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映 画
アラキンのムービー・ワンダーランド/「死刑にいたる病」「オードリー・ヘプバーン」「スージーQ」のとっておき情報
(2022年5月11日11:00)
映画評論家・荒木久文氏が「死刑にいたる病」「オードリー・ヘプバーン」「スージーQ」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、5月2日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 荒木さん―よろしくお願いいたします。
荒木 ゴールデンウィーク真っ只中ですので、今週公開の映画のなかから
ジャンル別にダイちゃん向けに一押しの作品を紹介しましょう。
まずは、ダイちゃん向けでしょうか?ホラー系サイコサスペンス。
鈴木 好きですよ。
荒木 「死刑にいたる病」5月6日から公開です。「凶悪」や「孤狼の血」の白石和彌監督の最新作です。
ストーリー…主人公は大学生・雅也くん(岡田健史)。人生に絶望している彼は勉強にも集中できず、鬱屈した日々を過ごしていました。
そんな彼になんと、連続殺人事件の犯人・榛村(阿部サダヲ)から1通の手紙が届きます。
榛村は24人もの若い男女をすごい残酷な方法で殺して逮捕され、死刑判決を受けていたのです。その榛村は、犯行当時、雅也の地元でパン屋を営んでおり、中学生だった雅也もよく店を利用していたんですね。知り合いだったわけです。
で、榛村は手紙の中で、23人を殺したことは認めるのですが、最後 24人目の殺人は自分がやったのではないと訴え、不思議なことに雅也に他に犯人がいることを証明してほしいと依頼をしてきたんですね。
気が乗らないながらも独自に事件を調べ始めた雅也は、この残酷な事件の真相にたどり着きます…というものです。
出演は阿部サダヲと岡田健史が主演、岩田剛典、中山美穂などが共演しています。
一言でいうと…不穏で、グロくて、サイコ。最後の最後まで息をのむというか息苦しい
展開です。
鈴木 不穏で、グロくて、サイコ…ある意味スーパーじゃないですか。
荒木 グロがダメな方、暗い話が苦手な方は、避けたほうがいいかもしれませんね。そうじゃないダイちゃんみたいな方もなるべく精神衛生がいい時にご覧になることをお勧めします。何より主演の阿部サダヲさんが圧巻です。あの目。いつも笑っているような瞳、それが真っ黒で引きずり込まれそうな、ブラックホールのように思えます。あの目。しかも瞬きしないんです。
鈴木 こわいなぁ。
荒木 …これどこかで見たような目だなと思いましたら、あれですよ。レクター博士。『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスを彷彿とさせるサイコパス演技です。その後ろの白石監督の世界観。これがミックスするとこんなに怖くなるという…「死刑にいたる病」5月6日公開です。
このさわやかなゴールデンウィークにあえて怖い、グロを求める方どうぞ。
鈴木 ゴールデンウィークにふさわしい太陽、さんさんの夢溢れる映画と思ったら…。
荒木 私、へそ曲がりなんで…。
鈴木 さすが、荒木さん!!
荒木 次の作品 ジャンルでいうとドキュメンタリーではあるのですが、万難を排してみたいという人、結構いるでしょうね。
古い映画ファンは絶対に見たいでしょう…ダイちゃんの世代ではないんでしょうけど、あの大スターがテーマです。
「オードリー・ヘプバーン」という5月6日から公開の作品。
彼女にはどういうイメージ持っていますか?
鈴木 ヘプバーン・・妖精(フェアリー)のような女優。
荒木 まさに妖精です。死後30年を経ても世代を超えて愛され続けるハリウッド黄金期の伝説的スター オードリー・ヘプバーンの知られざる素顔に迫ったドキュメンタリーです。
鈴木 おもしろそうですね。
荒木 ハリウッドデビュー以来、あまり語られなかった彼女の私生活の真実をゆかりの人々が語ります。映画では貴重なアーカイブ映像を交えながら俳優リチャード・ドレイファスやピーター・ボグダノビッチ監督ら映画関係の仲間たち、息子や孫、友人ら近親者のインタビューです。
鈴木 荒木さんも知らなかったことも多かったですか?
荒木 知らなかったこといっぱいあります。名声の裏側に隠された本当の姿を浮かび上がらせていきます。何よりも本人の音声がたくさん入っています。
ヘプバーンは貴族の血を引いているのですが、幼い時期に父親に捨てられたという意識がトラウマとなっていると言われています。
ナチス占領下のオランダという過酷な環境で育ち、栄養失調のためにのちに太れない体質になってしまったと言われています。一時はバレリーナを目指しますが、映画の世界に入り初主演作「ローマの休日」でアカデミー主演女優賞を受賞し、映画スターとして輝かしいキャリアを築きあげる一方、実生活では恋愛も多かったのですが、幾度も結婚・離婚をし、愛される喜びを得られずにいました。彼女は世界中のファンから愛されたのに、実生活で愛される喜びを得られなかった人でした。
鈴木 愛を欲していたんですねぇ。
荒木 しかし生涯をかけて「愛すること」を信じた人だったんですね。
晩年にはユニセフ親善大使など慈善活動を通して多くの人々に癒しと救済をもたらし、生涯をかけて「愛すること」を信じ、慈しみ、癒すということの大切さを世界に知らせました。
見せていただいて、私が最初に感じたことは、なに、この美しさ…こんな美しい人がいるのかという感想でした。改めて驚かされますよね。正直若いころは写真が不鮮明ということもあるのか、きれいではあるけど、そう目を見張るほどでは・・・と思うんですが、女優というのは人に見られることで、化粧技術ももちろんなるのですが、20代中盤なんて文字通り輝くような美しさですね。あと、この女優さんを語るのに欠かせないキーワードは「品」「品格」です。
華奢でありながら、気品を備えた立ち姿は、どこか貴族のたたずまい、映画の場面、場面に品格が漂っています。
そして映画の中で、インタビューを受ける人たちが異口同音に褒めるのはその人間性です。トップ女優なのに周囲の人たちへの礼儀と尊敬を忘れなかったと言われています。
ユニセフの活動のアフリカでは、体中にハエがたかった子供たちを躊躇なく抱きしめ励ましたと言います。
鈴木 あの当時の写真をよく見ましたよね。
荒木 とにかく写真やアーカイブス映像がたくさん出てきますので、その美しさだけ堪能するのもひとつか、なんて思います
そういう意味で伝説の人 伝説の女優であるので、改めてオードリー・ヘプバーン
ということでドキュメンタリー「オードリー・ヘプバーン」5月6日公開のご紹介でした。
美しさと人間性を大きなスクリーンで是非、見ていただきたいと思います。
鈴木 最後、すごい素敵なキャッチコピーですね。
荒木 ありがとうございます。
最後は、ここのところシリーズでお送りしている、ミュージッシャンのドキュメンタリーシリーズ、3週目はスージー・クワトロ!!!
鈴木 スージー・クワトロ!!来たー!!
荒木 女性ロック歌手の草分けといっていいでしょう。1970年代に一世を風びしたスージー・クアトロの真実に迫るドキュメンタリー「スージーQ」。 5月6日公開です。
ダイちゃんにいろいろお話聞いたり、映画の内容に入る前にいつものように簡単にプロフィールをご紹介します。
スージー・クアトロはスーザン・ケイ・クアトロッチオ。 1950年アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト出身の名前からも分かるようにイタリア系ですね。1964年姉パティらとガールズバンド「プレジャー・シーカーズ」というグループを結成、ジェファーソン・エアプレインらとアメリカ各地をツアーで回りました。こぎれいなイメージですよ。ノーランズの原型みたいな感じですかね?
1971年末単独でイギリスに渡ります。1972年ファースト・シングル「Rolling Stone」を発表。しかしヒットせずでした。1973年に入ってからハードロック路線へのイメージ・チェンジ。セカンドシングルの「キャン・ザ・キャン」はイギリスを含むヨーロッパ及びオーストラリアでナンバーワン・ヒットを記録し。続いて「48クラッシュ」、「デイトナ・デモン」も大ヒット。
小さな体に大きなベースで男のメンバーを従える当時としては革命的スタイルでスターになりました。
1974年にも「悪魔とドライブ」(UKチャート1位)「ワイルド・ワン」(UKチャート7位)日本でも、1974年から5年連続で日本公演を行ないました。大都市だけではなく中都市も回る大規模な日本ツアーを成功させています。
鈴木 結構日本にも来ているんですね。
荒木 そうですよね。
ダイちゃん、スージーとの関りというか、出会いは?
鈴木 音楽に最初に出会ったというよりも、映画にも出ているんですが、黒いジャンプスーツ、つなぎを着てあどけない顔でこちらをにらんでいるような、微笑んでみているような、ルックスで僕を、こちらを見ている。それが、スージーを見た最初ですよ。ルックスもかっこいいなと思いましたが 僕の周りにはいない、今聞いている音楽とは違うなーと思って…。
荒木 なるほど…。
鈴木 それで聞いてみようと思ったら数年前の音楽だということに気が付いて…。
荒木 1970年前半というと、ダイちゃんは?
鈴木 「CAN THE CAN」の1973年とかになると、僕は6歳か7歳。だからリアルタイムでは聞いていないですよ。77年「KISS」の来日公演に行ったりしてそれから洋楽にはまりました。ですからちょっと振り返る、それがスージー・クワトロなんですよ。
荒木 なるほど、私なんかはリアルタイムですからねー。
鈴木 見て、こんな人いたんだー、こないだまでもちろん、その時も人気があったんですけど、以前はすごかったんだなと思ってそれからベストアルバムを聞いたんですよ。すべてがキャッチ―でわかりやすいロックンロールで、ジャニス・ジョブリンが
60年代終わり70年代の頭じゃないですか、でも、ジャニスは女性のためにロックを歌ったんじゃないという位置づけなので…そうすると70年代大ブレイクした、パット・ベネターの前なんですよ、スージー・クワトロは…。
女性がジャンプスーツを着てエレキギターをもって女性バンドを組みたいと思った最初のロールモデルがスージー・クワトロだと思うんです。
荒木 その後の女性シンガーの草分け的存在だったですよね。
鈴木 そうです。ジョーン・ジェット、デボラ・ハリー…もみんな出て来て賛辞を述べまくっていますよね。
荒木 デボラ・ハリーも若いですよね。
鈴木 そうですね。 びっくりしました。
荒木 映画の全体の流れ、見ていただいていかがでしたか?
鈴木 女性がギターをもってしかも小さい体じゃないですか?デボラ・ハリーは「すごく小さな女性が重いベースをまるで羽のように扱っていた」というコメントをしています。それを見た時、デボラ・ハリーもニュー・ヨークの片隅で自分もミュージッシャンを目指していた時に、デトロイト出身なのにロンドンに渡り、ヨーロッパで大スターになる…彼女を見ていたんでしょうね。
荒木 逆に アメリカでは全く売れなかったですよね。
鈴木 そう、売れないんですよ。
荒木 なぜなんですか?
鈴木 やはり早かったということでしょうね。少し早かった、数年、2,3年早かったと思いますよね。そして、わくわくしてみましたよ、この作品。
荒木 そう、そして 彼女は今も活動しているんですね。
鈴木 2019年だから3年前に8年ぶりのニュー・アルバムを息子さんと一緒にリリースしていますよね。
荒木 日本とも縁が深くて日本で和装の結婚式を挙げたんですよね。
鈴木 そうそう、ウド―音楽事務所にまつわる、なんかねー、エピソードも出ていましたよね。
荒木 有働社長がいけないんですよね。全然にあっていないんですよ、花嫁衣装が。日本のファンのために何もそこまで下りてくることはないですよね。
また、今もジャンプスーツを着てやっているんですね。
鈴木 ステージ、相変わらず迫力ありますものね。
荒木 お身体の幅は二倍ぐらいにもなりましたが。
鈴木 なりました。なりました。
荒木 お尻、パッツンパッツンでしたよ、それと、さすがにあのハイトーンはいまいちだったんですけど…。パワフルなおばちゃんという感じで。私よりちょっと歳上ですが、元気もらいました。
鈴木 彼女、ギターじゃなくて、ベース・プレイヤーであることが、一つのポイントだと思うんですね。ベース、ブンブンやってますから。
荒木 そうですね。最初、アイドルぽかったんですが。
鈴木 途中から本格的ロックンロールをプレイしていきますけれどね。
荒木 女性ロッカーにも多大な影響を与えたというスージー・クワトロの作品でした。「スージーQ」、スージーの音楽史です。5月6日の公開です。
鈴木 そんなこんなで、スージー・クワトロの「キャン・ザ・キャン」をかけてお別れしたいと思います。荒木さん、ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。