「ヴェノム:ザ・ラストダンス」「ぴっぱらん!!」「十一人の賊軍」のとっておき情報

(2024年11月2日10:45)

映画評論家・荒木久文氏が「ヴェノム:ザ・ラストダンス」「ぴっぱらん!!」「十一人の賊軍」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、10月28 日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木      よろしくお願いいたします。

荒木      今日は、11月公開の作品がたくさんあるので、その中からピックアップしていきます。大きく言うと集団抗争劇とでも言いますか、ひとり対ひとりの戦いではなく、集団で戦うという争い、対立ですね。

鈴木      チームスポーツ的な感じね。

荒木      ああ、そうそう。戦争映画なんかもそうですし、スターウォーズとか、ヤクザ映画とかもね。ある意味昨日の選挙なんかは、大きい意味では集団抗争だったよね。一番面白いのは、これから、過半数を割っちゃた与党で始まるんだろう集団旧派閥抗争みたいなものが。

鈴木      ここまで山が動くとはね。

荒木      …と、変な想像をしてしまいましたけど・・・気を取り直して。まず、あのスパイダーマンの宿敵としても知られるマーベルコミックのダークヒーローというと?

鈴木      ヴェノム!! 

「ヴェノム:ザ・ラストダンス」「ぴっぱらん!!」「十一人の賊軍」のとっておき情報
「ヴェノム:ザ・ラストダンス」

荒木      そうです。シンビオートと呼ばれる宇宙生物が人間の体に入り込み、寄生したことで生まれたのがヴェノムですね。真っ黒な体と鋭い牙で。

鈴木      なんか暗いよね。

荒木      そう。人間を食べちゃうんだよね。憑りつかれたトム・ハーディが演じるエディという人間と一緒に強敵を倒していくという人気シリーズなんですけど。ヴェノムの方はあんまり見てないの?

鈴木      あんまり見ないんだよね。何故か自分でもわからないんですけど。

荒木      まだ2本しかやってないしね。今回ご紹介するのが第3弾で、最終章と銘打ってあります。このヴェノムから紹介しましょう。 タイトルが、「ヴェノム:ザ・ラストダンス」といいます。前の作品、2021年の「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」で、強敵を倒したヴェノムとエディは世界の危機を救い、さらに深い信頼関係で結ばれたバディとなります。 今回は、極秘に宇宙生物を研究する人間の施設に侵入したことで特殊部隊に追われる羽目になってしまいます。さらに、地球外から新たな脅威が飛来します。その脅威とは「ゼノファージ」と呼ばれる、巨大な角の生えた空飛ぶトカゲみたいなグロいやつらで、これが絶えず人を襲ってくるわけですよ。そこに人間の軍隊の特殊部隊が介入して、さらにヴェノムの仲間のシンビオートという宇宙生物も大量参入してきて、集団抗争がはじまるわけです。

鈴木      じゃあ、3つの集団抗争ということ?

荒木      そうですね。この戦いシーンが一番の見どころですね。もの凄いスピードで、もの凄い映像美ですよ。もの凄い音響です。更に、地球外生命体「シンビオート」の創造主である最強の敵・ヌルという、いわばラスボスが登場し、エディとヴェノムが壮絶な戦いを繰り広げるわけです。このヌルがまた不気味で凄いんですよ。まあ、とりあえずポップコーンとコーラでわいわい言いながら楽しむ映画ですね。ぎゃぎゃ―言いながら楽しんで下さい。
ただひとつだけ、この映画見る人に注意です。ダイちゃんも感じていると思いますが外国映画は最後のいわゆるエンドロールが長いよね。日本のそれに比べて、特にアメリカ映画で、「マーベル・シネマティック・ユニバース」みたいなものは、特撮スタッフとかアニメータースタッフが沢山いるから。今回の、この「ヴェノム ザ・ラストダンス」も長いんですよ! 15分くらいあるんじゃないのかな?

鈴木      でもそこで席を立っちゃダメだよ、ダイちゃん!って話?もしかして。

荒木      そうなんだよ。その後に映像があるんですよ。

鈴木      そういうの、結構、ちょこちょこありますよね。

荒木      そうなんですよね。これ、3弾で終わりだから、別に映像入れてもしょうがないんじゃないかと思ってたら、…ま、ちょっと謎の映像なんで見とかないと・・・ってことで。

鈴木      結局、4、5って続くんじゃないんですか?これ。

荒木      かもしれないね。ただね、エンドロール、調べてみたんですよ。一番長いのはどのくらいあるのかと思ったら、なんと13分っていうのがギネス公認の、エンドロールの一番長いやつだったんだよね。

鈴木      その一番長いのって、なんなんですか?映画って。

荒木      『X-ミッション』っていう、2015年に公開された映画だったんですが。全体の長さが114分で、エンドロールの長さが十分の一を占めてるんですよね。今回はもっと長いよ。

鈴木      それ、なんでだろう?特撮云々じゃないよね。

荒木      いろいろスタッフが多くて、そういうものなんでしょうね。エンドロールの中に映像なんかを入れるのもあって、それだったら楽しいんだけど、文字だけずらーッと流されても、どこのどいつかわからないやつの名前見ても仕様がないと思うんですけど、それも作った人に対する敬意もあるからね。  また、話しは変わりますが、「デッド・プール&ウルヴァリン」が10月に公開されてるんですね。

鈴木      あのサントラが大好きで、いまだに聴いてますよ。

荒木      デッドプールはもともと、X-menの敵役でしょ? この前紹介したのが「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」。ジョーカーは、言うまでもなくバットマンの敵役でしょう。で「ヴェノム」。スパイダーマンの敵役なのに人気が出て主役になって、ヒーローがいなくても、むしろヒーローがどっか行っちゃってるよね。

鈴木      悪役こそがヒーローなのかもしれないですよ、むしろ。

荒木      いわば、悪役ヴィラン、ヒーローですよね。この3人が、同じ今年登場したのは面白い一致ですね。

鈴木      もしかして、この3組が共演するってことは出来ないかな。

荒木      あるかもね、何やるかわからないからね。

鈴木      それ見たいなー。

荒木      それ見たいね(笑)。ということで、「ヴェノム:ザ・ラストダンス」11月1日公開です。  2本目は、典型的な集団抗争劇とでも言いますか、ヤクザ、不良同士の戦いの集団抗争劇になります。「ぴっぱらん!!」というタイトルの作品です。 

「ヴェノム:ザ・ラストダンス」「ぴっぱらん!!」「十一人の賊軍」のとっておき情報
「ぴっぱらん‼」(©ワールドムービーアソシエーション)(11月1日(金)よりテアトル新宿、アップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開中)

鈴木      「ぴっぱらん」? 何それ?

荒木      韓国語なんです。「ぴっ」は血と雨のことらしいです。「ぱらん」は風を意味するのだそうです。だから英語だと、ブラッド・レイン アンド ウィンド? アース ・ ウインド アンド ファイアーみたいな、ね。

鈴木      あはははは。そっちの方がよっぽどわかんなくなってくるね(笑)。

荒木      この「ぴっぱらん!!」というのは、映画「北風アウトサイダー」と言う作品で在日コリアンの家族の姿を描いた、崔哲浩さんていう人が主演だとか脚本だとか一人4役を務めています。 ヤクザの組長だった父親が暗殺され、離れ離れになった3人の兄弟が、とある事件をきっかけに、25年ぶりに集まる話なんです。ま、久々のヤクザ、反グレ抗争劇ですね。集団ケンカです。私が見ての感想は、集団の格闘を久々に見たんですけど、役者さんが、本人も含め周り、Z世代もいるのかな、チンピラや三下が強面じゃないっていうか、非常に綺麗な顔してるんだよね、みんな(笑)。

鈴木      あはははは。なるほどね。

荒木      そういえば、今の世の中、みんなきれいになっちゃってるよね。

鈴木      そうなりましたね。

荒木      映画でいうと、あのピラニア軍団とか知ってますか?

鈴木      あっ!懐かし~い。いかにも悪役でしたからね、顔つきも。

荒木      志賀勝さんとか、川谷拓三さんとか。みんなおっかねーおっさんでしたよね。

鈴木      あれは、日曜に本屋さんとかで会いたくないですよ。

荒木      そうですよね。もうそういう人がいなくなって、サッカーもバレーも、みんな綺麗な男の子だよね(笑)。

鈴木      そうなったんですよ、時代がね。

荒木      日本人の顔が変わってきたんですかね。ま、探せば、ああいう恐いおっさんたちもいると思うんですけど。

鈴木      でも、綺麗で裏が恐いってのが、逆に一番恐いよ。

荒木      不気味だよね。この手が好きな人は、是非見に行ってください。 「ぴっぱらん!!」、11月1日から公開です。  最後は、時代劇+戦争映画といったところですかね。11月1日公開の「十一人の賊軍」です。監督は白石和彌さんです。

「ヴェノム:ザ・ラストダンス」「ぴっぱらん!!」「十一人の賊軍」のとっておき情報
「十一人の賊軍」(©2024「十一人の賊軍」製作委員会)

鈴木      名監督じゃないですか。

荒木      今、日本で、ある意味NO1の監督と言っていいと思います。 ダイちゃんも『孤狼の血』とか見たと思うんですが、人間の本性を鋭く描き出す作品を次々に生み出してきた監督です。この白石監督の注目の最新作が、この「十一人の賊軍」です。幕末の戊辰戦争が舞台です。場所は新発田藩、現在の新潟県にある旧新発田藩で起こった事件をテーマにしています。この新発田藩が、会津藩などが中心の旧幕府軍に加わっていたんですが、お偉いさんが勝ち目がないから官軍に寝返ろうと画策するんです。 その作戦上にやらなきゃいけないことがあって、新発田藩に捉えられていた10人の罪人、侍ばかりでなく、いろんな罪を犯した町人や百姓、職人などをある砦に派遣して政府軍と戦わせるんです。勝てば無罪放免、負ければ死。ウクライナと戦う囚人ロシア兵みたいに罪人を戦力として動員するというか、使い捨ての駒にして戦わせるという、藩の目論見があったのです、その砦で、実は官軍に対していわば賊軍としての壮絶な戦いが始まります。さあ、10人の賊軍は生き残れるのかという話です。

鈴木      荒木さん!ちょっと一言いい?

荒木      いいですよ。

鈴木      映画のタイトル、11人って言ったよね? 荒木さん、ずっと10人なんとか…って。

荒木      そうなんですよ。よく気がつきました!さすが!

鈴木      あのね、10人と11人、サウンドそんなに違うし、どう聞いてもわかるよ。

荒木      あのね、1人レッドカードで退場・・・。

鈴木      いやいや、そんなんじゃないよ(笑)。なんで10人なの?

荒木      そうなんですよ。もう1人加わって11人になるんですが、それはこの映画のツボのところで、どうしてなのか?誰なのか?ってのは、感動と共にわかってくるんですよ。そういう仕掛けになってます。

鈴木      じゃあ、映画を見ないと、10が11にならないということ?

荒木      そういうこと。山田孝之さん、仲野太賀さんのダブル主演で、他にもたくさん出てるんですけどね。 実は、先日、監督と直接お会いしてお話を伺いました。この映画のきっかけ、実は意外な事実があります。1960年代を中心に、東映がいろいろな集団抗争劇をたくさん作りましたよね、「仁義なき戦いシリーズ」とか。当時、東映に笠原和夫さんと言う偉大な脚本家がいたんですよ。いろんな集団抗争劇の脚本を書いていたんですが、その人が1960年代にこの作品のプロット・脚本を作ったそうなんです。ところが、いろいろな事情が重なってこの企画が「ぼつ」になり、脚本も廃棄されてしまったんです。ところが、作品のプロットだけ残されていて、それを白石監督が発見したんだって。それもキンドルで…。

鈴木      えっ!?

荒木      それが、この映画化のきっかけだったそうです。で、その企画を手に入れてプロットから脚本を作ったのが今回公開の「十一人の賊軍」です。 企画自体にストーリーがありますよね。本当に脚本が良く出来ています。囚人の10人全員がちゃんと小ずるくて、小悪党で、罪人で改心とか反省とかしてないところがいいですよね。

鈴木      さすが罪人だね、そこは。

荒木      で、脱走するやつ、死ぬやつといるんですけど、あまり詳しくバックボーンを書いてないんです。それが又いいです。何をやって捕まったのかはわかるんですよ。

鈴木      理由まではわからないってことね。

荒木      そうそう。そういう有象無象が面白くて、最後の最後まで何が起こるかわからない映画です。

鈴木      11人目、なんとかしてよって。

荒木      アクションシーンも大掛かりで、さすが白石時代劇・活劇という感じです。山の中で、2カ月もかけて撮ったそうです。 「十一人の賊軍」という話題の映画です。ちょっと長いんですけど見ごたえありますので、是非見に行ってください。

鈴木      今日も面白そうな3本のご紹介、ありがとうございました。

      
「ヴェノム:ザ・ラストダンス」「ぴっぱらん!!」「十一人の賊軍」
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊨と鈴木氏)         

   ■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

   ■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。

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