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映 画

「みんな笑え」「野生の島のロズ」「知らないカノジョ」などのとっておき情報
(2025年2月15日10:45)
映画評論家・荒木久文氏が、「みんな笑え」「野生の島のロズ」「知らないカノジョ」などとっておき情を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、2月10日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 人やモノを表す時、キャッチコピーを使うことありますよね。
ダイちゃんはどんなキャッチコピー使っていましたかね?
鈴木 昔、「今日もダイは元気です」って言うフレーズはよく言っていちごて、皆さんからも頂いてたんだけど、それがここのところ、コロナになったり、手足口病になったりインフルになったりで自分自身、今日も元気ですってどうなんだろうなあって。
?マークがついてる今日この頃ですよ。あはははは。
荒木 ダイちゃんにもキャッチコピーがあるように、映画にもキャッチコピーってついてますよね。
鈴木 なるほど。
荒木 怖い映画は「決してひとりで見ないでください」とかね・・・。
鈴木 だから、ひとりで見ちゃうんですよ。
荒木 今回はご紹介するそれぞれの作品の「キャッチコピー」にもこだわって、紹介してみようかと思っています。
鈴木 それは楽しいですね。

荒木 まず、先週末公開の私からのお勧め作品2本のうちの1本目です。
「みんな笑え」というタイトル。
キャッチコピーは “しょうもない 俺 それが落語だ!”。
このことばだけで内容わかっちゃいますが、落語家さんが主人公です。
うだつのあがらない落ちぶれた50過ぎの落語家のほろ苦い生きざまを描いたドラマです。ダイちゃん、落語は聞くことありますか?
鈴木 もちろん!好きですよ。
荒木 好きな落語家さんはいますか?
鈴木 そういうのはないんだけど新宿に住んでる時に、近くに末廣亭、 あそこへ飯食ったあと寄って。いろいろと喋りの勉強にもなるでしょ。
荒木 そうなんですよね。
鈴木 間が!絶妙だなってのありますから。
荒木 落語をテーマにした映画って今までも沢山あって、ここのところちょっとなかったかな?今日ご紹介する「みんな笑え」は小っちゃくって、予算もそんなにかかってないんですけど、言い方悪いですけど「拾い物」だと思いました。
鈴木 ええっー!
荒木 面白いよ!ストーリーです。落語家の太紋さん。独身で50歳になっても人気も人望も野心も、もちろん金もなく恋人もいません。
世間から見ればもうみじめーな落ちぶれた落語家です。たまに高座にあがっても、熱のない噺で客からもあきれられる有様です。この落語家の師匠は父親なんですけど認知症で落語家を引退し、家に帰ればその父を介護する毎日を送っています。
そんなある日、太紋は売れない若手漫才師・希子さんという女性と出会います。
彼女との出会いから太紋は自分の人生を見つめ直していくことになるということなんですよ。ひとつの再生物語なんですけど。主演の大紋役はプロの落語家さんじゃなくて、野辺富三さんという舞台系の役者さんです。この人、蜷川幸雄演出の舞台などで活躍した個性派俳優でほんとの唯のおっさんと言うか、ただのおっさんじゃないな・・・一回見たら忘れられないインパクトがあります。
鈴木 それは、舞台俳優としてはいいですね。
荒木 そうなんです。巨漢の丸坊主なんです。例えるなら、プロレスのキラーカーンです。
鈴木 ふは(笑)、その例えが受けるよ(笑)。
荒木 若い人は知らないよね。シュレックみたいな、お笑い芸人のクッキーさんているでしょ、あれをちょっと優しくしたような。ネット見りゃ顔わかりますよね。
野辺富三さんです。この人、初めての映画主演らしいんですけど素晴らしいんですよ。
まず、存在感が半端ない。映っているだけで画面を制覇しちゃいます。さすがに蜷川さんに鍛えられたんだと思うんですけど、癖が強いんで他の俳優と組み合わせるにはバランスとれないかもしれないという心配はあるんですけど。
鈴木 1人で、5人分くらいのキャラなんじゃないの?
荒木 そう、演技力が凄くて、前半の自信を喪失している時の演技と、後半の素晴らしい落語、「抜け雀」という噺をやるんですけど、噺を聞かせる活気に満ち溢れた演技は目を見張るものがあります。そして、これは父と子をテーマにした作品でもあります。認知症で引退した落語家の父役は渡辺哲さんが演ってるんですが、こちらも素晴らしいですよ。監督は鈴木太一さんという方ですが、この監督の次回作も期待です
。これは、最近見た小ちゃい映画の中でも、凄くいい出来でした。
鈴木 荒木さん、お墨つきですね。
荒木 はい。「みんな笑え」というキャッチコピーは、“しょうもない 俺 それが落語だ!” という、現在公開中です。見られる方は是非。
鈴木 笑いの極みは、涙だからね、基本。

荒木 そうですね。泣けます、笑えますとういう事で・・。
次はこれも先週の公開作品ですが、注目作品のひとつです。
キャッチコピーは、“プログラムを越えて生きる”という「野生の島のロズ」というタイトルの、心というものに目覚めてゆくロボットを描く感動アニメーションです。
時は未来です。嵐で大きな箱が無人島に流れ着きます。中に入っていたのは人間をサポートする、通称ロズと呼ばれる最新型アシストロボットです。偶然にも起動ボタンを押されて、目を覚まします。周りには人間はいなくて野生動物ばかりです。彼らに話しかけるんですが当然無視されます。都市生活に合わせてプログラミングされているので野生の島では全く機能しないのですが、動物たちを見ながら言葉を学習します。未知の世界に順応していきます。そんなある日、雁の卵を見つけて孵化させたロズは、ひな鳥から「ママ」と呼ばれたことで、思いもよらなかった変化の兆しが現れはじめるんです。
鈴木 めちゃ面白いな!
荒木 ひな鳥に「キラリ」と名付けたロズは、他の動物たちにサポートしてもらいながら、キラリが「渡り鳥」として飛んだり泳いだりできるよう一生懸命に育てていきます。雁ですから渡り鳥ですね。鳥って生まれて初めに見たものが母親だと認識しますよね。
鈴木 よく言うよね。キラリはいずれいなくなっちゃうじゃん。
荒木 そういうことですよね。島の動物たちと共に生きるうちにロズの中に…、本来プログラムされていない「ココロ」のなかに優しさとか愛情が生まれてきます。
鈴木 ターミネーターのシュワちゃんみたいだね。
荒木 そうそう。そんな時にロズと島の動物たちを引き離すような事態が迫って来るというね。王道ですよね、ロボットと心の問題。この作品を作っているのはシュレックなどを作っている有名な「ドリームワークス」です。この作品は、ドリームワークス史上、最大最高傑作と言われているんです。
鈴木 えっ!マジ!?そんな?
荒木 マジ。ゴールデングローブ賞や他も非常に評価が高いんです。
3月に行なわれるアカデミー賞では、長編アニメーション賞の他作曲賞、音響賞の3部門にノミネートされています。
鈴木 獲得しそうなんですか?
荒木 獲得すると思います。長編アニメーション賞では大本命だと思います。言っちゃっていいのかな…。
鈴木 えー!?
荒木 かなり良く出来てます。ダイちゃんはあまりアニメ見ないと思いますけど、これ見といた方がいいですね。
鈴木 あら!あららららーっ。
荒木 はい。児童文学の原作なんですけど映画ではもちろんディズニーとか、ジブリからも影響受けてる感じですね。日本語吹き替え版はロズ役を綾瀬はるかさんがやってます。
鈴木 こういうのって、字幕と吹替え、どっち見たほうかいいんですかね?
荒木 わたしは、圧倒的に日本語を見たほうがいいと思う。字幕を読む時間がもったいないよね。声の感じって当然あるんですけど、絵を前にするんであれば、日本語版で耳から入ってきて眼は映像を追うって方がいいと思います。
鈴木 わかった!なるほど、そうするわ。
荒木 ちょっとニュアンスが違う所はあるんですが、それは仕様がないですよね。絵の方を優先する方がいいと思います。
鈴木 最初にオリジナルの音聞かないんだから関係ないよね。だって比較するわけじゃないからね。
荒木 ああ、そういう事ですね。キャッチコピーが“プログラムを越えて生きる”。「野生の島のロズ」公開中です。
ところで毎年歳の初めに、今年の注目映画紹介してまして、外国映画は紹介したんですが、日本映画はまだ紹介してなかったですね。
鈴木 邦画は確かにやってないね。
荒木 ちょっと遅くなったんですけど、今日は2025年前半公開の映画の中から注目作品を紹介しましょう。
鈴木 お願いします。

荒木 キャッチコピーは“運命なんて、変えてやる”です。
「知らないカノジョ」という今月末の公開です。
ストーリーです。大学時代に互いに一目ぼれして結婚したリク君とミナミちゃん。
8年後、小説家を目指していたリク君は歌手の夢を諦めたミナミちゃんに支えられ、ベストセラー作家となります。ところがある朝目覚めると、世界が変わっていました。
人気作家だったはずのリク君は、出版社の一編集部員になっていました。
替わりに天才歌手として自分とは知りあってすらいないミナミちゃんの曲が大ヒットして街に溢れているんです。リク君は戸惑いながら人生の全てを取り戻すべく駆け回ります。・・・なんというかファンタジックラブストーリーですね。
主演は中島健人君。ミナミ役には映画初出演となるシンガーソングライターのmiletさん。元になった映画があります。「ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから」というのがそれで、3、4年前の作品でしたかね。監督は恋愛映画の名手と言われる三木孝浩さんです。
鈴木 リメイクなんですか?
荒木 リメイクです。僕も見てないんで感想が言えないんですけど、面白そうな設定のタイトルです。
鈴木 リク君、ミナミちゃん、どうなるんだろ?
荒木 そうねぇ。キャッチコピーは“運命なんて、書き換えてやる”っていうんだから、書き換えが成功するかどうかですよね。
鈴木 結果がわかんないよね(笑)。
荒木 「知らないカノジョ」、2月28日の公開です。
3月に入ると3月7日公開、キャッチコピーは、“その手紙は、精一杯の愛でした”という、タイトルが「35年目のラブレター」。
読み書きできない夫が、幸せを教えてくれた妻にラブレターを書くために文字の勉強に奮闘するという実話に基づくヒューマンドラマです。
鈴木 わかったぁ。最近、記事読んだわ。
荒木 これ、ホントに記事になっているんだってね!?
鈴木 ホントで、しかも結構な話題になって記事出ていますね。
荒木 20年ほど前に、新聞で紹介され創作落語にもなったらしいんですよ。
65歳の保さん。戦時中に生まれしかもて貧しい家に生まれ、教育をうけることが出来なかったんですね。文字の読み書きが出来ないまま大人になりました。昔は結構いたんですね、こういう人。当然、彼は生きづらい日々を過ごしてきたのですが、ある女性と運命的な出会いをし結婚します。だけど、読み書きできないことを隠していたんです。しかし、こんなこと長く隠し通せる訳がありません。半年後くらいについに事実がわかり、別れを覚悟したんです。でも妻は「今日から私があなたの手になる」と言ってくれます。
鈴木 いいなあ、いい話じゃないですか。
荒木 彼は定年退職を機にある決心をするという…。どんな決心かは大体容易に見当がつくんですけど。笑福亭鶴瓶さんと原田知世さん。
鈴木 ああ!なるほど。いいいねぇ。
荒木 この夫婦役です。原田知世さん久しぶりです。予定調和というかキャッチコピーとか話しちゃうとわかっちゃうと思うんですけど、それでわかってもいい話じゃないかと思っています。
“その手紙は、精一杯の愛でした”というキャッチコピー、「35年目のラブレター」3月5日公開です。
鈴木 荒木さんの説明を聞いてるだけで、泣きそうになる。いい話ですよね。
荒木 まだあるんですが、またの機会にご紹介します。
鈴木 荒木さん、ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。