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映 画

「もっと超越した所へ。」「裸のムラ」のとっておき情報
(2022年10月13日10:45)
映画評論家・荒木久文氏が「もっと超越した所へ。」「裸のムラ」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、10月10日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 よろしくお願いします。
荒木 ひと昔前に、「ダメンズウォーカー」という漫画がありましたね。
鈴木 ありましたねー。
荒木 倉田真由美さんの漫画で「ダメな男」ばかりにつかまっちゃう女の子を描いた作品だったんですけど、今はダメンズと表現するのではなく、ズバリ「ダメオ」とか「ダメ男(おとこ)」というらしいのですね。基本的には、女にたかる、ひも体質の男を指すんでしょうかね。ダイちゃんの回りにいますか?
鈴木 いますねって、自分はどうなんだろうなって考えちゃう。
荒木 そうですよねー。今日はまず、そんなダメ男の「沼」にはまってしまった女達を描いた恋愛物語の映画です。
鈴木 うーわぁー。
荒木 10月14日から公開の「もっと超越した所へ。」という作品です。
ストーリーですが、4人のダメ男にかかわってしまうそれぞれ4人の女の子、つまり4組のカップルを描いています。
まず一組目、前田敦子さんが演じるデザイナーの真知子さん。彼女はかわいい男の子が大好きで、いわゆるメンヘラ気質の女子です。あることをきっかけに、セクシーゾーンの菊池風磨さん演じるバンドマン志望のヒモ男と付き合うことになります。
もう一組は、元子役のバラエティタレント役の趣里さん。彼女は千葉雄大さん演じる、あざとく可愛い男子と付き合っています。
3組目は、伊藤万理華さん演じる金髪ギャルです。彼女は、テンションばかり高いフリーター男と同棲しています。
最後4組目は、風俗嬢を演じるのは黒川芽以さん。彼女はプライドばかりが異常に高い役者と付き合っているんですね。それぞれどうにもならない恋愛を続けています。しかしダメ男たちの行動に我慢が出来なくなった、それぞれの女性たちの不満が爆発して、ついに別れの時…ということになるんですが。
鈴木 …が!
荒木 まあ、とにかく出てくる男たちのダメさ加減が凄いんです。
まー、仕事はしないのに上から目線で、金をせびるテクニックだけは超一流なんですけど、口先だけで何もしない…ね。共通なのは自信過剰で承認欲求の塊という…。
鈴木 あららららら…。
荒木 とにかく女を金を引っ張る対象か、セックスの道具としか見ていないんですね。
鈴木 なるほど。
荒木 この映画を見た女の子に感想を聞いたんですよね。そしたらめちゃくちゃに面白くて、女子会の前に見たらしいんですよ。
鈴木 これ、盛り上がる女子会になるね。
荒木 そしたらね、2時間予定だった女子会が、徹夜コースになったそうです。
自分自身が経験したことはないのに、その役者さんの演技力とか、会話の面白さで、もう自分が全部経験したことのように思えるんですって。
鈴木 あはは…。
荒木 で、くず男全員が私のカレみたいになってるって言ってました。
鈴木 あららららら!
荒木 確かによくできたコメディですね、これ。色々なタイプの男女の恋愛のあるあるが的確に表現されているんですけど、原作は、根本宗子さんという人気の劇作家です。岸田國士戯曲賞の最終候補に4回も選出されるなど、今一番注目の演劇人みたいです。
で、彼女が映画脚本化したものなんです。4組の男女の物語なのですが、実は、まったくそれぞれが独立してしまっているわけではなく、それぞれが過去に繋がっていたことなどが後でわかってくるんですね。映画としても面白いですね。 まー、出てくる男出てくる男、確かに酷いくず男ばっかりなんです。
でもね、よく考えて見るとクズ男を引き付けてしまう女の要素っていう、女の人の側にも問題があるんじゃないかなと思いますね。
鈴木 それ、どっちもどっちじゃないですか?こういうのってのは。
荒木 そうなんですよね。私なんかの目から見るとですね、男をダメ男ってのはですね、明らかにやっぱり性格が良くない!でも、もてるっていう実質はあるんですよ。
鈴木 一番ムカつくパターンですよね!
荒木 そう。ホント、男にとってはムカつくんですよ。はっきりいって女性の敵ともいえるのに、なぜかダメンズに惹かれてく女がいますよね。
鈴木 中には、とてつもなくルックスが素敵な方がいたりしてね。
荒木 そうなんですよー。
鈴木 なんですかね、あれは。
荒木 私も、何回そんな思いをしたことか!!あいつ、ダメ、やめろって言ってるのに 行っちゃうんだよね…。
鈴木 やめろって言うから行っちゃんだってー。
荒木 そっかー。
鈴木 行け!行け!って言わないと。そういう時は。
荒木 行っちゃうよね。ま、中島みゆきの名曲で、「空と君のあいだに」じゃないけど、なぜあんな男に女はついてゆくのか?って思いを何回もしましたよね。
鈴木 ホントだぁ…。
荒木 ホント。ラジオお聞きの女性の方は、どうなんですかね?母性本能が強くてとか、色々あるらしいですけど、ちょっと調べてみた…。ダイちゃんにも送ってありますけど。
鈴木 これか、これか!
荒木 ダメ男に沼る女の条件ってあるでしょう?
鈴木 ちょっと言うよ。
①母性本能が強く何かと男性に尽くしやすい
②ダメな部分より良い部分を重視して人を見てしまう
③押しに弱い、求められると断れない
④(一人でいることが苦手で)恋人ができると依存しやすい
⑤素直な性格
⑥自分に自信がなく、誰かに必要と思われたい承認欲求が高い
⑦恋愛経験が少なく、自分から振ったりするのができない
⑧経済的に余裕がある女性
⑨責任感が強い
⑩外見重視だ(というより外見しか見てない)
荒木 こういう人が居るんだよね。多分ね、5つ以上あったら、完全にダメ男に沼る女の条件に当てはまっちゃうんだよね。
鈴木 もう決めつけていいと(笑)。
荒木 はい。ラジオをお聴きの女性の方々、どうですかねー?
鈴木 たくさんいるよ!俺、何人かリスナーさん知ってる。
荒木 そうですかー。逆にね、男のダメオの基準というのもありますよ。
鈴木 10個あるから、いい?ちょっと聞いて。
①金遣いが荒い
②浮気症
③無気力
④モラハラやDV傾向
⑤口だけ
⑥酒グセが悪い
⑦自分を過大評価・自己肯定感が強い
⑧責任感が弱い
⑨女性に甘えるのが上手
⑩マメでイケメン
荒木 どうですか?ダイちゃんはいくつ当てはまりますか?
鈴木 ほとんど当てはまる。
荒木 そうだね、俺、⑩のマメでイケメンだけ当てはまんないけど。
鈴木 え?他全部、荒木さん当てはまるの?
荒木 そうだなぁ、モラハラやDV傾向は無いけど、モラハラだって言われることは多いね。
鈴木 (笑)。荒木さんて無気力じゃないじゃん、別に。
荒木 無気力じゃないと思うんだけど、責任感も弱くは無いと思うんだけど…。
鈴木 いやいや、強い、強い!
荒木 あとはあるね、口だけ、酒グセが悪い、金遣いが荒い。
鈴木 私と荒木さん。荒木さんを知って十数年だけど、女性に甘えるのが上手って、これは我々にはあるね。
荒木 あるね!
鈴木 我々、甘えるの上手いもんね。女性にね。
荒木 ダイちゃん、いくつぐらい〇あるの?これ?
鈴木 生放送に数えること?1,2,3…4つ、半分くらいだねー。
荒木 ウソ?もっとあるでしょう?
鈴木 俺イケメンじゃないけど、マメだよ俺は。
荒木 なんかね、ダメオの基準も、我々よく当てはまるし…。私はダメ男じゃないと思ってたんですけど、こうやって見ると…ね!
鈴木 荒木さん、前向きな、素敵なダメ男!
荒木 あー、ありがとうございます。という事で、ダメ男同氏のおしゃべりでした!
鈴木 な?何?この回はこんなトークなの?ダメ男の分別して、映画観てね、というコーナーですよ!!
荒木 そうだよね、そうだったよね。10月14日から公開の『もっと超越した所へ』でした。これ面白いですから、是非観てください。
鈴木 (笑)。
荒木 主題歌は、後でかけてもらうと思うけど、aikoさんが歌ってますんでね。
鈴木 いかにも祝日らしいトークになってしまいました。
荒木 そうですね。すいません。それでは続いて、「裸のムラ」というタイトルの作品です。

鈴木 裸のムラ?(笑)。
荒木 ちょっとエロい映画だと思ったでしょう? それとも、ジャングルの奥地の住民の話と思いましたか?
鈴木 おおー、いいですねー。
荒木 (笑)。どちらも違いますね。
鈴木 なんだよー。
荒木 石川県を舞台にしたドキュメンタリーなんです。
鈴木 へー。
荒木 これテレビ局が制作したドキュメンタリー映画なんですよ。
実は、最近テレビ局制作のドキュメンタリー映画って目立つんです。一番有名なのは、最近では、東海テレビの「さよならテレビ」という作品。この作品はテレビ局員の間で話題になりましたよね。で、5年ほど前、富山チューリップテレビという、富山の局が作ったドキュメンタリー番組『はりぼて 腐敗議会と記者たちの攻防』という、富山市議会の議員の政務活動費の不正使用問題を追ったものでしたが、これがすごく面白かったです。
いろいろな賞を受賞してるんで。作ったのは、五百旗頭 幸男さんというキャスターでディレクターさんなんです。
鈴木 へー。
荒木 富山のテレビ局を辞めることになって、この五百旗頭さんが、お隣の石川県の石川テレビに移籍して作ったのが、この「裸のムラ」という作品で 柱が3つあるんです、この作品。ひとつは石川県の前の知事谷本正憲さんを中心に描いているんですが、この谷本知事は、30年近く知事を務め人で、とても失言と不祥事の多かった人なんです。
鈴木 なんだかなー。
荒木 で、あそこは保守王国で長期間権力を掌握した政治家ですから、言いたい放題なんですね。
鈴木 なるほど、なるほど。
荒木 いわば、裸の王様。特に、コロナ禍で失言や失態を繰り返して、その結果知事を辞めることになるっていうか、選挙に出ないことになるんですけど。ま、その辺が描かれています。ちょっと滑稽なおっさんで本人は全く気が付いていないという、県民には悲劇ですけど。
鈴木 そりゃそうでしょう。
荒木 他の柱は、金沢で暮らすイスラム教徒の日本人とかですね、車、バンで暮らす、いわゆる「バンライファー」を描いているんですけど、ちょっと一風変わったドキュメンタリーです。いわゆる村社会の忖度の多さや、逆に無さを描いてますね。
映画では一般的に大きな視野でのドキュメンタリーがありますよね?
鈴木 はいはい。
荒木 この番組でも、アーティストのドキュメンタリーとか、素晴らしいもの多いんですけど。
鈴木 うんうん。
荒木 もっと狭い地域でね、つまり生活レベルでの視点で見たドキュメンタリーってのは、これ、大きな映画じゃ無くて、地方のテレビ局ってのは、役割として重要だと思います。
鈴木 ありですよね、充分。
荒木 そう!ありなんですよ。そういうことの方が、存在価値としても重要
だと思いますね。
鈴木 なるほど、なるほど。
荒木 そんなことを感じた作品でしたよ。テレビ局の存在意義を映画で示してくれた貴重な作品だと思いましたね。
鈴木 結構、告発的な感覚なんですか?
荒木 あのね、自然に撮ってますね。だけど結果的にそれが、このおっちゃんの凄いところっていうか、変なところを醸し出すっていうね…。テレビのドキュメンタリーって、どうしても告発的になるんですけど。
鈴木 なりそうですよね。
荒木 そうなんですよ。だけど自然に撮ってるとね、そういうことになっちゃうんですよね。こういった長年やってる政治家のおっちゃんとかね、富山の市議会とかね。
そんなところもありますよね。ドキュメンタリーってね、固いと思わないで観てみると面白いと思います。
鈴木 なるほど。
荒木 ごめんね。今日は極端な2つ…。
鈴木 今日はいい!今日はいいよー。我々のトークで、いいよー!
荒木 ありがとうございます。
鈴木 ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。