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映 画
「掟」「ポライト・ソサエティ」「ラストマイル」のとっておき情報
(2024年8月30日17:00)
映画評論家・荒木久文氏が「掟」「ポライト・ソサエティ」「ラストマイル」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、8月26日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 8月もあっという間に最終週だね。ダイちゃんにも私にも、暑くてつらい8月でしたね(笑)。
鈴木 ほんと!手足ボロボロになっていますから、私。
荒木 夏休みも最終版で、休み中に見ておいたほうがいいと思われるレコメンド映画を紹介しておきましょう。ダイちゃん、石丸伸二さんて知っていますよね。
鈴木 都知事選に出た石丸さん?
荒木 そう。次点の人ね。SNSを駆使して石丸構文と言われる独特な論理展開というか、そんなものでも話題になりましたよね。
この石丸伸二氏をモチーフにした政治エンタメ映画、タイトルが「掟」という作品が緊急公開されます。
鈴木 モチーフって、石丸さんそのものじゃないってこと?
荒木 そうなんです。基本は、劇映画なんです。
この映画のストーリーは、その石丸伸二氏をモデルとした主人公、高村誠也となっているんですけど。彼が市長選挙に立候補するところから始まります。そこからは現実の石丸伸二氏と並走した「フィクション」だということです。つまり、都知事選に立候補していったってことなんでしょうね。8月30日公開予定ですが、正直、中身はどんなものになっているのか全く分かりません。
鈴木 まだ見てないんですか?
荒木 そうなんですよ。何の情報もないんです。普通、この番組で紹介する作品は試写などで見せてもらうのが原則なのですが、今回は完成してないらしいんです。
鈴木 30日ってことは、明々後日公開ですよ!
荒木 そうなんですよ(笑)。それもそのはずで、映画というものは企画立案から公開まで2,3年かかるのが普通なんです。小さな作品でどんなに急いでも1年はかかるものなんですよ。それを、2月に企画してですね、製作から公開まで超高速で作業して、半年を切るという異常な作品なんです。だから、フィクションなんですけど、原作が現実…、なんですって。
鈴木 うわぁっ!なるほど。
荒木 石丸伸二とは何者か?というテーマでブラックユーモア溢れる政治エンターティメントって言っているんですけどね。異例中の異例の作品ですね。どんなものになるのか楽しみですけど、果たして、公開されるのかどうか、ちょっと心配だよね(笑)。
鈴木 公開されて、我々観客が面白いのか面白くないのか、シリアスなのかコメディなのか…。
荒木 そうなんですよ。ま、選挙の結果はわかってるんでどうなのかなってね。石丸さん、最近では立憲民主党の党首の選挙区から立候補して「立民を乗っ取る」などと発言していまので今年を代表する話題の一人ですね。どんな作品になるか楽しみですね。
「掟」という作品。8月30日公開予定です。
2本目は、「ポライト・ソサエティ」。現在公開中です。
日本語に訳すと、ちゃんとした世界というか、上流社会とか、そんな感じの意味になると思うんですけど。ちょっと珍しいです。パキスタン系イギリス人の女の子を主人公にした作品です。
ストーリーはロンドンのパキスタン人のイスラム教の家庭に生まれた女子高校生、リア・カーンちゃんがヒロインです。彼女は映画のスタントウーマンを目指してカンフーというか、空手の修行に励んでいるんです。学校では変わり者扱いされて。先生や意地悪な同級生に目を付けられ、友達も限られ、両親からも将来の夢を諦めて、お嫁に行くか堅実な仕事に就くようにと説教されてへこむことの多い毎日です。伝統的なイスラム社会からもイギリスの社会からも疎外されてる状態なんですね。
鈴木 落ちこぼれちゃってるんですね、いろいろとね。
荒木 そういうことです。そんなリアちゃんにとっては画家志望の姉リーナさんが唯一の理解者でした。そのリーナが大金持ちの息子であるプレイボーイと恋に落ち、彼と結婚してシンガポールに渡ることになったんです。しかし、彼のファミリーに何か違和感を感じたリアちゃんが独自に調査を進めると、彼と姉の結婚の裏には驚くべき陰謀が隠されていることがわかります。
鈴木 これはサスペンスなんですか?
荒木 サスペンス要素がちょっとですね。いろんなものを混ぜてるんですね。純サスペンスとも言いきれないし、空手映画とも言いきれないし…。
リアは、大好きな姉を救う為に、結婚式を阻止するべく立ち上がるということなのですが・・・、監督は、ニダ・マンズールさんという30代の女性です。この作品で長編監督デビューです。彼女もパキスタンのムスリム家庭に生まれ10歳の時にロンドンに移住したというから、脚本には十代の頃の実体験も反映されているんでしょうね。いろんな要素を含んでいるんです。空手、シスターフッド系の要素、友情、ケーブルアクションもあるし。母娘の愛と断絶みたいなこともあるんですね。
そして この監督は、幼い頃ミュージシャンになりたかったそうで、選曲がすごくいいんですよ。
鈴木 劇中の選曲?
荒木 そう、タランティーノも好きだって。
鈴木 だからいろんな要素が入ってるんだ。タランティーノもそうですもんね。
荒木 タランティーノも音楽すごいでしょう。
鈴木 めっちゃすごい!マニアですよ。
荒木 タランティーノが、『キルビル』の中で梶芽衣子さんの「さそり」を使ったのは有名ですよね。この映画のあるシーンでは、こんな曲が流れていました。
~♪~ ちっちゃな時から/浅川マキ
鈴木 昔の我々のやってたラジオ番組を彷彿とさせるような…。
荒木 浅川マキの『ちっちゃな時から』。ですよ。こんなのが流れてびっくりしましたね。よくこんなマニアックな歌を知ってましたよね。
鈴木 なんで知ってんですかね?こういうの。
荒木 音楽ファンなんで、いろいろあさってたらしいよ。レコード店に行って。
鈴木 なんで、郷ひろみさんとかじゃないんでしょうね。
荒木 お姉ちゃんが結婚を言い出すシーンで流れるんですよ、これ(笑)。
このニダ・マンズール監督は脚本も書いていて、正直 ツッコミどころ沢山あるんですけど細かいところはさておいて、愛情持って見てみましょうということで。
気楽に見るにはおあつらえ向きの作品ということもあるんですが、裏には、女性と社会の関わり方みたいなのが鋭く突いてます。
鈴木 映画愛、音楽愛は溢れてくるんですよね。いいですね。
荒木 「ポライト ソサエティ」という、現在公開中の作品です。
3本目。現在公開中の作品からです。久しぶりに堪能した豪華オールスター映画と言っていいと思います。「ラストマイル」という作品です。ダイちゃんは、テレビ見ないか?
鈴木 テレビ、家にないんですよ。
荒木 だってね? ただ、ラジオ聞いている熱いテレビファンだったらご存じでしょうか?監督・塚原あゆ子と脚本家・野木亜紀子と言えばテレビ界のヒットメーカーコンビなんです。2018年放送のTBSテレビ、金曜ドラマ「アンナチュラル」。
同じく2020年放送のヒット刑事ドラマ「MIU404」のコンビなんです。
鈴木 名前聞いたことありますもん、もちろん。
荒木 あるでしょう!『アンナチュラル』は、死体を調べる検視官のドラマで、石原さとみさんなど出演。刑事ドラマ『MIU404』は、綾野剛さんなどが出演していたんです。
今回の映画作品「ラストマイル」は、流通業界を舞台に連続爆破事件を描いたサスペンス映画なのですが、前提として、今 言ったふたつのドラマの世界と同じ世界で、同じ役で、同じ時間枠の中で起きているという設定なんですよ。
鈴木 パラレルワールドじゃない!ってことですか。
荒木 そう。全部同じ世界なんです。だから映画の中で、これらのドラマのキャラクターが刑事として事件を捜査したり、遺体を解剖したりという場面が登場するんです。これをシェアード・ユニバース作品と言うらしいのですが、そういった前提で作られている作品です。
ストーリーです。11月、流通業界最大のイベントのひとつのサイトセールがあります。“ブラックフライデー”というんですけど(笑)。その開催の前日、世界的なショッピングサイト最大手から配送された段ボール箱が爆発する事件が発生します。それは日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展していくわけなんですが。そんな中、そのショッピングサイトの巨大物流倉庫のセンター長に着任したエレナさん。満島ひかりさんがやってます。マネージャーの梨本くん、こちらは岡田将生さん。2人が、この未曾有の事態の対応・収拾に飛び回ることになるということなんです。だけど、誰が爆弾を仕掛けたのかも当然ですけど、残りの爆弾は幾つあって、今どこにあるのかわかんないんです。言うまでもなく、流通というのは現代社会の生命線ですよね。
鈴木 本当、そうですよ。
荒木 止めることは許されないんでこれを止めずに、連続爆破を止めることができるのか? 犯人は誰なのか?というのサスペンスなんですよ。
鈴木 着眼点、なるほどなと思いますね。
荒木 出演は満島岡田コンビのほか、石原さとみ、綾野剛、阿部サダオ、ディーン藤岡、窪田正孝、薬師丸ひろ子、星野源。きりがないのでこの辺にしますが、主演級の俳優が、それこそ次から次へと湧いて出てきます。
鈴木 いわゆる、テレビの2つの主演級の人たち全部出るもんね。
荒木 凄い顔ぶれですよね。まさに豪華オールスター特盛ですよ!オールスター映画って概して大味なものが多いのですが、今回は事件の解決が二転三転。犯人は誰なのか最後の最後まで分からないんですよ。脚本が素晴らしいです。
鈴木 荒木さんがそう仰るなら、間違いないでしょうね。
荒木 とても見応えのある、凄いサスペンスエンターテインメント作品と言っても構わないです。
鈴木 その映画の中盤の時に、エンディングって、荒木さん予想出来ました?それともハズレました?
荒木 予想できたんですけど、見事にハズレました。犯人像も。本当に当たらないんじゃないかな、これは。普通は当たるんですけどね。
鈴木 えっー!?
荒木 この巨大ショッピングサイトのモデルは明らかに、例の「エーマゾン」とかがモデルですね。 まさに私たちの日常なんですよね。
鈴木 A、m、a、z、o、n系ですよね(笑)。 各国、世界から買うことだってあるからね。
荒木 そういうことです。この映画、エンタテインメント要素だけでなくその裏に流れている社会的なテーマをきちんと入れているんですよ。流通問題に関してはダイちゃんもご存じだと思うんですが、流通業者、配送業者の実態と大変さ、それから、こう言っちゃなんですが、巨大サイトの利益・効率第一主義、それと消費者の過剰なサービス要求と身勝手さ、そういう現在に存在するシステムとか、労働環境問題などにも焦点をあてて描いているんですよ。脚本家の野木さんはこれまでも基地の問題とか外国人留学生についての社会的問題を取り上げていますが、こうした視点が作品に重みをもたらしていますね。これは間違いないです。
鈴木 「ラストマイル」というタイトルからして、どういうエンディング?
どういうこと?って思うけど。
荒木 これ、東宝の作品なんですけど、娯楽作品しても今年一番じゃないかなと思うくらい、いい出来です。
鈴木 マジですか!?あらららら。
荒木 いろんな意味で、総合的にみても面白い作品でした。主題歌も「アンナチュラル」とか、「MIU404」にも提供しているらしいんですが、米津玄師さんが担当してます。「ラストマイル」という、現在公開中です。ぜひご覧ください。
鈴木 荒木さん絶賛ですね。ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。