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映 画
「第29回 レインボー・リール東京 東京国際レズビアン & ゲイ映画祭」のとっておき情報
(2021年7月20日9:45)
映画評論家・荒木久文氏が、「第29回 レインボー・リール東京 東京国際レズビアン & ゲイ映画祭」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、7月12日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 荒木さーん! 今週もよろしくお願いします。
荒木 はい、よろしくお願いします。先週 映画イベントのお知らせをしましたが、今日ご紹介するのも、一年ぶりの映画イベントになります。
「第29回 レインボー・リール東京 東京国際レズビアン & ゲイ映画祭」です。
一昨年も紹介しました。恒例の映画イベントですね。
この映画祭は、セクシュアル・マイノリティをテーマとする作品をメインに上映する映画祭で、1992年から開催されていて、昨年は休み 今年で第29回を迎えます。
主催者のレインボー・リール東京運営委員会はこの映画祭についてこう言っています。
この映画祭は、レズビアンやゲイについての作品に留まらず、トランスジェンダー、インターセクシュアル、バイセクシュアルといった、さまざまなセクシュアル・マイノリティについての作品上映を通じて、より多様で自由な社会を創出する場となることを目指します。それとともに、セクシュアル・マイノリティをテーマとする作品は劇場公開される機会が少ないことから、そうした国内外の作品を紹介することで映像文化創造に貢献することも趣旨としています。ということなんですね。
今年2021年は大阪と東京の2会場で開催されますが、東京地区は今週金曜日 7月16日〜7月22日(木・祝)まで新宿区新宿のシネマート新宿での開催となります。
今回 上映される長編映画は全部で8作品 ドラマもドキュメンタリーもあります。
例のごとく ざっと主な作品を紹介します。
まず 南半球の国 アルゼンチンからの作品ですね、「エンド・オブ・ザ・センチュリー」(邦題「世紀の終わり」)というタイトルです。
バルセロナで偶然出会ったアルゼンチン人とスペイン人の男性二人。一晩だけに見えた関係が、20年にわたる壮大な愛の記憶を呼び起こすことになるという、各国の映画祭で人気を博した作品ということです。
2本目 オーストラリアからは「ストロベリー ミルク」。原題は「MY FIRST SUMMER」16歳のクローディア。外の世界を知らない彼女が、グレースという同い年の少女に出会い二人は閉ざされた森の中で二人だけのカラフルな世界を築き上げていきます。やがて・・・という少女たちの初恋とシスターフッドを描いた、 ストロベリーミルクみたいに甘酸っぱい孤独な少女たちのひと夏の恋の物語です。
あとはアイルランドの映画で「恋人はアンバー」というタイトルの作品
高校生の男の子エディと女子高校生アンバー。ふたりの共通点は同性愛者だということつまり 男の子がゲイで、女の子はレスビアン、なんですが、二人は周囲に自分たちのセクシュアリティを悟られないようカップルを演じることにするわけです。
はじめはうまくいっていたのですが、やがて二人の“理想的”な関係は崩れ始め…というゲイとレズビアンの偽装カップルの友情の行方は?というストーリー。
ハートウォーミングな青春映画です。
鈴木 現実にもありそうだな…。
荒木 それからドキュメンタリーもありますね。日本のドキュメンタリー。
これはわたくしも見せていただきましたね。「であること」というタイトル
海外コーディネーターの西山ももこさんが9人のLGBTQと呼ばれる人々に対して、彼らが何を思い、どういう表現を嫌い、受け入れているのか。率直な疑問を投げかけ、インタビューします。9人の人々が 自分自身『であること』と彼らが積み重ねてきた考えや思いが伝わってきてなかなか見応えがあります。
他にもオンラインのみで見られる「アジア 太平洋 短編集」もあります。
そしてこの映画祭の話題作はなんといってもこの作品です。「親愛なる君へ」という台湾映画です。
鈴木 冒頭からプレゼントのお知らせを入れている作品ですね?ご応募、たくさんいただいています。
荒木 ありがとうございます。
そうですね。チェン・ヨウチエ監督、「一年之初」「ヤンヤン」とかが有名ですが、
主人公はリン・ジエンイーという青年 30ちょっとぐらいかな?ピアノ教師です。
台湾のある大きな港の近くの家に住んでいます。彼には同性のパートナー、男の恋人 ワンがいたのですが、死んでしまったあと、ワンの母親の介護をして、その孫 つまりワンの子供ですね。その二人の面倒を一人で見てきました。
血のつながりのない、彼がその家で生活し、そこまで二人に尽くしているのは、その二人が今は亡きパートナーの家族だったからで、そうすることで彼の心の中で恋人が生き続ける唯一の方法であり、恋人への何よりの弔いになると信じていたからなんですね。
ところが、ある日一緒に住んで彼が、介護していた恋人だった人の母親 かなりおばあちゃんなんですが、彼女が急死してしまします。その死因をめぐって彼は “本当に病死なのか?” とパートナーの弟や、警察から疑いの目を向けられるようになります。さらにゲイへの偏見も加わり、ジエンイーから恋人の子供のヨウユー君が強制的に引き離されてしまいます。
さらに警察の捜査によって 彼に不利な証拠が次々に見つかり、とうとう裁判にかけられます。なんと、その場で彼は一切の弁解をせずに警察の主張を受け入れ、おばあさん殺しの罪を認めてしまうんですね。
鈴木 エーなんでー?
荒木 それはすべて彼が心に決めた、あることを貫くために選んだ道だったのですね。それはそういうことなのか?ということで…。
主演はモー・ズーイーさんという俳優さん。繊細な青年役をやらせた右に出る者はいないという台湾では、知らない人のいない、脚本もかける、俳優さんです。
だいちゃん 誰に似ているんでしょうね?お顔は?
鈴木 なかなかねー 僕が思うに、キムタクさんと金城武の若いころと それに嵐の二宮君を足して3で割ったみたいな感じと思うのですが…。
荒木 お顔はね…私も嵐の二宮さんに似ていると思うんですが…。
ちょっとふっくらした感じ? ちょっと哀愁を帯びているというか、イケメンですが…。
鈴木 そうですね。ちょっと哀愁もありますものね…。
荒木 ラジオお聞きの皆さん、モー・ズーイーで検索してみてください。
彼の演技ですが、恋人に対する思いや喪失感、自分自身に課した贖罪の思いなど、いろいろな微妙で交錯した複雑な感情が、これ、口で言うのは簡単ですが、実際表現するのは大変ですよ。
この作品 第57回台湾アカデミー賞では、最優秀主演男優賞(モー・ズーイー)、最優秀助演女優賞(チェン・シューファン)、最優秀オリジナル音楽賞を受賞。またズーイーは、第22回台北映画奨、第2回台湾映画評論家協会奨で最優秀主演男優賞(台湾映画評論家協会奨は、主演・助演の区別がない最優秀男優賞)を獲得しています。
いわゆる同性愛映画ではあるんですが、それが主題になってないというか、むしろサブテーマっぽいですね。同性愛への偏見だけがテーマでもなくて、介護&終末医療の問題や、血縁関係よりも深い繋がりを持った関係がうまく描かれています。
鈴木 本来そのほうがいいですよね。
荒木 愛とか恋とかよりももっと普遍的で大きな愛についての作品に映画になっていると思います。全体の構成が複雑で 脚本がち密で、繊細な二重三重のストーリーラインを重ねています。ミステリアスで重厚なサスペンス調の展開で、徐々に真実が解き明かされていく一方、ラストは温かな気持ちになってしまいます。
いや 素晴らしい台湾の作品でしたよ。「親愛なる君へ」。
この映画祭では7月21日に1回限り特別上映されますが、ご安心ください。
7月23日金曜日から新宿区新宿のシネマート新宿にて一般公開です。
詳しいことはHP をご覧ください。
「第29回 レインボーリール東京 東京国際レズビアン & ゲイ映画祭」と
その中で上映される、台湾映画「親愛なる君へ」のご紹介でした。
チケット2組4名ということでいただきました。
鈴木 ご応募 たくさんいただいています。
でもね、荒木さんがおっしゃったように、以前はゲイやレスビアンの映画と言うと、そっちのほうばかりが話題になっていた印象があるんですが、だんだんだんだんストーリーメインというか、それだけ多様性が出てきたということですかね?
荒木 そうですね。そういうものを強調しなくても、確かに、ベースにそういうものがあって前提の中で、別の面に焦点を当てるという方向ですね。
鈴木 シンプルに 映画が面白いかそうじゃないかということですよね?
荒木 そうですよね。 あまり大上段に振りかぶらなくなってきてはいますよね。
鈴木 楽しかったです。ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。