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映 画

「花まんま」「異端者の家」のとっておき情報
(2025年4月27日9:30)
映画評論家・荒木久文氏が、「花まんま」「異端者の家」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、4月21日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 春たけなわですね。桜は終わってしましましたが、これからはチューリップや牡丹なんですが山梨のあたりはどうですか?
鈴木 いいこと聞いてくださいますね!荒木さん! 笛吹市の桃の花のピンクの絨毯、桃源郷くらいちゃありゃしないですよ。
荒木 うわぁー、行きたい、見たいなー。
鈴木 真っピンクですよ!本当に!
荒木 素晴らしいでしょうね。桃の花のね…桃源郷か。
鈴木 本当に美しいですよ。
荒木 そうですか・・今日ご紹介する映画、1本目はタイトルに「花」がついている映画です。「花まんま」というタイトルです。

鈴木 「花まんま」?
荒木 意味わかりますかね?
鈴木 わかんないですよ(笑)。
荒木 「はな」は文字通りフラワー、「まんま」はご飯のことなんですよ。
つまりは「はなごはん」って言うんですけど。これはご飯に花が入ってるんじゃなくて、子どものままごと遊びで、よく女の子が作るでしょ?お弁当箱に花を詰めて作る「花のお弁当」のことです。
鈴木 綺麗だけど、ちょっと切ない感じがしたなぁ。
荒木 そうそう!鋭いですね。女の子は作った経験もあることでしょうね。
これ実は人情噺とファンタジーのミックスした不思議な映画なんです。
鈴木亮平さんと有村架純さんが初共演。早くに両親を亡くした兄と妹。兄は親代わりとして生きる熱血漢の兄を鈴木さん、妹を有村さんが演じます。
鈴木 なるほど、浮かぶ。
荒木 ストーリーを紹介すると…。
大阪の下町で暮らす俊樹とフミ子のふたりだけの兄妹。兄の俊樹は死んだ両親と交わした「どんなことがあっても妹を守る」という約束を胸に妹のフミ子を面倒を見続けてきました。そんなフミ子の結婚が決まり周りからも祝福され、兄としては親代わりだったので、やっと肩の荷が下りて妹の幸せを願って…という人情話っぽいんですが。
ところが、ふたりには子供のころの遠い昔に封印したはずのフミ子ちゃんの秘密があったんですね。それが今になって蘇るという…、ここまでかな、どうぞご覧くださいという感じ。
鈴木 なんで‼ちょっと荒木さ~ん!もう少し喋ろうよ。
荒木 そうだよねぇ、怒られますよね。
鈴木 最近多いよ!多すぎですよ!
荒木 こんなことばっかりやってるとみなさんに怒られそう。
でも、ある程度ネタバレにならないくらいに喋っていいと言われましたんで(笑)。
このふたりの兄と妹が幼い頃に経験した不思議な出来事があるんです。
それは妹が小学校入学の直前、ちょっと体調を崩すんですね。それから急に大人びるようになるんです。そして、自分のノートに誰も知らない女性の名前を書くようになるんです。 実はこの女性はある事件で殺されていた人なんですね。そして、妹はその女性の記憶までも持っていたんです。更に妹はその女性のお父さんに会いに行くと言い出すというね。
まあ…、ちょっとここまでですね。ちょっと不思議な話になってくるんですけども、
あとはもう映画で見ていただくしかないんで。大阪を舞台にしているんで、関西的なノリや吉本的なツッコミがたくさん盛り込まれている感動の物語でもあるんですが、ちゃんとバランス取れてるというか、スパイスが効いています。
鈴木 ところどころ、くすくすって感じもあるんですか?
荒木 そうそう!最後の結婚式の場面では、涙ぼろぼろになるとう感じになるので結局は感動の物語になります。ふたりのほかにはフミ子の婚約者に鈴鹿央士さん。
俊樹の幼なじみでファーストサマーウイカさんも出てきます。ほかにも、私に似ていると言われるオール阪神さんとかオール巨人師匠も出てます。原作は直木賞を受賞した朱川湊人さんの小説なんですけど、もともと短編では、二人の幼いころのお話だけなんですね。監督の前田哲さんが、そこから大人になってからのお話を膨らませたんですね。ほとんどオリジナルと言ってもいいぐらいですね。前田哲監督と言うと「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」 「そして、バトンは渡された」などが代表作ですがどれをとっても繊細な家族の姿を描いてきた人ですね。だから、家族の話でもあり群像劇でもありちょっとファンタジーでもあり、しかも感動物語という…。
鈴木 フミ子は誰かの生まれ変わりなのかなー。
荒木 ああー!そういう感じに、当然なりますよね。ただね、それだけじゃないんですよ。アッと驚く仕掛けが最後の方にあるし…。
鈴木 結局、見なきゃいけないようになってるんだね(笑)。
荒木 あはははは。ここで完結しちゃうと私の商売成り立ちませんから(笑)。
ということでハンカチ2枚以上ほどは用意しておいた方がいいと思います!
「花まんま」という、今の時期に相応しい4月25日公開です。
次にご紹介するのは、同じく4月25日から公開の「異端者の家」です。異端は正統から外れているという意味の異端です。宗教ホラーと言っていいのかな?でもまあ、宗教そのもののカルト性とか狂信的な行動みたいなものを取り上げているわけではないので、本当の意味で宗教ホラーとは言えないけど、宗教系ホラーかな。

鈴木 昔の魔女裁判的な、そういう…?
荒木 ああーそうですね。宗教の知識や歴史を沢山使ったホラーなんで、私は、最初楽しめるかなと思ったんですけど、心配ご無用です。怖いです。
鈴木 心配ご無用!怖いですか!(笑)。
荒木 はい。あらすじです。ふたりの若い女性。モルモン教の若い宣教師です。ふたりは布教のため、森に囲まれた一軒家を嵐の日に訪れます。出てきたのはリードという気さくおじさん、というかおじいちゃんです。妻もいるよと聞いたんで安心した彼女たちは家の中に入って布教のお話をすることになります。早速、ふたりはモルモン教の説明を始めたところ、リードさんは天才的な頭脳と知識を持っていたんですね。で、「どの宗教も真実とは思えない」と宗教論を展開し始めるんですよ。「やばい!とても敵わない」という空気を感じたふたりは帰ろうとするんですけど、玄関の鍵は閉ざされていて助けを呼ぼうにも携帯の電波も繋がらないと。リードおじさんは帰るには家の奥に扉が2つあるんでどちらかからしか出るしかないと言います。
鈴木 閉じ込められ系はイヤなんだよな~。
荒木 そう!閉じ込められ系でもあるホラーなんですね。信仰心を試す扉の先には一体何があるのか?…という。悪夢のような「真相」があるという。ダイちゃん!怖いでしょう、こういうの。
鈴木 怖いです!これはオカルトなの?サスペンスなの?
荒木 全部合わさった、オカルトホラーサスペンスでしょうね。
この映画に出てくる宗教はモルモン教、聴いたことがありますか?
鈴木 もちろん。
荒木 モルモン教というのはキリスト教の分派で、アメリカで始まってるんですけど、聖書にモルモン書と言うんですが、それをまとめた人の名前がモルモンという人なのでモルモン教と言われているんですね。ご存じのように厳しい戒律があるんですよ。アルコールはもちろん、酒とかコーヒーとかお茶とかカフェインが入っているものは飲まない。ほかにも特殊な下着を着ていると言われ、非常に厳しい戒律があるんですけど。
信者は、18歳から25歳ぐらいの間に宣教師を経験しなきゃいけないんですね。
だから、今回の映画のふたりの女性も宣教師修行をしているという設定でしょうね。
このモルモン教は人によっては異端の一派とも言われるんですが、その根拠が、設立者のジョセフ・スミスという人なんですけど、いろんなキリスト教の宗教団体を渡り歩いて勉強して作ったんですね。問題になるのはかつて「一夫多妻制」だったことです。
これが原因で激しく迫害されたと言われます。映画の中でリードおじさんがそんな話をするんですけど。宗教の話って私自身は面白くって…嫌いな人もいるでしょうけど。
鈴木 面白いですよね。
荒木 神の存在とか関連的なことですけど宗教論とか。どんな宗教がどんな形成過程を取ってるのかとか。特にダイちゃんも見てるけど、特に外国映画は宗教映画がたくさん出てきますからね。
鈴木 そうなんですよ。必ずベースにそれありますもんね。
荒木 で、リードを演じてるのはイギリス人のヒュー・グラントなんです。
鈴木 ヒュー・グラントがリードおじさんなんですか!
荒木 そうなんですよ。でたらめなんですけどちょっと納得できちゃうみたいな、そんなとこもあるんですよ。そのヒュー・グラントさんはかつて爽やかな好青年だったんですよね。
鈴木 ブリジット・ジョーンズシリーズだってそうだし。
荒木 ラブコメ、ロマコメの帝王みたいに言われてたんですよね。ところが、近年は妖怪みたいな役やったり、今度来る「パディントン」では悪役やったりちょっと色物系の役者になってきてるんですよね。
鈴木 いい感じに老けて、いい感じになってましたよね。
荒木 そうそう!でね、本人が楽しそうなんですよ。今回もある種サイコパスですよね、そんな感じなんですけど、あのときめいてた笑顔が変わってしまったという、泣いてる女性もいました。あの笑顔を使って全く逆にみせるとすごく不気味になっちゃうんですよね、ああいう整った顔の人は。64歳になると。役者としては大変なことだと思うんですよ。自分のイメージを壊すんですけどね。
鈴木 老け役、似合っていくタイプだと思いますよ、ヒュー・グラントって。
荒木 そうですよね、イメージを逆手に取りながら怖くするっていう・・・役者冥利につきますよね。それから、閉じ込められる女優さんたちも期待の女優さんなんですけど、実際にふたりともモルモン教徒だったらしいですね。
鈴木 そうなんだ。
荒木 そういう事もあって、彼女たちの言ってることも説得力もあったりするんです。
鈴木 リアリティあるんだね。
荒木 特に、ソフィー・サッチャーさんという女優さんはね、これから公開される「マキシーン」という作品に出たりの期待女優ですよ。実はこの映画のエンディングテーマ曲も彼女が歌っているんですよ。「天国への扉」っていうボブ・ディランの曲なんですけど。そんな話題もあるんです。
ご紹介したのは4月25日から公開のホラー『異端者の家』でした。
ゴールデンウィークは、ホラーあったり大型あったりいろんな作品ありますんで、行楽もいいけど映画館にもどうぞ行ってくださいということで。
鈴木 そうですね、映画館で笑って震えてってのもいいですね。
荒木 ひとつの過ごし方としてね。
鈴木 ありがとうございます。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。