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映 画
「型破りな教室」、「中島みゆきコンサート『歌会VOL.1』劇場版」などのとっておき情報
(2024年12月23日10:30)
映画評論家・荒木久文氏が「型破りな教室」「中島みゆきコンサート『歌会VOL.1』劇場版」などのとっておき情報などを紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、12月16日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 今日ご紹介する映画は「型破りな教室」。12月20日公開の作品です。
メキシコの映画です。 教室っていうとおり先生モノですね。
今から13年ほど前、メキシコの実話を基に映画化したドラマです。
舞台はメキシコとアメリカの国境近くのとても治安の悪いところにあるマタモロスというところの小学校が舞台です。この辺はアメリカとの国境もあるので、麻薬だとか殺人だとか犯罪が日常化しているところなんです。
鈴木 刑事ドラマにもよく出てきますよね。
荒木 そうそう。子供たちも常に犯罪と隣り合わせの環境で学校もボロボロ。先生も意欲のないひとばかりで、学力が国内最底辺の小学校なんです。
鈴木 そうなりそうだなあ。
荒木 メキシコでも日本と同じ全生徒が受験する、いわば全国共通テストがあるのですが…。
鈴木 メキシコにもあるんですか。
荒木 あるみたいですね。この成績も全国最下位で6年生の半分以上は卒業が危ぶまれているという小学校なんです。そんな小学校にフアレスという先生が赴任してくるとこから物語は始まります。
鈴木 フアレスさんは男性ですか?
荒木 男性です。この地域の出身です。よくあるパターンですがこの先生、普通の授業はしないんですよ。鉛筆とノートの授業ではなく屋外の公園とかプールで、生徒の実生活や日常に落とし込んだ話を含む、いろいろな身近なものをテーマにしながら授業を進めるんです。
当然、最初子供たちは怪しげな顔しますよね。子供たちにいろんな疑問が生まれていくように導くんです。例えば、なんで船は沈んだり浮いたりするんだろう?とかわからないことって、どうやって調べたらいいんだろう?とかね。
先生は本当に何も教えないんです。「自分たちで考えろ。間違っても挑戦するのが大事だ!」と話し続けていきます。基本は「教えない」ことなんです。そんな授業を受けてから少しずつですが、子供たちは生きていくうちに出くわす疑問に対して意欲的になってきます。自然に勉強するようになるんです。その結果、クラス全体の成績が上がって、そのうち10人はなんと共通テストで全国上位の0.1%のトップクラスに食い込んでいくという…。
鈴木 凄い飛躍すぎじゃないですか!
荒木 ちょっとでき過ぎなんですけど(笑)。だけど、ここは最悪クラスの犯罪地域なんです。こうやって勉強するようになった子どもたちにも、犯罪や暴力が襲うというね。そういう話です。
『ごくせん』とか『GTO』みたいな型破り気味な先生に、『ドラゴン桜』の要素を足したみたいな、そんな感じなんですけど。映画の中で子供たちが理解できた時の眼差しが本当にキラキラしてくるんです。どこから自分を撮っているかわからないように、生徒を撮ってるらしいです。自然です。メキシコで大ヒットしたんですが、私の知り合いでこの映画を見た人がこういう先生に出会ってたら勉強好きになってたなあ・・って。
鈴木 本当に出会いですよね、学生の頃のね。
荒木 ダイちゃんには人生の中の先生で恩師という先生がいらっしゃいますか?
鈴木 ふたりいるんだけどね、英語の先生と理科の先生だったんだけど。
残念ながら、僕、理系が苦手で理科とか全然好きじゃなかったんだけど、理科の先生がしげた先生って「しげじい」ってあだ名で。いつも白いコーディロイのパンツ穿いてて、いつもあそこが左側に寄ってるってみんなに言われて、恥ずかしがってんのにその白ばっか穿いてくるっていう変な先生で、いい先生でした。
その先生もあんまり真面目に授業をやらなくて、我々と話をするんですよ。興味を持たせるんですよ。虫に興味を持たせるとか光に興味を持たせるとか。そういう理科の先生。
荒木 なるほどね。
鈴木 もうひとりは、いさか先生って言う英語の女性の先生なんだけど、凄い綺麗な先生で、それで英語が好きでやってたらね、先生に1回僕褒められて「ダイちゃんはリズム感があるから。英語って言うのはリズム感で喋るところがあるから、ダイちゃん君は向いているんだよ」って言われてすごいやる気になってやったんですよ。
荒木 だから今も英語好きなんだね。
鈴木 そういうひとことっていうのは、人生変えますよね。
荒木 本当にそうですね。でもね、そういういい先生に出会えるチャンスってなかなかないけど、ダイちゃんラッキーですよ。
鈴木 ラッキーでしたよ。
荒木 昔は、昔と言っても私たちの若い頃は「でもしか先生」みたいな教師になるしかない、ちょっと無気力な先生が多かったんですが、今はほんとに教師のなり手っていないようですね。
鈴木 なんか大変そうだもん、今。
荒木 かつては私も教師志望で教育実習やって教育免許持っています。
鈴木 えっ!?ちょと!荒木さんの過去さ、驚くことが話す度に出て来る。
マジですか?
荒木 マジマジ。高校の先生になれます。教育採用試験も受ける寸前までいきましたけどね。私の親父も高校教師だったんですよ。
鈴木 ちょっと!何なのいまさら。
荒木 うちのオヤジ、成績が芳しくなくて進級できないような生徒を自宅に連れて来て泊り込ませて勉強させてました。お正月明けとかね。
うちの親父も「能力のある子どもを伸ばせないのは教師の責任だ」って常に言ってました。
鈴木 それは一理、絶対あると思う。
荒木 教師の情熱が子どもを育てるのは今も昔も変わらないと思いますけど。
鈴木 いい話してるなあ。今回のこのコーナー。
荒木 凄いねー。この映画は、子どもにとって次元が違う過酷な環境ですけど、よく考えてみれば昔は 日本では貧しい家でも勉強してちゃんと立派に進学してる子もいたし、今は親ガチャとか言って最初からあきらめる子もいるけど、そういう子こそ見て欲しいと思います。
鈴木 子どもに可能性をいくつも与えるのは、親や環境ですからね。
荒木 勉強って本当に楽しいんだけどね。学びが楽しいものだってわかるのは、大人になってからですよ。
鈴木 知ることは楽しいんですよ。
荒木 そういう先生に早く出会ってたらね。先生によっては教科が嫌いになっちゃうこともあるからね。
鈴木 そう!凄いわかる!いましたよ、俺、そういう先生。あいつのせいで、俺赤点になったとか言って、それ先生のせいにしたもん。
荒木 本当はいけないことだけどね。
鈴木 そう、いけないことだけどね。
荒木 まあ、メキシコのこの例を言ったら、私たちはいい環境の中で勉強してましたよ。もっと子どもたちばかりでなくそれに身を捧げている先生にもね。国家の基礎ですからね、教育は。頑張って欲しいですね。
鈴木 荒木さん、今日、すごいいい調子だね。
荒木 たまにいい事言う?(笑)。ありがとうございます。
ご紹介したのは、12月20日から公開の『型破りな教室』という作品でした。
次は、先週もお伝えした12月の音楽映画特集。今日はその2です。
今日は日本を代表する女性シンガーお2人。おひとり目はこの人です。
~♫~ (地上の星)
鈴木 みゆきさんじゃないですか。これは誰が聴いても「中島みゆき~!」って言いますよ。
荒木 映画のタイトルが「中島みゆきコンサート『歌会VOL.1』劇場版」です。12月27日から公開なんですけど、この映画、中島みゆきさんの東京国際フォーラムと大阪フェスティバルホールの2会場、計16公演を収録したものを劇場上映するものです。
鈴木 つまり、いろんなライブが混じってるってこと?
荒木 はい。2020年に開催されたもののコロナで中止になって以来4年ぶりのコンサートです。この「歌会VOL.1」では今聞いていただいている「地上の星」はじめ、「銀の龍の背に乗って」、「慕情」など全19曲を披露しています。
鈴木 重厚な曲ばっかりですね。
荒木 そうですね。とにかく迫力が凄いです。5.1chのサラウンド。みゆきさんの半端ない歌唱力は身が震えますよ。
映画のキャッチコピーが、「私たちが生きるこの時代には、中島みゆきの歌がある」という。見終わると、本当にそう思えますよ。
鈴木 そう言われると確かにそうだなって気がするんだよね。
荒木 「中島みゆきコンサート『歌会VOL.1』劇場版」。12月27日から公開です。
鈴木 VOL.1っていうと、2とか3とかいくのかな?
荒木 なんだろうね。「夜会」ってのを昔やってたね。あれも随分見ましたけど・・・。
ということで「中島みゆき」と出たら、日本を代表する2人の女性シンガーもう1人は…。
鈴木 そしたら、竹内まりやさんかユーミンか、どっちかですよ。
荒木 世代的には、ユーミンですね。
「松任谷由実 THE JOURNEY 50TH ANNIVERSARY コンサートツアー movie ~5.1ch/4K~」という。
鈴木 長い長い!長いタイトル。
荒木 ユーミンのデビュー50周年記念の模様を収録した映像作品です。現在公開中なんですが、新宿と名古屋と大阪でしかやってないんですよ。
鈴木 じゃあ、新宿に行って見るしかないですね。
荒木 ま、名古屋行っていいですけどね。この作品は、去年の5月から12月末迄、デビュー50周年を記念したユーミンのコンサートツアー全54公演やった中から。
実は5月にブルーレイ&DVDで発売されているんですね。
鈴木 同じもの?
荒木 同じもの。それを劇場上映用に音を変え5.1chサラウンドサウンドに新たにリミックス。映像も4Kにしてるんです。
鈴木 じゃあ、劇場で見たほうがいいな。
荒木 そうなんですよ。だから、内容は映像作品パッケージと同じものなんですけど、迫力が全然違います。
鈴木 でしょうねぇ。
荒木 ホントにそう。先日、13日の新宿での上映にはユーミン自身がサプライズ登場して観客の皆さんびっくりしたり喜んだりでした。この人そういうの好きだから。
鈴木 出るの好きなんだね。
荒木 うん。ユーミンは「この映画に没入して楽しんでください。
私もみんなと一緒にと思って実は全編は見ていなかったんですよ。」と言って、客席から鑑賞したそうですよ。
鈴木 本人は全部最終まで見てないんだね。
荒木 余計な話になりますが、ユーミンと言えば1980年というから今から45年近く昔ですが、あの名アルバム「サーフ&スノウ」を発売した年ですよ。
鈴木 懐かしいなあ!聞いたな。
荒木 前にもお話したことあると思いますが、ダイちゃんもしゃべっていたあのラジオ局で私は、ユーミンの「サーフ&スノウ」という15分の月金ベルト番組を1年間ほど作っていたんです。
鈴木 うわっ!知らないよう、そんなの!
荒木 話したことなかったっけ?
鈴木 荒木さん、やめて!喋るたんびに小出しにしてくるの。
荒木 この番組の構成作家はこの間亡くなった直木賞作家の伊集院静さん。
パーソナリティがユーミンでディレクターが1年生の私だったんです。
鈴木 すげー!トリオ!あはははは。ザ・ラジオって感じで凄いね!
荒木 凄いよ!格差も。何と言うかいろいろ凄いね!勉強になったよ。
鈴木 そりゃそうだろうねぇ。
荒木 私の長―いラジオマン人生の一番印象に残る番組です。
鈴木 それって、幸せな事じゃないですか。
荒木 当時、ユーミンはまだフリートークが苦手で伊集院さんの原稿をほぼほぼ読んでたんですね。美味しいコーヒーとかみかんとかよくくれましたけど。
年が下なのに収入が上だからね。
鈴木 あはははは。みかんくれたか、いいなあ(笑)。
荒木 もっといいものをくれろってことですよね。あの当時、僕がユーミンの番組やってるって言うと、大学生の女の子たちが見学させてくれーって言って来てね、スタジオは見学者で溢れてて、ユーミンに「荒木君、私はあなたの釣りの餌じゃないのよ」って言われてました。
鈴木 なんか、いろんな事が裏ではあったんだろうなって気がする。
荒木 イヤ!ないですよ!懐かしいですね。ほら、当時電話のリクエスト受けで来てる子たちがいるでしょう。当時女子大生で。今日 ユーミンの収録があるらしいわよって、私のところに寄って来て「荒木さん見せてください」って。もっと上手く活用すりゃよかったよね。
鈴木 なんか いにしえのいい時代の凄い熱気のあるラジオですよね。
荒木 本当にいい時代。今はアウトですよね。
鈴木 いやアウトでしょうそれは。
荒木 ユーミンも気さくですから、歓迎してくれてサインあげるわよって言ってくれてましたけどね。
鈴木 凄い時代だなあ。
荒木 ごめんね、変な事ばかりしゃべって。ということで、ユーミンの「サーフ&スノウ」の中から、この季節といえばあの名曲。今はもうあの曲しかないでしょう。ダイちゃんからお願いします。
鈴木 あの曲しかないって言って、あの曲がかかるって、この流れがいいですね。荒木さん、小出しにするシークレットエピソードを今度ゆっくりしゃべりましょうよ。
荒木 もう何もないんです、薄っぺらな人間ですから。
鈴木 なにもないって言いながら20年くらい経ってますから。荒木さん、ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。