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映 画
「ベルナデット 最強のファーストレディ」「アイミタガイ」のとっておき情報
(2024年11月13日9:00)
映画評論家・荒木久文氏が「ベルナデット 最強のファーストレディ」「アイミタガイ」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、11月4日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いいたします。
荒木 ダイちゃん、選挙行きましたか?
鈴木 突然そんな話、振って…。選挙ね、山梨の方に引っ越して、初めての選挙ですね。
荒木 先週、日本の総選挙が終わったと思ったら、今週はアメリカ大統領選挙ですよね。
鈴木 明日の夜ですよ。日本の投票時間がはじまるの。
荒木 ちょっとばたばた続く感じですよね。というわけでもないんですが、今回ご紹介するのは、政治家がらみの映画なんですよ。
鈴木 お!それは面白い。
荒木 フランスで1995年から2007年まで大統領だったシラクさん。
日本通で有名だったんですよね。彼の奥さん、ベルナデット・シラクさん。ファーストレディですね。彼女の姿を、ユーモアを交えながら描いたドラマで「ベルナデット 最強のファーストレディ」というタイトルです。
ベルナデット・シラクは大統領夫人としても親しまれ、彼女自身も元政治家だったんです。
鈴木 それは知らなかったな。
荒木 フランスの地方の政治家ですね。彼女は夫ジャック・シラクを大統領にするために常に影で働いてきました。1995年ごろ、ようやくその努力が実り大統領夫人になってエリゼ宮の住人になったわけです。ところが彼女ベルナデットは夫のシラクやその側近たち、そしてクロードという娘がいるのですが、娘は夫・シラクの広報アシスタントを務めています、こうした周りのスタッフから「時代遅れ」で「メディアに向いていない」と軽視され、大統領夫人としての基本的で儀礼的な仕事すら与えられない日々を過ごしていました。
鈴木 えーっ?!そんなの知らなかった。
荒木 本当らしいですね。そんな現実を過ごす彼女はある日、一念発起して注目されるファーストレディを目指すことを決心します。そのために彼女はエリゼ宮の職員ベルナール・ニケ、と言う男、この男は知事になる野心も持っていたのですが、彼に知事にしてやるという約束をしてイメージチェンジを図るチームを作ってチーフに命じるんです。皆を見返してやるという作戦を開始します。
この作戦は徐々に功を奏して、彼女はポジティブに変化し国民も次第に熱い注目を集め始め時には夫ジャックの存在を差し置いて徐々に多くの視線が彼女に寄せられ始めていくんですね。
鈴木 どんどんお洒落に変身していったんですね。
荒木 そうなんです。女性で、特にちょっと歳を召した方は自分自身の弱点や欠点を認めてそれを受け入れて自分を見つめ直すって大変ですよね。我々の日常生活や仕事場面にもあるけど、まず自分の欠点を見つめて受け入れて直していくっていうこと、本当に克服していくのは大変なんです。それを一生懸命、心が折れかけてもニケというスタッフに「本当のあなたを見せるのです」「反抗を覚えましょう」と一種の催眠療法や自己開発セミナーみたいなものですけど(笑)。これで、時には夫ジャックの前を行くようなイメージでメディアに取り上げられ、一躍時の人として注目を浴びます。
あまり知らなかったよね?
鈴木 知らない、知らない。
荒木 私も全然知らなかったんです。最後 彼女は求心力を失ったシラクの後任人事にも介入します。シラクさんは後に脳梗塞で言語障害になってしまって彼女の思うまま、つまり、復讐が目的完了ということになるんですね。ベルナデット・シラクはカトリーヌ・ドヌーヴ、言わずと知れたフランスの大女優ですよね。カトリーヌ・ドヌーヴは今年80歳になるんですけど、1960年代から活躍したフランスの至宝ですよね。だから、フランス国民もこの映画にはとても注目したんですよ。
そして、コメディだから愚かな人は徹底的に愚かに描かれています。
鈴木 そういうところは、誇張しているんだね。
荒木 もちろん。シラクは特にろくでなしに描かれていますよ。
シラク大統領って環境問題だとかEU統合だとか、1995年から12年間フランス大統領としてリーダーシップを発揮してきた有能な人なんですよ。首相やパリ市長も歴任して、写真みたことあるよね? 大統領を経験した大政治家です。
鈴木 もちろん!確か、日韓ワールドカップの時のレセプション、よく出ていましたよ。
荒木 ああ、そうかもしれない。
鈴木 だから皆さん知っていますよ。
荒木 「ブルドーザー」という異名をとって親日家で相撲大好き。
50回以上の来日歴があるそうですよ。
鈴木 それはもう、親日家超えているね。
荒木 犬に、スモウって名前つけてるって。
鈴木 あはははは。それは凄い。
荒木 ところが、冷静な判断力に欠けるらしくて「何というエネルギーだろうね、だけど判断力は…」という人もいたということですが、この映画では男尊女卑で亭主関白の浮気者となっています。やり手で、それこそお金にまつわる疑惑や複数の愛人の中には日本人もいたとも言われていますね。
鈴木 それは、多分 実話だろうな。
荒木 そうですね。だいたいね、フランスの大統領でシラクさん、ミッテランさん、 ホランドさん。全て愛人や不倫の証拠を握られましたよね。
鈴木 そうそう!必ずフランスの大統領は、2人、3人、5人、10人いるってイメージですよね。
荒木 そうだよね。これはどういう事なんでしょうね。フランスって、そういうところはおおらかなんでしょうかね。
鈴木 そのくらい精力的に動けるエネルギッシュな男だからトップなんですよ。
荒木 そういうことなんだよね。ミッテランは、愛人がいると言われた時「それが何か?」と言ったそうですからね。
鈴木 あはははは。これはまさしく「So what?」の世界ですね。
荒木 日本だったら、「so out」ですよ。
鈴木 そうですよ。so outですよ。So what?じゃないですよ。上手い!
荒木 この映画に登場している人物は、シラク氏以外はほぼ生きているんですって。シラク夫人は91歳で、現在要介護状態でこの映画を見られないとのことですが、
この作品に登場する娘のクロードさんは、公開前に見て激怒したという話も伝わってきています。
鈴木 号泣じゃなくて激怒ね。
荒木 途中で席を立ったらしいとか…。
鈴木 それぐらいでいいんですよ。
荒木 まあね、酷く描かれているんですよ。ダイアナ妃がパリで交通事故死した日、官邸が大騒ぎになっているのに、シラクは女優と密会してたとか、そういう話。そんなことを堂々と描いていますので、映画の冒頭でこの映画はフィクションですよということをデカい字で書いてあります。
日本でもこういった政治家コメディもお願いしたいですけど、まあ、無理ですね。
最近は政治ドキュメンタリーはポチポチあるけどね。
鈴木 ここまで茶化してコメディで、愛人が5人6人。日本じゃ、それはちょっと無理でしょう。
荒木 そうですね、そして 明日はいよいよアメリカ大統領選投票日ですよね。
鈴木 日本時間では、明日の夜くらいからですよ。
荒木 結果が出るのは、もしかしたら1週間くらいになるかもしれないけど、ファースト・レディーにメラニアさんが返り咲くのか、ダグ・エムホフさんが初のファーストジェントルマンとなるのか注目ですよね。
鈴木 日本人なのになんでこんなにドキドキしているのかと思うくらい、ドキドキしてますね。
鈴木 そうですね、ファーストジェントルマンか。
荒木 ちなみに、副大統領夫人は、セカンドレディというらしいですよ。
鈴木 そうなの?正しい言い方なの?シンプルでわかりやすいですね。
荒木 余計なことばかりですみません。「ベルナデット 最強のファーストレディ」、11月8日から公開です。
次は、11月1日から公開中です。「アイミタガイ」と言うタイトルの作品です。アイミタガイって、漢字で書くと、相手の相に身体の身、お互いの互い。「相身互い」です。基本的には 同じ境遇にあるもの同士が同情し,助け合うことをいうんですけど。「武士は相身互い」とか・・・変わったタイトルですが、どうしてこんなタイトルなのか見ていただくしかないんですよ、この映画。
鈴木 なんなの?そういう説明で終わっちゃうの?
荒木 (笑)そうなんですよ。
鈴木 えーっ!?
荒木 非常に伏線が張ってあって、回収の要素が強くて、いわゆる謎解きですよね。
鈴木 俺は、荒木さんのトークが謎解きになってる。
荒木 そうでしょう。あまり説明できないんですよ。ただ、とっても感動的で、特に女性には心に深く突き刺さる作品だと思います。
鈴木 思いますと言われ、そうですかと私もいうしかない。
荒木 見た人、多くが泣いちゃってて、心地よい涙を流してますけど…。一応ストーリーだけね・・・。主演は黒木華さんです。彼女の演じる梓はウェディングプランナーとして働いています。ある日、学生時代からの親友の叶海ちゃんが亡くなったという知らせを受けるんです。梓はかけがえのない存在だった親友の死を受け入れられずにいて、叶海の携帯にメッセージを送り続けます。ところがある日「あなたがいないと前に進めないよ」とメッセージを送ると読まれるはずのない送信済みのメッセージに一斉に既読がついたんです!!…という話からはじまります。
鈴木 いっ!次はどうなの?
荒木 ちょっと言えないんです(笑)。ストーリー説明しても、どこが伏線でどこが伏線回収なのか、わからないでしょうけど。前半はどんどん現れる伏線。後半は伏線を回収していって最後に訪れる感動という…。
鈴木 それは、どんでん返し系?それとも…。
荒木 ま、どんでん返し…もあるけど、伏線回収ですよね。どんでん返しまでいかない。
鈴木 なんか、じれったいなあ。
荒木 一見すると、時間軸の繋がりも見えないシーンが、本当は少しずつ隣り合って、影響しているってことで本当によく計算されて作ってあります。
派手な作品ではないですけどあたたかい作品です。あたたかい作品と心に触れる作品と、伏線回収なんですね。上手く作ってあるんですよ。
鈴木 上手く作ってあるんですよって言われても、うーん。
荒木 わかんないよね。だから見てもらうしかないんだけど、伏線回収ってなかなか大変です。綿密に計画してはじめから細心の注意を払って、張り巡らされているじゃない。もうひとつ大切なのは、回収されるタイミングやその方法。それがあるんですよ。これは滅多なことじゃなかなか作れないね。
鈴木 それは見ていて荒木さんから見たらドンピシャですか?
荒木 ドンピシャですよ。本当に適切にね、それから情報も上手く隠してあって他の情報入れたり、バランスね。パズルみたいなもんです。
鈴木 それは、監督さんが凄いの?作家さんが凄いの?どういうこと?
荒木 みんな凄いです。この映画は3人の監督が関わってると言われています。
鈴木 なるほど。三者三葉の考えもアイディアもあるわけだね。
荒木 いろんな有名な人いますよね。クリストファー・ノーランとか、:M・ナイト・シャマランとか。私が一番好きなのは、内田けんじさんなんですけど。最近作らないけど、どんでん返しに近い要素が多い監督ですよね。興味のある人はぜひ見てください。大切な人の死をきっかけに、ひとりひとりが今を見つめという心あたたかくなる映画です。黒木さんが歌を歌っています。「アイミタガイ」現在公開中です。
鈴木 ありがとうございます。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。