア審査委員長があいさつして以下のようにスピーチした。

「今日初めて会ったばかりなんですけれど素晴らしい審査委員の方々です。現在世界でたくさんの人たちが一同に会するということはなかなかできないんですけれども、今回は審査員が世界中から召集されました。韓国、ポルトガル、フランス、日本、アメリカ、世界中の人たちが集まって審査ができるということは非常に素晴らしいと思います。なぜならば、今みんなで集まってそして共通の物語を語ることが本当に重要だと思っているからです。私自身アーティストとしていつも重要だと思っているのは、自分が行きたいとは知らなかった場所に、こういったものを通じて出会うことができるということです。世界はコロナや戦争、いろいろな形で人々を分断しています。いろいろな人々の行動といったものも私たちを分断させています。こうやって映画を観る、また映画のフェスティバルにおいて、またもう一度私たちがクリエィティビティであるとか、想像力であるとか、みんなで一つになれるんだというこの思いを、もう一度思い起こすことができるんだということは非常に重要なことだと思います。今私たちに一番欠けていることは、人に対する場所に対する共感だと思いますので、その共感をぜひこの映画祭において得られたらと思います」
コンペティション部門には日本映画3本を含む世界からの15本の作品が選ばれ、開催期間中に上映され、最終日の11月2日に各賞が発表される。

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