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映 画
「フード・インク ポスト・コロナ」「NOハンブルクNOビートルズ」などのとっておき情報
(2024年12月16日10:00)
映画評論家・荒木久文氏が「フード・インク ポスト・コロナ」「NOハンブルクNOビートルズ」などのとっておき情報などを紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、12月2日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 先週、ミポリンが亡くなっちゃいましたね。
鈴木 びっくりしましたね。
荒木 ダイちゃんは、ぼぼ同世代ですよね?
鈴木 ほぼ同世代ですね。大学の時とかみんな夢中になってました。
荒木 彼女は、歌手であり俳優でもあってヒット曲もたくさんあるのですが、映画女優としての中山美穂さんの実績を語るとしたら、何といっても「Love Letter」です。岩井俊二監督作品で彼女の代表作になっていますよね。
逆に彼女の軽―い、初期の作品も捨てがたいんですよ。デビュー作の「ビーパップハイスクール」。
鈴木 そうでしたよね。
荒木 そして「波の数だけ抱きしめて」でも、キラキラしているミポリンがいました。私が一番印象に残っているのは、ちょっとシブい映画なんですけど1997年の「東京日和」と言う作品です。これは、写真家のアラーキーこと荒木経惟さんの妻の陽子さんを演じたんですよ。ある意味ミポリンというより中山美穂さんと言う感じの映画でとても印象的でした。機会があったら見ていただきたいんです。
昔、彼女が近所に住んでいたことがあって、何度かお見かけましたんですけどね。
プライベートの時には、完全にオーラを消している人でした。
鈴木 その辺をふらっと歩いてるような女性の雰囲気ですか。
荒木 はい。もっと活躍して欲しかったですけど残念ですね。
ご冥福をお祈りします。
今日はドキュメンタリー映画を1本。どういうわけか、今月公開がとても多いのが音楽映画なんですよ。
鈴木 そうなの?
荒木 12月だからっていうのもあるのか?1年の決算ということもあるんでしょうけど。
まずは、先週6日から公開中の「フード・インク ポスト・コロナ」という作品です。
インクと言うのは会社のこと。つまり作品名は「コロナ後の食品会社」とでも訳しましょうか。主に、お菓子や清涼飲料についての話をまとめたドキュメンタリー映画です。
この映画、実は続編なんです。前の作品が2009年制作タイトルは「フード・インク」っていう。覚えてないかな?
鈴木 あったっけ?2009年。
荒木 そんなに派手な映画じゃなかったんですが。アメリカの有名食品産業の裏側に隠された驚くべき実態を暴き出して、アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネートされた話題作でした。その時の内容は、ひと握りの大企業が大きな利益を得る一方で、下請けにあえぐ一般農家や畜産業の巨大化が進むことによっていろんな弊害をあぶり出していく…。見ていてショックを覚えたことを覚えています。
鈴木 コーヒー産業なんかもそういうことありますよね、裏側ってね。
荒木 そうですね、移民労働者の搾取の問題ね。今回の「フード・インク ポスト・コロナ」は、前作から10年余り経ちコロナの後、一体アメリカの食品業界の現状はどう変わったのか?という、ちょっと硬いドキュメンタリーです。
鈴木 面白そうですね。
荒木 面白かったです。結論から言うと巨大食品企業の市場独占がさらに進んで、問題がさらに深刻化したことが描かれています。
特徴的な事のひとつ目です。“超加工食品”って聞いたことありますか?
鈴木 あります。
荒木 主に工業的に加工された食品ですよね。ありていに言うとスナック菓子、冷凍食品、インスタント麺、清涼飲料水などですけど、これらは便利で手軽に食べられる反面、過剰な糖分や塩分や脂肪を含むことが多くて健康への影響が懸念されることもあるんですね。
鈴木 懸念されることもあるってことですね(笑)。
荒木 砂糖とか塩、保存料、着色料、加工の過程で食品の栄養価が低下することが多いといわれています。ダイちゃんももちろん、いろいろな食品、食生活も大変でしょうけどどうしてますか?
鈴木 去年から山梨で1人暮らししてるじゃないですか。で、東京の時は新宿に暮らしてたし、電車とか地下鉄とかバスとか駆使して動き回ってたので、どこのお店でも旨そうなところがあるとふらっと入れるじゃないですか。だから逆に外食ばっかりだったんだけど、山梨は夜になると寒いし暗くて。車しかないから、車で出た時に食材買ってきたりして、家で食べたりとかの方が多くなりましたね。
荒木 逆に健康的なのかもしれませんね。偏らないでね。
鈴木 もしかするとそうかもしれない。前よりはって感じかもしれない。
荒木 だから手軽に食べられる食品が、逆にもしかしたら多くなってるかもしれないですね。
鈴木 そうかもしれないです。
荒木 もうひとつの問題は、遺伝子組み換え食品というのがあるんですよ。
人工的に遺伝子を操作して作られた食品のことです。DNAの一部を変更したり、他の生物から遺伝子を導入したりすることで、例えば病害虫に強いとか、成長が早いとか、栄養価が高いなどの特性があります。2倍の速さで成長する魚とか普通の3倍もあるトマトとかありますよね。特に食糧不足の解決策としては注目されてるんですが、健康や環境への影響については賛否が分かれてるんです。
鈴木 まだわかんないでしょう。臨床試験を30年も40年もやってるわけじゃないし。
荒木 そうなんですよ。日本でもこういう食品は出回っているんですが、遺伝子組み換え食品ですよという表示義務は2001年から行われています。ところがアメリカでは、遺伝子組み換え食品の表示義務はなんと2年前の2022年から施行されたんです。
鈴木 このあいだじゃないですか。
荒木 そうなんです。アメリカの大企業がいかに効率を優先し消費者に事実を知らせたくないという事実が見えてきますね。アメリカの巨大食品企業は、大きな金額の広告費で常に宣伝していますよね。
鈴木 してますね。
荒木 基本は「EAT MORE」です。もっと喰え!もっと喰え!。もっと買って食えよ!ということですよね。
鈴木 スナック菓子好きだからねー、向こうは。
荒木 この映画では、誰でも知っている有名なファーストフードとか清涼飲料水メーカーの大企業の実名を明らかにしながら告発しているわけですね。
日本ではとっても出来ないですよね。
鈴木 あはははは。とっても出来ないですね(笑)。
荒木 出来ない出来ない(笑)。食品のみ語っている作品ではありません。
これだけ思い切った内容を上映するということは、本当にびっくりしてます。
何事も程度問題なんでね。毎日同じものを食っていればね…。
鈴木 だから過剰に物事をやっちゃダメなんですよ、何事もバランスですよ。
荒木 私はこの歳なんで食べないんですけど、たまーに食ったり飲んだりするとうまいんだよね。
鈴木 うまい!うまいよねー、わかる!うまいから仕様がないんだよね、これ。
荒木 そうなんですよ。ただね、子どもはそうはいかないからね。
それと安さばかり求めてきた私たちにも問題はありますよね。安いからという理由だけで健康的とは言えない食生活を続けることはどうかと思いますね。
鈴木 荒木さん、今、日本じゃ出来ない映画だよねって言ったじゃないですか。だけど、アメリカの映画は日本で公開は出来るんですもんね。
荒木 出来るんですよ。
鈴木 そこを規制しないんですもんね。
荒木 もちろんアメリカでも公開してますしね。
鈴木 そこですよ。自国で作らなきゃいいって感覚なのかな?不思議な感じもするけどね。
荒木 そうですね。恐れず作っているということでしょうね。
鈴木 他国のドキュメンタリーってことにしてるのかな?距離置けるもんね。
荒木 そういうことですよね。ただ、ドキュメンタリーを見る時には注意が必要ですよね。ドキュメンタリーとは「事実の客観的記録」では決してないということです。
映像は、撮る側の主観や作為から逃れることができないんですよ。ドキュメンタリーをすべて事実の記録とみなすのは大変危険なんで、常に批判的な疑いも持ちながら、映画の言っていることが全てと思わないで見ることが大切ですね。
鈴木 インターネットでSNSに対する感覚とちょっと似てます。
荒木 全く同じです。いい例えですね。だから、食や食べ物に関しても自分が責任を持って、自分の眼で判断して自分で管理していくってことが大切で、その為にはこういう映画を見て批判的にも取り入れたりして、勉強しなきゃいけないってことですよね。
公開中の「フード・インク ポスト・コロナ」というドキュメンタリー作品でした。
次は、続々と公開されている音楽映画の紹介です。12月だけで8、9本あります。
鈴木 そんなにあるの?!
荒木 そうなんですよ。まずはザ・ビートルズ。「NOハンブルクNOビートルズ」。ハンブルクなしではビートルズはないというね。
鈴木 歴史的にそうですもんね。
荒木 ザ・ビートルズはリバプール出身ですが、その活動初期は、ハンブルクで育てられたんですね。ジョン・レノンは、「僕らはリヴァプールで生まれハンブルクで育った」と語っていたほどですから。1960年のハンブルク初訪問から、66年の6回目の訪問を、元メンバーおよび関係者の証言やアーカイブで振り返っていくのがこの映画です。
鈴木 まさしくアーリー・ビートルズですね。
荒木 コアなビートルズファンには見逃せない作品です。
「NO ハンブルク NO ビートルズ」公開中です。
他にも、韓国の人気ボーイズグループ「NCT DREAM」のライブドキュメンタリーもありますし、日本のデビュー20周年を迎えたシンガーソングライターのJUJUさんのコンサートもやってます。
映画館のいい音楽環境で堪能することも出来ます。
最後、こちらは配信なんですけど、エルトン・ジョンです。
鈴木 なに?ドキュメンタリー?ライブなの?
荒木 「エルトン・ジョン Never Too Late」という、エルトン・ジョンの人生とキャリアを振り返るドキュメンタリーです。もうライブツアーはやらないということで、2003年に終えて。実質上の引退と言う事なんですが、その辺りを含めて、自分の50年に渡る音楽キャリアを語ってます。人生を語るということで、ひと区切りということで、エルトン・ジョンの物語を、自身の口で明らかにするという。「エルトン・ジョン:Never Too Late」。Disney+で12月13日から配信ですので、こちらもご覧いただきたいと思います。音楽映画たくさんあるんで、来週もご紹介したいと思います。
鈴木 ありがとうございます。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。