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映画
第95回アカデミー賞、「エブエブ」7冠 ミシェル・ヨーがアジア系初の主演女優賞
(2023年3月13日15:15)

第95回アカデミー賞の授賞式が12日(日本時間13日)、ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、下馬評通りに通称「エブエブ」の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が作品賞をはじめ7部門を制覇する圧勝に終わった。同作のミシェル・ヨーはアジア系の俳優として男女を問わず史上初の主演賞となる主演女優賞を獲得した。
「エブエブ」は作品賞、監督賞(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)、主演女優賞(ヨー)、さらには助演男優賞(キー・ホイ・クワン)、助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス)と主要6部門のうち5部門を独占。さらに脚本賞、編集賞も受賞し7部門を制覇する圧勝だった。授賞式の模様はWOWOWで13日午前7時30分から生中継された。
■ミシェル・ヨー「これは皆さんの希望の証、夢は実現するということの証」
激戦区といわれていた主演女優賞部門で、「TAR/ター」のケイト・ブランシェットとの一騎打ちを制して男女を問わずアジア系初の主演賞となる主演女優賞を獲得したヨーは「小さい子供たち、今日見ている皆さん、これは皆さんの希望の証、夢は実現するということの証です。女性の皆さん、もう歳を超えてるなんていうことは聞いてはだめですよ」と60歳での主演女優賞に胸を張った。
そして「ダニエルズ、そしてA24,そして素晴らしいキャスト、クルーなくしてここにいません関係者の皆さんがいてここにいるわけです」と監督や製作会社、スタッフらに感謝したうえで「同時に私の母、そして世界中のお母さんたちにこの賞を捧げたいです。彼女たちがスーパーヒーローです。彼女たちがいるからこそ私たちがいるのです」などと語った。
ヨーは香港、ハリウッドで活躍する女優で中国系マレーシア人。1984年に香港映画でデビュー。アクション映画で活躍する一方で、香港・日本合作映画「宗家の三姉妹」(1997年)
などの文芸作品にも出演している。「007 トモロー・ネバ―・ダイ」(1997年)で中国の情報部員役でボンドガールを務めハリウッドデビュー。「クレイジー・リッチ!」(2018年)、「スタートレック:ショートトレック」(2018年)など数多くの映画に出演。2024年公開の「アバター3」にも出演する。
■「エブエブ」異次元のSFアクション&ファミリードラマ
「エブエブ」は、ヨー演じるコインランドリーを経営する中華系移民の家族の普通の主婦が、父親の介護や反抗期の娘、頼りない夫、税金対策など様々なトラブルを抱えるなか、ある日突然夫に乗り移った「別の宇宙の夫」から「全世界にカオスをもたらす強大な敵を倒せるのは君だけだ」といわれて、活躍するSFアクション映画。奇想天外な発想と、さまざまな次元を飛び回りカンフーで敵をなぎ倒すなど八面六臂の活躍をするという異次元のエンターテインメントで、レスビアンなどの多様性の問題や、家族の絆などを描いている。1月の第80回ゴールデングローブ賞で主演女優賞ト助演男優賞を受賞したのを始め、数々の映画賞で受賞し、その勢いは締めくくりとしてのアカデミー賞をも席巻する快挙となった。
■第95回アカデミー賞主要部門の受賞(●)とノミネート
【作品賞】
●「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(以下「エブエブ」)
「トップガン マーヴェリック」、「イニシェリン島の精霊」、「フェイブルマンズ」、「TAR/ター」、「エルヴィス」、「アバター:ウェイ・オブ・ウォ―ター」、「西部戦線異状なし」、「ウーマン・トーキング 私たちの選択」、「逆転のトライアングル」
【監督賞】
●ダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)(「エブエブ」)
スティーヴン・スピルバーグ(「フェイブルマンズ」)
トッド・フィールド(「TAR/ター」)
マーティン・マクドナー(「イニシェリン島の精霊」)
リューベン・オストルンド(「逆転のトライアングル」)
【主演男優賞】
●ブレンダン・フレイザー(「ザ・ホエール」)
コリン・ファレル(「イニシェリン島の精霊」)
オースティン・バトラー(「エルヴィス」)
ビル・ナイ(「生きる LIVING」)
ポール・メスカル(「アフターサン」)
【主演女優賞】
●ミシェル・ヨー(「エブエブ」)
ケイト・ブランシェット(「Tar/ター」)
ミシェル・ウィリアムズ(「フェイブルマンズ」)
アナ・デ・アルマス(「ブロンド」)
アンドレア・ライズボロー(「To Leslie」)
【助演男優賞】
●キー・ホイ・クワン (「エブエブ」)
ブレンダン・グリーン(「イニシェリン島の精霊」)
バリー・コーガン(「イニシェリン島の精霊」)
ジャド・ハーシュ(「フェイブルマンズ」)
ブライアン・タイリー・ヘンリー(「その道の向こうに」)
【助演女優賞】
●ジェイミー・リー・カーティス(「エブエブ」)
アンジェラ・バセッド(「ブラック・パンサー/ワカンダ・フォーエヴァー」)
ケリー・コンドン(「イニシェリン島の精霊」)
ステファニー・スー(「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」)
ホン・チヤウ(「ザ・ホエール」)
【脚本賞】
●ダニエルズ(「エブエブ」)
マーチン・マグドナー(「イニシェリン島の精霊」)
トッド・フィールド(「TAR/ター」)
スティーヴン・スピルバーグ&トニー・クシュナー(「フェイブルマンズ」)
リューベン・オストルンド(「逆転のトライアングル」)
【脚色賞】
●サラ・ポーリー(「ウーマン・トーキング 私たちの選択」)
カズオ・イシグロ(「生きる LIVING」)
ライアン・ジョンソン(「ナイブズ・アウト:グラスオニオン」)
イアン・ストーケル、レスリー・パターソン(「西部戦線異状なし」)
アーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン、シンガー、クリストファー・マッカリ―(「トップガン マーヴェリック」)
【長編アニメ賞】
●「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」
「私ときどきレッサーパンダ」
「Marcel the Shell with Shose On」
「長ぐつをはいたネコと9つの命」
「ジェイコブと海の怪物」
【国際長編映画賞】
●「西部戦線異状なし」(ドイツ)
「アルゼンチン1985 歴史を変えた裁判」(アルゼンチン)
「クロース(Close)」(ベルギー)
「EO」(ポーランド)
「クワイエット・ガール(The Quiet Girl)」(アイルランド)
【長編ドキュメンタリー映画賞】
●「ナワリヌイ」
「オール・ザット・ブリーズ」
「All the Beauty and the Bloodshed(原題)」
「ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦」
「A House Made of Splinters(原題)」
【撮影賞】
●「西部戦線異状なし」
「バルド、偽りの記録と一握りの真実」
「エルヴィス」
「エンパイア・オブ・ライト」
「TAR/ター」
【衣装デザイン賞】
●「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」
「エルヴィス」
「バビロン」
「エブエブ」
「ミセス・ハリス、パリへ行く」
【メイクアップ&ヘアスタイリング賞】
●「ザ・ホエール」
「西部戦線異状なし」
「THE BATMAN-ザ・バットマン-」
「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」
「エルヴィス」
【美術賞】
●「西部戦線異状なし」
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」
「バビロン」
「エルヴィス」
「フェイブルマンズ」
【音響賞】
●「トップガン マーヴェリック」
「西部戦線異状なし」
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」
「THE BATMAN-ザ・バットマン-」
「エルヴィス」
【編集賞】
●「エブエブ」ポール・ロジャーズ
「イニシェリン島の精霊」ミッケル・E・G・ニルソン
「エルヴィス」マット・ヴィラ、ジョナサン・レドモンド
「TAR/ター」モニカ・ヴィッリ
「トップガン マーヴェリック」エディ・ハミルトン
【作曲賞】
●「西部戦線異状なし」フォルカー・バーテルマン
「バビロン」ジャスティン・ハーウィッツ
「イニシェリン島の精霊」カーター・バーウェル
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」サン・ラックス
「フェイブルマンズ」ジョン・ウィリアムズ
【歌曲賞】
●「RRR」「Naatu Naatu」
「テル・イット・ライク・ア・ウーマン(原題)」「Applause」
「トップガン マーヴェリック」「Hold My Hand」
「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」「Lift Me Up」
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」「This Is A Life」
【視覚効果賞】
●「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」
「西部戦線異状なし」
「THE BATMAN-ザ・バットマン-」
「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」
「トップガン マーヴェリック」