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映 画
「夏目アラタの結婚」「エイリアン:ロムルス」などのとっておき情報
(2024年9月9日18:00)
映画評論家・荒木久文氏が「夏目アラタの結婚」「エイリアン:ロムルス」などのとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、9月2日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 9月に入ってしまいましたが、9月の第1週は注目作品が目白推しなんです。ちょっと挙げてみます。
9月6日公開の「夏目アラタの結婚」というタイトル。これは、“異常な死刑囚の女と結婚する男”のお話です。“品川ピエロ”というあだ名の、連続バラバラ殺人事件の犯人の真珠という名の女。あの黒島結菜ちゃんがやってるんです。すごい歯並びに変えてやってますね。死刑囚として収監されている彼女のもとに、元ヤンキーで児童相談所の職員という夏目アラタくんが表れます。演じるのは柳楽優弥さん。初対面で「俺と結婚しよう」と申し出るというところから始まるという作品です。あのね、出てくる人出てくる人、おかしな人ばかりです。異常”なひと大集合。その異常が見ているこっちまでうつりそうな感じです。
“品川ピエロ”というのは、「ジョーカー」をイメージしてますね。
鈴木 なるほど。怖いもんね、ピエロ。
荒木 ちょっと話変わりますけど、人間の顔って歯並び替えると印象がすごく変わりますよね。
鈴木 口元、大事ですよ。
荒木 大事ですね。今回、黒島結菜さん、思いっきり歯並びがたがた、まっ黄色で、いわゆる乱杭歯で演じてるんですね。
鈴木 それって、いわゆる差し歯?被せ歯みたいな感じ?
荒木 被せ歯でしょうね。顔がかわいいと怖さマシマシだよね。
昔、キョンキョンが「踊る大捜査線」って映画で、銀歯と勘違いするような大きい歯列矯正をつけて、不気味にニヤッと笑う犯人役をやっていたのを思い出しました。
これも、怖くて可愛かったですけどね。
鈴木 それじゃあ、ラッパー、じゃないですか。金歯だ、ダイヤモンドだって~。
荒木 ほんとね、同じ趣味ですよね(笑)。内容は異常な世界へ行って見てくださいってことで、9月6日公開の「夏目アラタの結婚」という作品です。
この他にも、この日は注目作が沢山ありまして、タイトルだけ言います。
「ナミビアの砂漠」注目の女優河合優実さん主演。
前にも話した恐怖ドラマ「メリーおばさんのヒツジ」。それから、チャイコフスキーの妻を描いた「チャイコフスキーの妻」。目白押しですので、よろしかったら見てください。
そして、この日公開作品の中から紹介するのは、「エイリアン:ロムルス」。
鈴木 エイリアン、出た!新作ですから。
荒木 これはもう、海外でも話題ですけど、とにかく文字通り今年一番のホラーと言い切っちゃっていいと思うんです。とにかく怖いし、気持ち悪いし、面白いです。
鈴木 ホラーって言うか、気持ち悪いんですよ、多分アレ。
荒木 そうなんですよ。思い出すと、まだハラハラドキドキしますね。
~♪~このBGM。今入って来てますけど、~♪~、
こういう感じですよ。この「エイリアン:ロムルス」の話に入る前に、ダイちゃんはエイリアンのシリーズ見てますかね?
鈴木 最初の1、2本見て、おおぉっー!って盛り上がったんだけど、俺意外にハマりそうな雰囲気に見えがちですが、あまりハマらなかったんですよ。
荒木 まあ、自然な流れかもね。ちょっと後半のシリーズはダレましたけどね(笑)。1作目は今から45年前。ほぼ新人監督だったリドリー・スコット。主演はシガニ―・ウェーバー。これが大ヒットしますよね。宇宙船が着陸した惑星でクルーの一人が襲われてエイリアンの卵が産みつけられていくという。「SFホラーの金字塔」という評価で世界中を驚かせました。ダイちゃんも見たんだよね。
鈴木 もちろん!1作目はかなり夢中になって見ました。
荒木 シリーズ2作目は1986年。前の出来事から57年後、シガニ―・ウエーバーが再びエイリアン・クイーンと闘うということでした。その後、いずれもシガニ―・ウエーバー主演で「エイリアン3」、「エイリアン4」。それから「エイリアン4」から14年後に、「プロメテウス」を挟んで「エイリアン・コベナント」。それから「エイリアンVSプレデター」などあったんです。
鈴木 そんなにやってるかー。
荒木 あったんです。8本を超えるシリーズだったんです。もともとのエイリアンって、外国人とか異邦人という言葉だったんですけど。基本的には、みなさん、小学生も使っているように、友好的ではない宇宙からの侵略っぽい…宇宙人。
鈴木 地球外生命体ですよね。
荒木 これがエイリアンって言葉を生んだんですよ。それくらい社会的にも影響があったってことですよね・・ということで焦らしてしまいましたが「エイリアン:ロムルス」のストーリーです。これまでのシリーズの予備知識が無くても楽しめるし、このシリーズに詳しい人には思わずニヤリとする場面もたくさん用意されています。設定は今申し上げた、シガニ―・ウェーバーが戦う1作目と2作目の間です。2140年くらいかな。
鈴木 それでも、そんな先ですもんね(笑)。
荒木 そうですね(笑)。地球から遠く離れた宇宙。人生の行き場を失った6人の若者たちが生きる希望を求めて別の星に渡る途中に足を踏み入れたのが、廃棄された宇宙ステーション“ロムルス”。ですね。そこで彼らを待っていたのは、あの恐怖と絶望をもたらすエイリアンでした。基本的には、異常な速さで進化する第1作目に登場したタイプ。血液はあらゆる物質を溶かしていきますし、宇宙最強にして最も恐ろしい生命体“エイリアン”から、彼らは逃げ切れるのか?という、ストーリーとしては単純です。
鈴木 漢字違う、最強にして最恐ですね。
荒木 そういうことです(笑)。主人公のレイン役、女の子なんですけど、ケイリー・スピーニーちゃん。あのプレスリーの奥さんを演じた「プリシラ」に主演した小柄でとてもかわいい女優さんです。今回は恐怖に顔を引きつらせてばかりで、あまり可愛くない。
鈴木 あはははは。
荒木 監督はフェデ・アルバラスです。2016年に、盲目の老人宅に強盗に入った若者たちが味合う恐怖を描いたスリラー、「ドント・ブリーズ」、「ドント・ブリーズ2」の監督です。リドリー・スコットが、今回プロデューサーです。
鈴木 一応絡んでるんだね、ちゃんと。
荒木 そうです。またちょっと話がそれちゃうんですが、この「エイリアン」シリーズって、比較的若い監督をずっと起用してきたんです。お馴染みのリドリー・スコットは、今や86歳です。サーですけどね、サーの称号を持つ監督。『ブレードランナー』、『ブラック・レイン』、『グラディエーター』、凄い監督です。2作目監督はジェームズ・キャメロンだったんです。
鈴木 ジェームズ・キャメロン!そうなんだ。
荒木 そうなんですよ。脚本も書いたんです。で、『ターミネーター』シリーズ、それから「タイタニック」、「アバター」と、世界で最も成功した監督の一人ですよね。
3作目が、後に「セブン」や「ファイトクラブ」を作ったデビッド・フィンチャーです。
鈴木 フィンチャーか!凄い監督がやってるんだな。
荒木 そうなんです。4作目は なんとあの「アメリ」の監督、ジャン=ピエール・ジュネでしたよね。歴代の監督を生み出してる作品でもあるわけです。
鈴木 大物への登龍門みたいな感じですね。
荒木 おっしゃる通りです。
鈴木 そこで将来が決まってしまうみたいな。
荒木 今回の「エイリアン:ロムルス」は、最初に言ったように、本当に恐ろしくて怖くって、私が見た感想を一言でいうとそれに尽きます。
鈴木 基本に忠実でいいじゃないですか。
荒木 原点回帰ってことを目指してたらしいんですね。リドリー・スコットも「クソ怖い」と言っています。
鈴木 あはははは。
荒木 なんで怖いかっていうとインパクトが凄かったんです。第1作目のインパクトが凄かったのは、ダイちゃんも覚えてるかと思うんだけど、エイリアンの全体像を最後になるまで見せなかったことです。
鈴木 そうそう!
荒木 こういう、共通のテクニックを使ってます。光と影のコントラストが恐ろしく上手いんです。
鈴木 それが一番怖いんですよ。
荒木 私たちまで、宇宙ステーションに閉じ込められて追いつめられる、そんな感覚です。
鈴木 俺、絶対宇宙行きたくない。
荒木 そうですよね(笑)。更に、気持ち悪さの、あのどろどろのローションみたいなエイリアンのよだれが、思わず顔にかかりそうです。それとエイリアンのフォルム、気持ち悪いですよね。何十回も見てもう慣れているはずなのに、やっぱり気持ち悪い。
鈴木 じゃ、新たな衝撃なんだね、また。
荒木 そうですね。そしてある意味、女性映画でもあるんです。
鈴木 どういうこと?
荒木 このシリーズでずっと主人公だった女性リプリー、シガニ―・ウエーバーがやってましたけど、エイリアンクィーンと女同士の闘いですよね。
今回も必死で戦うヒロインは、25歳の女性レインです。つまり、女の時代を先取りし続けている作品と言ってもいいのかもしれないです。
鈴木 なるほど。
荒木 もうひとつ深読みするとしたら、このシリーズにあるのは、弱い人間と完全な生命体という対比。弱い人間が知恵を絞って、必死で戦っていくという、人間のポッシビリティというか成長の可能性も含めて描いてるのではないかと思います。
鈴木 人間は大体、未完ですからね、それぞれ。完成してないですから。
荒木 そうなんですよ。それはさておき、とにかく気持ち悪くて、ハラハラドキドキ。とにかく SFホラーとしての原点に戻ったと。
鈴木 じゃあ、俺、久しぶりに夢中になってみようかな。
荒木 いいと思いますよ。最高クラスの作品といって間違いないと思います。ま、最近私、最高クラスと・・・NHKの「のど自慢」合格みたいなキンコンカンコンキンコンカンコン。
鈴木 あはははは。結構連発してますよね。
荒木 そうだよね。のど自慢、最近合格連発だよね。だけど、私は違いますからね。厳しくキンコンカンコン出してますんで。
鈴木 そこはブレないでくださいよ。
荒木 はい。信用してくださいということで、「エイリアン:ロムルス」9月6日の公開です。さあ、映画館と言う名の宇宙船ロムルスに行ってみましょう…とか、そんな感じです。
最後に「映画雑誌 スクリーン」からちょっとお知らせです。映画雑誌「スクリーン」10月号が現在発売中です。今月の特集は、ブレないナイスガイ キアヌ・リーヴスということです。キアヌも60歳になっちゃったんですね。
鈴木 若いな―。
荒木 若いねー。他には、今日ご紹介した『エイリアン:ロムルス』の監督だとかプロデューサー、リドリー・スコットやキャストのインタビューも特集されてますし、恐怖のSF映画特集は、スティーヴン・キングの世界を紹介しています。日本の「SHOGUN 将軍」がエミー賞取るか?という話題もあります。他にも最新映画のご紹介など盛り沢山なんですが。
鈴木 やっぱり「スクリーン」だね。
荒木 私が所属している日本映画ペンクラブのリレーコラムもあるんですが、たまたま私が書いているんです。
鈴木 そうですか?
荒木 タイトルが「映画と、ラジオと」というテーマで、ラジオやDJの世界を描いた、あまり知られていない映画作品を紹介しているんです。そんなこと言ってたら、「ラジオやDJをテーマにした映画」で、あまり知られていないおもしろい映画、をこの番組で紹介するのもいいかなあと思って。やったことなかったもんね?
鈴木 やってない。
荒木 ダイちゃん関係のDJを主人公にした作品とか、ちょっと考えてます。
鈴木 邦、洋、込みですか?古今東西。
荒木 全部込みです。
鈴木 いいじゃん!いいじゃないですか。
荒木 ちょっと考えても「グッドモーニング,ベトナム」とか、いろいろありますからね。
鈴木 俺は、「フィッシャー・キング」です。
荒木 なるほどね。是非紹介したいと思います。映画雑誌「スクリーン」10月号が現在発売中。ということで。
鈴木 是非、読ませていただきます。
荒木 是非、よろしくお願いします。ということで、今日は「エイリアン:ロムルス」を中心にお話させていただきました。
鈴木 ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。