-
映 画

「SISU/シス 不死身の男」「唄う六人の女」のとっておき情報
(2023年10月28日11:00)
映画評論家・荒木久文氏が「SISU/シス 不死身の男」「唄う六人の女」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、10月23日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 よろしくお願いします。
荒木 今日は、早速2本ご紹介します。1本目は、SISUと書いて「シス」、
「SISU不死身の男」と言います。10月27日公開です。
まあ、とにかく文字通り不死身の男というか不死身のじいちゃんですよ。
ストーリーはですね、1944年の北欧フィンランドです。戦争中。ソ連に侵攻され、さらにナチスドイツに侵略されたフィンランド。この国の北、ラップランドと呼ばれるトナカイなどがいるところ。
フィンランドの老人で、元兵士のアアタミ。この人は掘り当てた金塊を隠し持ち、愛犬とともに凍てつく荒野を旅していたんです。やがて彼は残忍なナチスの戦車隊に出くわして、金塊と命を狙われるという話です。ところが、実はアアタミさんは、かつて精鋭特殊部隊の一員として名を馳せた伝説の兵士だったんですね。で、彼は使い古したツルハシ1本と不屈の精神を武器に、次々と一人でナチスを血祭りにあげていくという・・。ダイちゃん、実は試写ご覧になったんですよね。
鈴木 観ました!痛快過ぎて、笑っちゃったよ。これは。
荒木 笑っちゃうよね。
鈴木 笑っちゃうぐらい凄かった。
荒木 死なないんだよね、爺ちゃん。ランボーみたいな感じだね。
鈴木 死ぬヒマが無いですからね。
荒木 ランボーをベースにダイハードとマッドマックスとかを織り交ぜたような、タランティーノ監督を足したような。とにかくツルハシ1本で兵隊殺しまくり、地雷は掘って投げつけて爆発させるは、撃たれても、縛り首にされてもなぜか死なないですよね。
鈴木 なんなんでしょうね。こういう人、普通はいないですよね。
荒木 いないですよね。ダイちゃんもそうだろうと思うけど、映画観ている間、 もう死んだだろうと。これで死んだべと、ずっと「嘘だろっ」とツッコみ続けていますよね。
鈴木 ツッコミ続けて、まだ生きてるって話で、そこで1回止めてトイレ行ったり、ポップコーン取りに行ったり、そんなことばっかりやってましたもん。
荒木 (笑)いやもう、死ななくても不思議じゃないとだんだん思えてきてしまいいますよね。そういう爺ちゃんのお話なんですけども、こういう映画は得てして、漫画コメディになっちゃうんですよね。だけど、主人公のアアタミさんのたたずまいがそうさせないんですよね。この人、一言もしゃべらないじゃないですか。化け物みたいな不死身な老人なんですけど、主演はフィンランドの国民的俳優さんなんですね。ヨルマ・トンミラさんというんですけど。
鈴木 国民的俳優なんですか?
荒木 そうなんです。有名な人です。65歳くらいで。ダイちゃん、誰に似てると思いますか?
鈴木 ジェフ・ブリッジスが髭はやしたような雰囲気に似てるなあと思ってた。
荒木 そうですか。僕、一所懸命考えたんですけど、ラジオ聴いてる方にわかるように説明しようと思うんですけど、昔、伊藤雄之助さんて俳優がいたんですけど…。
鈴木 ああ!はいはい。
荒木 知ってますかね?
鈴木 僕、知ってるわ。
荒木 怪優と言われる、顎の長い、体の大きな人。
鈴木 似てるか…。
荒木 ちょっと顎がしゃくれている感じ。知っている人少ないでしょうけど。
鈴木 髭はやしたら似ているかもしれない。
荒木 あと、嶋田久作系ね。
鈴木 はいはい。顎がね。
荒木 あと遠藤憲一とかね。
鈴木 ああ!ああいうタイプか。
荒木 そう、こういう人たちを、ごつくて白髪にしたような。そんな感じですね。一見よぼよぼだけど強いんですよね。
鈴木 強すぎですよ、ちょっと。
荒木 タイトルの「SISU/シス」とはフィンランドの言葉で、日本語への正確な翻訳は難しいらしいんですが、すべての希望が失われたときに現れる不屈の精神とかね、想像を絶するほどの意志の強さとか、何があっても折れない心というような意味を持つんですね。いわゆる民族の強い精神性を表す…、日本でいえば大和魂、ドイツだとゲルマン魂、イギリスだとジョンブル魂。それのもっと強い言葉みたいな感じですよね。
この爺ちゃんの戦いが、フィンランドのラップランド、荒涼とした大自然でしたよね。
鈴木 なんも生い茂らないだろうなって感じだもんね。
荒木 冷たく乾いた土地のなかで。フィンランドは 1917年にロシア帝国から独立したんですね。後、大きな戦争をずっと体験しているんですよ。独立直後に内戦でしょ。1939年に始まった、冬戦争と呼ばれるソ連との戦い。そして第二次世界大戦での再びソ連と戦って、ナチスドイツと戦って、今度の舞台になっているラップランド戦争ですね。いわば戦争漬けの国なんですよ。フィンランドの人々は、本当に多くの戦争を経験しているんですけど、最後まで独立を守り抜いている国ですよ。フィンランドというと、何を思い出しますか?
鈴木 ワールドカップにフィンランドが出場する、ちょっとわくわくしたりとか、ずっとヘビーメタルが凄いんですよ、北欧は。
荒木 ああー、なるほどね。
鈴木 荒涼としてるのか、希望とか太陽の光がないゆえに、ヘビーメタルやハードロックの人気が非常に高くて、ストレス解消になってるってよく聞くんですよね。
荒木 そうですよね。フィンランド人て、ちょっと大人しい印象で心優しい音楽好きって感じしますよね。とても勤勉な人が多いらしいですよ。有名なのは、ムーミンですよね。
鈴木 ムーミン!そうかフィンランドだ。
荒木 それからデザイナーね。丸い花のマリメッコね。それから、古くから女性と男性が対等の立場で働いていることでも知られます。
鈴木 福祉が非常にいいっていいますもんね。
荒木 現在も女性の社会進出は世界最高レベルなんで、何かあれば男女関係なく立ち上がって。そういえば、映画でも捕虜になっていた女性たちが、銃を持って対抗してましたよね。いわゆる、世界一幸せな国と言われるフィンランドにもこういった戦争の歴史があったんです。けど、そういう理屈はともかくとして、ダイちゃんの言う通りとにかく細かいことは気にせずに、ツッコミながらだよね、「おまえまだ死なねえのか」といいながら。
鈴木 映画の冒頭は、意外にシリアスなトーンで行くのかなと思ったんだけど、途中から、これはこういうことでいいんだな、ふらふらして観ていて大丈夫なんだなと思っちゃったもんね。
荒木 仰る通りで(笑)。「SISU/シス 不死身の男」10月27日から公開です。
鈴木 お薦めです。面白いですよ。

荒木 ということで、ダイちゃんもご推薦です。
2本目は、「唄う六人の女」というタイトル。こちらも10月27日から公開です。
主人公は売れっ子コマーシャルフォトグラファー、写真家ですね。として活躍する萱島さんです。竹野内豊さんです。
鈴木 イケメンですよ。
荒木 イケメンですよね。 彼のもとに40年以上も音信不通となっていた父親が亡くなったとの知らせが届きます。萱島が4歳の時に両親は離婚してそれ以来、父親は山奥にある家に独りで暮らしていたらしいんです。
萱島は、そのお父さんから相続した山林や実家を売るために、久しぶりに生家を訪れます。その土地を買いに来た開発業者の下請け、山田孝之さん演じる男と家と土地の契約の手続きを済ませて、その男、山田さんの車に乗せてもらって帰ろうとします。
ところが、険しい山道、道路に不思議な和服姿の女が立っていて、それを避けた刹瞬間、車は道路に落ちていた大きな岩に衝突してしまうんです。で、意識を失います。
しばらくして気がついた二人は、体を縄で縛られ身動きができない状態です。そんな彼らの前に現われたのは、この森に暮らす美しい六人の女たちだったんです。
何を聞いても一切口を利かない女たちは、彼らの前で奇妙な振る舞いを続けるんです。
異様な地に迷い込んでしまった男たちは、脱走を図るが…、というストーリーです。
“六人の女”を演じるのは、水川あさみさん、武田玲奈さんとかね、綺麗な人いっぱい出てきますよ。人里離れた森の奥深くに迷い込んだ二人の男と、六人の女たちを巡る、独創的で刺激的ですけど、期待するほどエロくないです。
鈴木 そうですか…。
荒木 サスペンススリラーですね。蜂や蝉、カエルやトカゲなどたくさん出てきますけど、異質な女性たちが不気味で、とても幻想的で美しいんです。
鈴木 幻想的な女性って美しいです。イメージでは。
荒木 そうですね。宇宙人じゃないかと思うほど、肌も白くて。山の中の“唄う女”たちは全員“物言わぬ”存在なんですけども、最後に、常識を超えたあっということがだんだんわかってきます。あまり言うとネタバレになって怒られますから…。
鈴木 また怒られるコーナーになっちゃ困りますからね。
荒木 「唄う六人の女」とい10月27日から公開の映画です。
ご覧になってください。
鈴木 ありがとうございます。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。