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映 画

「イン・ザ・ハイツ」と「サマー・オブ・ソウル」のとっておき情報
(2021年7月31日11:45)
映画評論家・荒木久文氏が、「イン・ザ・ハイツ」と「サマー・オブ・ソウル」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、7月26日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 オリンピックも始まりましたが…。
荒木 始まると見ますよねー。今回は街に雰囲気もないし、海外でやっているのと変わりないですね…。私、お話ししましたっけ? 今回のオリンピックチケット、
一生の運を使い果たしてサッカーの準々決勝とか、陸上の決勝とか6競技も当たっていたんですよ…。
鈴木 えー、聞いてないですよ。でも見られないんでしょう?
荒木 そうそう 全部だめ やっぱりついていないんだね。あはは。
鈴木 こればっかりはしょうがないですね。
荒木 そうですよね。ところで話は変わりますが、今年も音楽FES関係は?
少ない感じですよね?夏のフェスがないと どことなく寂しいですよねー。
ということで せめて映画で音楽を思いっきり楽しんでもらおうと…思いまして、音楽映画を2本ご紹介します。いずれも夏に見るにはピッタリの作品。映画館は音響もいいし 冷房も効いていますよ。
まず、トニー賞4冠・グラミー賞ミュージカルアルバム賞を受賞したミュージカルを映画化した、「イン・ザ・ハイツ」 7月30日公開。だいちゃんの大好きなラテンのミュージカル。ラテンミュージカルってあんまりないよねー。むかーし「オン・ユア・フィート」っていうのがありましたが…。

タイトルの「ハイツ」というのはニューヨークの実在の街です。「ワシントンハイツ」というのが正式名。ここは移民の街です。移民と言っても、ドミニカからの移民などいわゆるヒスパニック系のコミュニティタウンなんですね。ニューヨークの片隅に取り残されたようなこの街ワシントンハイツは、いつも歌とダンスであふれている街です。
ストーリーは、その街で育った4人の若者が中心。小さな食料品店を営むウスナビ。20歳ぐらいかな?夢は故郷のドミニカに戻り、父が持っていたビーチバーを取り戻すこと。彼と彼の恋人など男女3人がメインです。彼らは、それぞれ厳しい生活と 現実に直面しながらも夢を追っていましたが、ある時 街の再開発で住民たちが立ち退きを要求される事態が起こります。彼らはそれを阻止するために立ち上がるのですが突如起こった大停電の夜、街の住人達、そしてウスナビ達の運命も大きく動きだします。
監督は あの『クレイジー・リッチ!』でアジア系の桁違いの金持ちの話を監督しヒットさせたジョン・M・チュウです。
まず、映像ですが、もともとはブロードウェイのミュージカル作品なので、ステージで見るとまた違った感じなんでしょうが。見てませんのでわかりませんが…。
映画は 映像ならではの演出ですからスケールは大きいですね。人数が多い多い…。
ダンサーが500人以上いると思われるシーンがとても印象的でした。
特にプールで踊るのですが、この踊りは圧巻でしたよ。上空からドローン撮影なんでしょうか、すごーい迫力です。ほかにももちろん、街中とかバーとかいろいろな場所で踊っています。主演の4人はもちろんですが、後ろで踊っている何気ないダンサーたちもすごいです。ダンサーというとやせていてかっこいいというイメージですが、街中ですから…。
鈴木 いろいろな人がいるんですねー?
荒木 そうなんですよ そういうわけで、老若男女 みんなパワフルに踊ります。 当然体形も違っていますよね。渡辺直美さんみたいな体系の人も軽々踊っていて、リアリティも感じます。多分 ところどころCGが入っているのでしょうけど、とにかく 極彩色 赤やオレンジ基調で、パワフルパワフル。
鈴木 躍動感半端ない感じですね?
荒木 曲目もレゲエ、ヒップホップ、ラップも、そしてラテンビートと 全編カリビアンな曲が絶えません 全編迫力のダンスと歌の大洪水です。
鈴木 じゃあ サルサも メレンゲも レゲトンもあるんですね?
荒木 そうですね。2時間20分という長尺作品ですが、あっという間です。
座ってみるのが勿体ないくらい。普段 盆踊りもしない私も、試写室で思わず踊りだしそうでしたよ。ほんと 本気で踊りたくなる映画でした。
楽しいだけじゃなく、移民の故郷への哀愁、差別、社会との軋轢をもきちんと描かれているミュージカルですね。「イン・ザ・ハイツ」7月30日公開。です。
メインテーマを少し聞いていただきましょう。
「In The Heights」メインテーマから。
鈴木 たまらないですねー。

荒木 2本目はドキュメンタリーです。8月27日公開「サマー・オブ・ソウル(あるいは革命がテレビ放映されなかった時)」というタイトル。
これはね、私もまだ見せていただいてないんですけどね。1969年の有名な伝説の音楽フェスというと…。
鈴木 「ウッドストック」ですよね。
荒木 そうですよね、「ウッドストック」なんですが、8月でした。アメリカの音楽史に残るコンサートになると同時に1960年代アメリカのカウンターカルチャーを象徴する歴史的なイベントとして語り継がれていますが、この年の同じ夏にあまり知られていないのですが、「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」という音楽フェスが開かれているんです。
鈴木 知らないなー
荒木 黒人たちによる、まあ、いわば「ブラック・ウッドスティック」とでも言っていいのかな?
その一年前にニューヨーク・ハーレムで始まったこのフェスは、音楽、文化、人権運動の交差点的役割も担い、この年1969年には約30万人を動員したんです。
当時のフェスには、ニーナ・シモン、スティーヴィー・ワンダー、スライ&ザ・ファミリーストーン、B.B.キング、フィフスデメンション、グラディスナイト&ザ・ピップス
など、そうそうたるメンツが参加していました。
なんとこの時 スティービー・ワンダーは19歳。そりゃそうですよね。50年前ですから。この時の様子を記録した映像があったのですが、行方不明となってしまい、なんと約50年間も地下室に埋もれたままになっていたんです。
これが発見されて当時の、黒人のカルチャーや、ファッション、音楽の大々的な発表の場となったこの音楽フェスを、貴重な映像を中心に、当時のインタビュー、そして約50年後の時間を経て、この映像を初め見る当時の参加アーチストたちの証言も交えながら描いているものがこの作品なんですね。
鈴木 ちょっと これ見たいねー。
荒木 2021年サンダンス映画祭でドキュメンタリー部門の審査員大賞と観客賞を受賞。2021年最も見逃せないドキュメンタリー映画として、すでに来年度アカデミー賞ノミネートの呼び声も高い作品です。ぜひご注目ください!
グラミー賞受賞者で、エミネムやジェイ・Zのプロデューサーとしても知られるアミール・“クエストラブ”・トンプソンが初監督を務めウッドストックが開催された1969年の夏、160キロ離れた場所で行われたもうひとつの歴史的音楽フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」にスポットを当てた音楽ドキュメンタリー8月27日公開「サマー・オブ・ソウル~あるいは革命がテレビ放映されなかった時」というタイトルの作品のご紹介でした。
鈴木 1960年代というと黒人にとっては公民権運動など大変な激動の時期だったんではないですか?
荒木 そうなんですよ。前年 キング牧師が暗殺されて、その追悼がきっかけで始まったフェスらしいですね。 ニューヨーク・ハーレムの公園で毎週日曜 6月から8月あたりまでやっていたとのことらしいですよ。
音源を3曲ほどいただいているのでその中から1曲聞いてみましょうかね。
鈴木 「マイガール」テンプテーションズです。
鈴木 音楽フェス映画もいいですねー。
荒木さん ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。