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映 画

「アフター・ヤン」「ソングバード」のとっておき情報
(2022年10月21日10:50)
映画評論家・荒木久文氏が「アフター・ヤン」「ソングバード」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、10月17日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木 よろしくお願いいたします。
荒木 ダイちゃんの好きなSF映画を紹介します。どっちから行こうかな…。ちょっと悲惨な奴から行こうかな。それとも暖かいやつからいきましょうかね?
鈴木 じゃあ、暖かいやつから…。
荒木 じゃあ、ホットな、暖かいやつからね!「アフター・ヤン」10月21日公開の作品です。これは、SFヒューマンドラマとでも言いますかね。A24が作っている作品です。ストーリーはですね、舞台は今から数十年先、中心人物はジェイクさんと妻カイラさんというご夫婦です。彼らはお茶の葉の販売店を営んでいるんです。
鈴木 ほーほう。
荒木 子供には恵まれないんですが養女がいて、ミカちゃんというんですが。つつましく幸せな毎日を過ごしています。彼らのもうひとりの家族、人型の家庭用ロボットのヤンって言うんですね。未来のこの時代は人型のロボットが一般家庭にまで普及しているわけなんです。
彼は非常に精巧なアンドロイドで、見た目は人間と全く変わりません。若い男性の体裁のロボットで、20代くらいですかね。 ある日、このロボットのヤンが故障で動かなくなるんです。
ヤンを兄のように慕っていたミカは落ち込んでしまいます。で、ジェイクさんは修理を試みていく中で、ヤンのカラダに、毎日数十秒の動画を撮影出来る機能が組み込まれていることに初めて気がつくんです。
鈴木 おー!
荒木 そこには、家族に向けられたヤンの暖かい眼差しと、ヤンが巡り合った、ある秘密が残されているという話なんです。
鈴木 ちょっと、面白そうじゃないですか、それ!
荒木 そう!究極、ロボットにも心があるのか!って話にもなってくるんですけどね。 あの名優、コリン・ファレルが主演です。
鈴木 うーん。
荒木 監督は、韓国系のアメリカ人のコゴナダというさんて人で、脚本も手掛けてるんですけども…。そのせいか、全体的には東洋的な雰囲気なんですよ。着てるものも含めて、全体にエキゾチックな雰囲気が漂ってますね。主人公はもちろん、コリン・ファレル、白人なんですけど、奥さんは黒人、子供は中国人なんです。
鈴木 あー。
荒木 ロボットのヤンも、完全にアジア系なんです。
鈴木 なんか、多様性、全部突っ込んでますね。
荒木 考えてみると、多様性っていうか家族構成、こういうのは将来は不自然じゃないんですよ、たぶん。
鈴木 そうですよね。
荒木 なんかね、宇宙ステーションに居るようですよ。そしてもうひとつは、映像がとてもきれいなんです。A24の作品には共通していることではあるんですけど、音楽は、あの坂本龍一さんが担当しているんです。
ダイちゃんは多分よく知ってると思うんですが、「グライド」という岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」という、2000年の頭の映画があるですけど。
鈴木 はいはい。
荒木 その有名な曲が、この映画の主題歌になってるんですよ。
鈴木 主題歌にしてるの?
荒木 そう、Mitskiさんて人が歌っているんです。
鈴木 ああ~!うん。
荒木 ちょっと聴いてみて。
鈴木 わかりました。この後 流しますね。
荒木 聴いていただくと、これはとても素晴らしいです。ま、ガチガチのSFワールドじゃなくて、穏やかな近未来!?の話なんで、すんなり受け入れられる感じです。
鈴木 AIに心があるんだろうかねー。どうなんですかね?
荒木 そうですね。ま、明らかに低予算だと思います。日本の小津監督を意識しただろうと思われるようなカメラワークなんかもあって、興味惹かれる作品です。
「アフター・ヤン」10月21日に公開です。是非観てください。
この作品は、穏やかな近未来ですが、次は正反対。
鈴木 真反対ね…。
荒木 ちょっと悲惨というか、残酷な近未来のSFです。
鈴木 あらららら…。

荒木 「ソングバード」という、現在公開中の作品です。
鈴木 タイトルは、すごく優しい感じじゃないですか。
荒木 そうですね。コロナ。今日本では、少し下火になってきましたよね。
旅行や、そろそろマスクも外すのかどうかって雰囲気もありますけどね。
今、コロナによる致死率って、1%ないと思うんですね、0.55とか…。
鈴木 うんうん。
荒木 これからご紹介する映画は、恐ろしいことになってます。
鈴木 えっ!
荒木 時は2024年って言いますから、わずか2年後ですよ。なんと致死率55%を超すというコロナウィルスの異変が起こっているという世界なんです。
鈴木 もう止めよう話!そこで止めよう!
荒木 (笑)新型コロナウィルスは、この時点で、強力で致死率の恐ろしく高いウィルスへと変異を広げているんです。COVID19から24、全世界の死者1億人を超えているんです。今で600万人くらいだから、すごい数ですよね。
鈴木 えー!
荒木 町はロックダウンが続いて、すっかり荒廃した世界でね。人々は徹底強化されたソーシャルディスタンスを守らされて、感染者になるとQゾーンと呼ばれる隔離キャンプ、ここに強制収容されて死を待つしかないという…ことになっています。
町を自由に歩き回れるのは、わずかな、ごくわずかなウィルスの免疫を持つ者だけなんです。このドラマの主人公、ニコは免疫を持っているんです。彼は濃厚接触者としてQゾーンに送られそうな恋人を救おうと走り回るんですけど、しかしそこには恐ろしい陰謀が渦巻いているという…。こういう状況の中でも悪いことをしたり金儲け考える人、居るんですね。
鈴木 いるでしょうね。
荒木 ま、当然ですけどね。リモートしか会えない男女の恋愛を中心にコロナによって、全く自由が失われた世界を生きることを描いているんです。極限状態でも、人間性を失わないということが大切だということも、同時に描いているんですね。
考えてみたら、コロナの変異って実際に起こりうることですよね?
鈴木 絶対!有り得ることですよ!
荒木 そうですよね。現実はコロナは変異を繰り返して毒性が下がってきた…。
鈴木 ま!ゆるくなってきたという変異ですよね。
荒木 そうですよね。映画のように現実とは逆に毒性が高くなって致死率が上がることもあり得ますから。
鈴木 あり得る、あり得る。
荒木 だから今後起こる可能性ありますよ。そう思うとちょっと恐ろしい映画ですよ。
鈴木 これ、ハッピーエンドじゃないんですか?
荒木 ま、それは観ていただくとわかると思う。(笑)
鈴木 それはちゃんと映画を観てくれと!
荒木 はい。凄いリアリティあるんで、なんでかな?と思ったら、実際のロックダウン下の2020年かな?ロサンゼルスで撮影されたものなんだそうです。
鈴木 うわー!面白い!
荒木 プロデューサーが、あのマイケル・ベイですよ。
鈴木 あー、出た!
荒木 だからね、○○〇として凄いです。ちょっとショッキングな、「ソングバード」というタイトルはきれいですけど…。現在公開中の作品をご紹介しました。
ということで、悲惨なSFとちょっとハッピーなSFと2つご紹介しましたけど、このウィルスも、コロナも、早くなんとかなって欲しいですよね。
鈴木 ホントそうですよね。荒木さんとマスクをしないで、ハグして飲んだのって、もう何年前の話ですかってぐらいですよ。
荒木 甲府の駅前で…。じゃねぇや。(笑)
鈴木 (笑)ホントだよ。だけど、さっきのAIに心があるかないかってあったじゃないですか。
荒木 はいはい。
鈴木 ワタクシ、最近iPhoneのSiriに馬鹿にされるんですよ。
荒木 え?そうですか?何でかな?
鈴木 わかんないけど、こいつ心があるな~って思ってるんですよね。
荒木 意味が分かりません、とか。
鈴木 そう!ホントに何も答えてないぞ、おまえ!って思うんですよ。
荒木 (笑)なるほどねー。凄い世の中になりましたよ。
鈴木 ホントそうですよね。
荒木 鉄腕アトムの時代から、ロボットに心はあるのか?ってのは、大きなテーマですからね。
鈴木 荒木さん、いい締めしますね~。
荒木 ありがとうございます。なんか変なところで褒められちゃった。
鈴木 荒木さん、ありがとうございます。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。