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映 画
「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」と「傲慢と善良」のとっておき情報
(2024年9月28日9:30)
映画評論家・荒木久文氏が「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」と「傲慢と善良」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、9月23 日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いいたします。
荒木 穏やかなお彼岸の中日ですが、そんな日和には不似合いの「殺し屋映画」からご紹介しましょう。つい最近も「ヒットマン」をご紹介しましたが、あれはなんちゃって殺し屋でしたけど、今回のは何だろう…、そんなことあるかい!!殺し屋みたいな。
鈴木 ええー?わかりました。
荒木 ダイちゃんは、「ベイビーわるきゅーれ」というタイトルの作品、聞いたことありますかね?
鈴木 いや、ない気がする。
荒木 ほとんどの人がそうだと思います。実はこの映画、1作目が2021年、第2弾が2023年、今回第3弾で「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」というタイトルで公開されます。
鈴木 この3、4年に、3本ということですか?
荒木 そうなんですよ。今週金曜日、9月27日に公開されるのが第3弾です。な~に?という人も多いと思うんですけど、「ベイビーわるきゅーれ」の主人公は、ふたりの10代のいわゆるZ世代の女子なんですよ。最新作ではもうすぐ20歳ぐらいになるんですけど。彼女たちは「殺し屋協会」という組織に所属する、プロの殺し屋コンビなんです。杉本ちさとさんと深川まひろさんと言います。若いころからふたりは殺し屋、ヒットマン家業です。素顔は可愛い女子というより、なんというか今っぽい、痛ーいというか、ダメ子ちゃんズなんです。何をやるにも後ろ向きでやる気なし。あまり気合い入らない感じですね。ヤンキーとは違うんだけど。
鈴木 ちょっと自己肯定感が低い感じですか。
荒木 そうそう、いるでしょ?こういう人、その辺にも。地べたにべたっと座っている感じ。
鈴木 わかります。
荒木 ところがこのふたり、いざ職業の殺しに入ると迫力と殺気がもの凄いんですよ。このふたりのうち、主に銃を使うちさとさんと、まひろさんは格闘系なんです。
肉弾戦で相手を倒すのですがこのアクションが凄まじいんです。作品を見た人の多くがそのキレッぷりに驚くということなんですけども。そうだね…、あのキアヌ―リーブスの「ジョンウィック」…。
鈴木 「ジョンウィック」シリーズ大好きですよ。
荒木 そうでしょ!あの「ガンフー」アクションに近いです。あれより速いところもあるかもしれない。
鈴木 えーっ!?
荒木 とにかく、キレキレアクションでまさにプロの技。そのくせ、殺した後に「うーあー、疲れたー」とか「たりーよ」って地面にしゃがみこんで・・・という感じが独特なんですよ。
鈴木 このふたりはコンビなんですか?
荒木 コンビです。ずうっとコンビで人殺しやっているんですけど、ちょっと前まで住んでいたのは鶯谷あたりのラブホテルに囲まれた安アパートで、服は寝間着みたいなジャージー、移動手段はかごの付いたママチャリなんですよ。つまり、お金儲けが下手なの。安―い報酬で殺しを請け負っているんですよ。
鈴木 才能あるのにね、いろいろと。
荒木 殺す相手が、ほぼオっさんみたいな人たちで、なんか、肩が触れたとか、貸した1万円が返ってこないとかいうんで、殺して欲しいと頼んでくるせこい奴らからの依頼が多いので、単価が安いんですよ。だからいくら殺してもダメで、貧困女子最下層と言っていいんでしょうね。だから、現代日本の若いZ世代の貧困を象徴している、そんな感じだね。こういう感じが、この「ベイビーわるきゅーれ」の3作のベースに流れている世界観なんですよ。漫画だけど、リアルさも半端ないという変な感覚です。監督が阪元裕吾さんという原作者でもあるんですが、まだ28歳くらいで楽しみな人ですよ。ちょっと前置き長くなったんですけど、9 月 27 日公開される「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」。
前回の作品2作で殺し屋業界に名を轟かせた2人が、今度は最強の敵と対峙するというストーリーです。このふたり、ちさととまひろは出張して、宮崎県で早々にミッション片付けて南国のビーチでバカンス気分を満喫していたんですが、もう1人殺せと、チンピラを殺せという仕事の為に、何故か宮崎県庁に向かうんです。
鈴木 なんだよー(笑)。
荒木 わかんないけどね(笑)。そこでターゲットのチンピラを殺そうとしたところ、謎の男が出て来てそのチンピラに銃を向けている現場に出くわしちゃうんです。
鈴木 県庁に行ってまで…。
荒木 そう、ダブルブッキングみたいな感じ?その謎の男の正体は150人殺しを目指す一匹狼の殺し屋・冬村という男だったのです。
鈴木 いい流れだあ。
荒木 さてどうなることやら…ということなんです。出演は、ちさと役の髙石あかりさん、まひろ役の伊澤彩織さんという、多分聞いたことのない人だと思いますが。共演は、正直今までは一般的にも無名に近い俳優さんが多かったのですが、この映画の知名度が上がるにつれて、共演者もグレードアップしてくるんです。
鈴木 製作費アップしてるのかな?いろいろと。
荒木 そうだろうね。宮崎ロケまでやってるから(笑)。今回はなんと謎の男冬村役を、あのダイちゃんの大学の後輩、池松壮亮くん。
鈴木 そう!じゃあ、いろいろお金使ってんだ。
荒木 よく出てるよね。そして、殺し屋の先輩・みなみ役を前田の敦っちゃんが演じているんですね。
鈴木 あはははは。
荒木 これだけのアクションを繰り出す何の変哲もない女の子たちにまず、改めてそのギャップにびっくりします。とにかく池松君の血だらけの裸や、前田のあっちゃんのやたら蓮っ葉で怒鳴るばかりのパワハラ気味の先輩殺し屋がすんげーイーですよ。
鈴木 すんげーイーですか(笑)。
荒木 はい(笑)。とにかく一度見ていただきたいんですが、ただこの作品上映館が限られていて、一部の地方の方々見られない人もいるんですけど、実は9月のあたまから、テレビ東京系の深夜ドラマ枠で阪元裕吾監督の「ベイビーわるきゅーれ」のテレビドラマ版がスタートしてますんで、もしよかったらご覧ください。
鈴木 こういう3連休の時だったら、都内に出たりして見られますもんね。
荒木 見られますね。実は、山梨だけやってないみたいなんだよね。
鈴木 うわっ!出た出た出た!都内!東京!!
荒木 まわりは全部やってます(笑)。
鈴木 あはははは。アタタタタ…だね。
荒木 ワルキューレってのは、北欧神話で、戦士の神オーディンに使える武装した乙女たちなんです。象徴的ですね。戦場で生きる元の死ぬものを決めるって言われてるんです。そういうところから来ています。「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」、 9 月 27 日公開です。
鈴木 楽しい!面白いじゃないですかこれ。
荒木 ということで、ダイちゃん、話変わりますが、山梨県笛吹市が生んだベストセラー作家、女性直木賞作家と言えば…?
鈴木 辻村さんですか?
荒木 そうですね。
鈴木 そりゃもう、辻村深月さんしかいないですよ!
荒木 石和中学校から山梨学院付属高校まで出て、林真理子さんなどと並ぶ、山梨を代表する大作家です。
鈴木 林真理子さんもそうだもんね、考えたら。
荒木 そうそう日川ですね、林真理子さんは。辻村さんはベストセラー連発で映画化作の数もすごいんですよ。最近だけでも「鏡の孤城」「ハケンアニメ!」とか、その辻村深月さんの2019年に出した小説「傲慢と善良」というタイトルの、彼女の作家生活15周年記念作品として刊行されたんですが、〝婚活〟をテーマとした恋愛ミステリなんです。100万部を突破した大ベストセラーとなっています。私も読みましけど、大変面白かったです。ラジオを聞いている方々も読んだ方多いでしょうけど、その小説「傲慢と善良」が映画化され今週公開されるんです。
鈴木 お!これは注目だ!
荒木 ストーリーは、男性の主人公と言っていいんでしょう、西沢架くん。男性アイドルグループ・Kis-My-Ft2のメンバー、藤ヶ谷太輔さんがやってます。都会的でかっこよくて、若いけれど社長でそこそこお金持ちです。仕事も恋愛も順調だった架君は長年交際していた恋人にフラれてしまったことをきっかけに、例のマッチングアプリで婚活を始めます。
鈴木 みんなやってますもんね、今ね。
荒木 そうですね。あとで聞くけど、ダイちゃんも司会やったことあるってね。
鈴木 婚活のイベント、あります。
荒木 そこで出会ったなかで地方出身の控えめで、とっても気の利く坂庭真実さんっていう、今年大活躍の奈緒さんが演じています女の子と出会います。架君はこの真美さんと付き合い始めたものの、1年経っても結婚には踏み切れずにいるんです。
ある日、真実さんがストーカーに狙われていることを知った架くんは、彼女を守るためようやく婚約を決意するんですが、相手の真実さんが突然行方不明になります。
架くんは真実さんの行方を捜して、彼女の両親や友人、同僚、彼女の過去の交際相手などを訪ね歩くんです。そういった中で、知りたくなかった彼女の過去と嘘を知ることになります。
鈴木 うわー、痛いな 痛いな。
荒木 架くんは、婚活で交際を始めるも1年も将来を決めないような、まあいわゆる容姿も条件のとてもいいんですけど、ちょっと優しいけど、見下し気味の傲慢みたいな感じ。藤ヶ谷くんは、小説のイメージにぴったりです。
鈴木 ぴったりですか(笑)。
荒木 嫌味はないんですけど。一方、親の敷いたレールの上であまり考えずに地味に、いわば“善良”に生きてきた真実さん。奈緒さんなんですけど、こっちも私の小説からのメージには合致していましたけど、ちょっと美人過ぎるかな。
萩原健太郎監督がメガホンを取ってます。映画はもちろん原作とは違うんですけど、私のイメージだと前半はほとんど同じかな。話は所々端折られたりして、登場人物が異なる部分もあったけど、ほとんど流れは同じで結末は多少テイストが違ってきてます。
鈴木 多少テイストが違うというのは、原作からびっくりするくらい変わってる感じなんですか?
荒木 人によってはそう思うでしょうね。だから原作を知っていても、結構ドキドキ感はありますよ。私はマッチングアプリなどやったことがありませんので出会った人との距離感とか、恋愛、つきあい方、その辺りわかりませんが、実際に婚活を経験してきた女性に聞くと、「とても分かる、真実ちゃんと重なる部分が私にも…」という人が多くて、「ちょっとびっくりした、身に覚えがありすぎて苦しい。」と言う人もいましたね。ダイちゃんは、マッチングアプリとか、婚活パーティーのお手伝いもしたことあるでしょう。そういう人を見ていると、あるかもしれませんね。
鈴木 なんか、ひとつの傾向、流れみたいな感じは、何人か沢山の方が集まると、ちょっと匂うというかわかることはわかるよね。
荒木 でしょうね。
鈴木 あれは、確かになんかあるよね。
荒木 具体的にはルーティンというか、コンベアベルトのように次から次に 相手が流れてきて、いろいろな人に会って品定めをするっていうようなイメージなんですけど。まあ、この次もっといいのが来るかもしれないというのは常にあるんでしょうね。
鈴木 相手を見つけに来ているという大前提があるわけだから、みなさん。
荒木 そうだよね、相手もそうだしね。
鈴木 だから、不思議な感覚ですよ。
荒木 恋愛でも同じですけど、就職活動みたいに似ているよね。
鈴木 就活に似ている!凄い似ている。条件見ながらだし。
荒木 どちらにしろ、男女の思考形態の違いというか、女の嫉妬とそれに対する男の鈍感さもあって。もうひとつは、田舎育ちの女性と都会育ちの男性。この辺もちょっと違って、婚活って疲れるんだろうなあっていうのが私の感想でした。
鈴木 荒木さんは、婚活なんかしなくたって、いっぱい女生との出会いがあったり…、あるでしょ。
荒木 そういう不規則発言はやめてくださいよ。そんなの全然ないよ!円満な夫婦生活がずうっと続いてますから。
鈴木 その続きは、また居酒屋かなんかでいいかなって感じしますね。
荒木 こういうところは、新海さんカットしてくれないかな。
鈴木 せっかくの振替休日なのに。
荒木 穏やかな休日が悲惨なものに変わっちゃうよ。
鈴木 あはははは。
荒木 9月27日公開の映画「傲慢と善良」という作品。これは、甲府でバンバン上映ですよ。9月28日は公開記念の舞台挨拶中継もあるらしいよ。
鈴木 ありがとうございます。