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映 画

「プチ・ニコラ パリがくれた幸せ」「ウーマン・トーキング 私たちの選択」などのとっておき情報
(2023年6月3日21:00)
映画評論家・荒木久文氏が「プチ・ニコラ パリがくれた幸せ」「ウーマン・トーキング 私たちの選択」などのとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、5月29日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。

荒木 5月も終わりの週です。
今日はいくつかの作品の劇場招待券をいただいていますのでお楽しみに。
まずは、6月9日公開、「プチ・ニコラ パリがくれた幸せ」です。
“プチ・二コラ“とは小さい二コラという意味です。フランスで50年以上にわたって愛され続ける「プチ・ニコラ」という子供向けの本、児童書ですね。
フランス人なら誰でも知っているらしいですよ。この本の原作者で、かつ親友同士でもある2人の作家の、波乱に満ちた人生を中心に、そこに「プチ・ニコラ」の主人公が登場するという、アニメですね。
舞台はパリにある小さなアトリエ。イラストレーターのジャン=ジャック・サンペと作家のルネ・ゴシニは、ニコラという少年のキャラクターの児童書を作りつつあるんです。
主人公ニコラがクラスメイトたちと織り成す愉快な日々を描きながら、このふたりは、自分たちの少年時代、昔を織り交ぜながら回想するという…。で、ニコラがふたりを固い絆で結びつけていく…というお話です。
2022年に大きな国際アニメーション映画祭で最高賞にあたるクリスタル賞を受賞した作品なんですが、絵がとっても綺麗で水彩画のようです。癒されるし、フランスっぽいっていうか、ちょっと普通のアニメと違ってですね、とってもアートっぽくて、なかなか素晴らしいです。
鈴木 お国柄が出てるんだなぁ。

荒木 そうですね。国の個性が出ますよね。
この絵本「プチ・ニコラ」のほうは2010年に実写映画化されています。DVDか配信で出ていると思いますので興味のある方はそちらも観てください。
6月9日公開「プチ・ニコラ パリがくれた幸せ」、2組4名様に劇場招待券、差し上げます。
2作目、「ウーマン・トーキング 私たちの選択」、6月2日公開の作品です。
サラ・ポーリーという、『死ぬまでにしたい10のこと』ていう女優さんです。
最近は、エッセイなど出版したり、監督として「テイク・ディス・ワルツ」とか、監督の方が目立ってますね。今回の作品は、架空の村を舞台に「性被害」にあった女性たちが、自らの未来のために話し合いを重ねていくという、重厚なドラマです。
時は2010 年、10年程前なのですが、周囲から隔絶し、自給自足で生活するキリスト教の一派の村で集団連続レイプ事件が起きます。そこに住む男性たちは、警察がいないので 女性たちに対しその事件は、悪魔の仕業」とか「作り話」であるとして、レイプを否定します。
ある日それが実際に起こった事件だとわかるんですけども、生きる上での尊厳を奪われた女性たちはみんなで集まって自分たちの未来を懸けた話し合いをするんです。
男たちを許すのか、許さないのか、村を出てゆくのか留まるのか…という。タイムリミットは男性たちが街へと出かけている 2 日間の留守の間のみ。時間が迫る中、彼女たちは話し合ってどんな結論をだすのでしょうか?…というストーリーです。
主演は「キャロル」のルーニー・マーラという綺麗な女優さんとか、ベン・ウィショーなんかが出ています。出てくるのはほとんどが女性、男性はひとりしか出てきません。
21世紀に入っているのにこの閉鎖された村は、自給自足で自動車もなく馬車がメインの交通手段です。ちょうど中世のヨーロッパみたいな感じのコミュニティの村なんですよ。しかもこの村の女性たちは教育も受けてないんで、字も書けないし読むことも出来ないという状態にあります。今時こんな閉鎖された村があること自体不思議ですね。
鈴木 怖い感じがしますけど。
荒木 怖い感じします!します!女性達を人間扱いしていない、女はよけいなことは知らなくていいと。そういう環境の中で女性たちが初めて自分で考え 話し合って、行動に移そうとするんです。犯人とか具体的な暴力シーンは全く出てきません。にも拘わらず、彼らに対する女性の怒りだとか悲しみが上手く伝わってくるんですよ。
やっぱり、サラ・ポーリー、この辺は上手いですね。
鈴木 そうとうヘビーな映画なんですか?
荒木 対話劇と言っていいと思います。人間が話し合ってる映画なんで、まー、ボーっと観てる映画じゃないですね。きちんきちんと会話を聞きながら観ないと、良さはわからないですね。
鈴木 先週、ご紹介していただいた「ワイスピ」じゃないぞってことですね。
荒木 ああー!「ワイスピ」は考えちゃダメですね(笑)。
少なくともキリスト教のコミュニティなのに、どれだけ女性達を人扱いしていないかと思うんですけど、まあキリスト教を名乗っていてもいろいろな宗派がりますからね。
例の旧何とか協会とか、何とかの証人とかね…これもキリスト教を名乗っていますからね。
わたしも見せていただいたのですが、はじめはこういうコミュニティを理解するのに苦労するんですよね。なんか時代感覚がつかめないんですよ。いつの時代のことだろうかとね。
サラ・ポーリー、この作品を通じて男性主体社会の本質をきちんと見せようとしているのだなという意図は明確にわかります。半端じゃない監督ですよ。そういう意味で問題作の対話劇です。「ウーマン・トーキング 私たちの選択」6月2日公開です。チケット1組2名に差し上げます。
…ということで、今週は私の好きな映画音楽、スペシャルですよ。
鈴木 スペシャル‼
荒木 「わたしの好きな映画音楽3」ということで、ゲストをお迎えしています。
さあ、ご紹介しましょう!鈴木ダイさんです!
鈴木 こんにちは!ゲストの鈴木ダイで~す!!
荒木 あはははは…。ということで、今日はこのコーナー、スペシャルということで、ダイちゃんの好きな映画音楽です。ダイちゃんに仕切っていただきましょう。
鈴木 こんな悩むような課題を、忙しいのに与えないでくださいってくらいに、ガチで3曲なんて選べるはずないよー。
荒木 そうだよねー。ましてやベスト1よこせってのも無理な話だよね。
鈴木 でも、その中でもあの時だったり、今だったりって状況で、3つの作品を順不動ということで、どれが3位、どれが1位なく、ちょっと3曲聴いてもらいたいなあということで、ご紹介したいと思います。
荒木 興味あるなー。私も聞いてないんで…。
ダイちゃん、どんな映画…、だいたい想像はつくけど、あれはないだろうな…、これは入れるかな…という、楽しみです。
鈴木 あくまでも映画であるけど、映画音楽という視点ですからね。
荒木 そうですよね、ちょっと違いますからね、内容とはね。
鈴木 ということで、まず鈴木ダイの選ぶ3大映画音楽ということで、1曲目を聴いていただいて荒木さんとお話をしたいなと思います。イントロが半端ないんです。私が選んだ1曲目はこの作品、この曲です。
~「007 ゴールドフィンガー」 1964年公開~
荒木 すげー!
鈴木 「007 ゴールドフィンガー」この曲ですよ、まず1曲目は!
荒木 もう鳥肌立ちました!
鈴木 大袈裟じゃなく、鳥肌立つようなイントロで!僕も、「007」ジェームズボンドのシリーズの大ファンということなんですけど。
荒木 これ1964年ですよね。
鈴木 はい。「007」シリーズ、1962年、ドクター・ノオからスタートしてるんですけど、考えてみたらこの時代、62、63年が「ロシアより愛をこめて」、64年が「ゴールドフィンガー」で、1年に一作づつ作ってるっていうね!半端ないんですよ。
荒木 ショーン・コネリーの本当にいい時ですよね。
鈴木 そうですよね、それでボンドシリーズに、音楽が不可欠だと定義づけたのは、この「ゴールド・フィンガー」で確立されたんじゃないかというほど、インパクトがありまして、イントロのインパクト、シリーズでもトップクラスなんですけど、考えてみると「007」て64年なんで、僕、生まれる前なんですよ。
生まれる前だから、あくまでも生まれてきた後に、ひとつの音楽として聴いてみたら、鳥肌が立ったということなんだけども。
荒木 ああ!そうでしょうね。シーン的には最初のシーンですよね。煙のシーン。
鈴木 最初のシーンで、いわゆるテロップが出て、ガンを打ち放ちながら煙が出てタイトルになっていくとか。女性のシルエットが黒くて、あのオープニングが確立されて、うわー来たなこの曲か今回はってのが、この64の「ゴールド・フィンガー」だと思うんですよ。
荒木 そうですよね。あの時、金粉の美女かな。
鈴木 金粉を塗られて死んでしまうという、殺人の仕方がインパクトありましたけど、考えてみたら77年の「オクトパシー」リタ・クーリッジの「All Time High」とか、2000年代には、アデルの「スカイフォール」だとか名曲が多いんですけども、その中でも007シリーズを象徴する1曲としては、シャーリー・パッシーの「ゴールド・フィンガー」をあげたー!ということです。
荒木 シャーリー・パッシー、当時無名ですもんね。「ダイヤモンドよ永遠に」もそうでしたもんね。
鈴木 そうです!3作やってますから。
荒木 そうか!素晴らしいですね。「007」か。3位って事でなく、3曲のうちの1曲ですね。これはやっぱり予想は出来たね。3曲のうちの1曲には入ってるかなってね。
鈴木 やっぱり、納得の「007ゴールド・フィンガー」ですか。
荒木 はい。
鈴木 次の一曲は荒木さんも予想出来てるでしょうか?どうでしょうかね。鈴木ダイの3大映画音楽の2曲目は、この曲、この作品です。
~「THE OMEN 」 日本タイトル「オーメン」 1976年~
荒木 (笑)。ゲゲ…。これは全然予想できてなかった。
鈴木 これは、1976年公開の、名オカルト映画「オーメン」から、アベ・サターニという曲なんですけど。アベ・サターニっていう、アベ・マリアじゃなくて、アベ・サターニっていう悪魔を崇拝している…。
荒木 サタンを讃える歌ですよね?合唱曲。
鈴木 これは有名な映画音楽作曲家のジェリー・ゴールドスミスの作品なんですけども…。
荒木 確か、アカデミー賞でしたよね。
鈴木 ジェリー・ゴールドスミス、この曲で第49回アカデミーの作曲賞を受賞してるんです。ジェリー・ゴールドスミス、荒木さんもご存じのように「パピヨン」だったり、「カサンドラ・クロス」「エイリアン」「スタートレック」「ランボー」「トータル・リコール」とか、とんでもない作品を手掛けているのに、なんと!このオカルトの「オーメン」で唯一アカデミーをとっているというね…。
荒木 合唱曲でね!
鈴木 だから、音楽的にも優秀っていう言い方変なんですけども、音楽的にも世界中の映画関係者が認めざるを得ない素晴らしい楽曲だと思うんですよ。
荒木 そういう意味では、こういう映画で、ま、ラテン語かギリシャ語か、そんな感じですもんね。教会の鐘を含んだ混声合唱ということで、不気味さが凄かったですよ。
鈴木 ゴシックの怖さってのも加味されていて…。
荒木 この音楽は本当に映像を盛り上げますもんね。
鈴木 あの時代、76年の「エクソシスト」のチューブラー・ブルス、あの辺りもそうなんですが、あの時代のオカルト映画の主題曲っていうか、旋律。やっぱりインパクトを持って我々に訴えかけるものがあったなあというね。
荒木 そうですね、時代ですね。1970年なかばですかね。わぁー!これは予想出来なかったな。
鈴木 僕いまだに、「オーメン」のサントラって普通に1枚聴いて、部屋でコーヒー飲んでるタイプですよ。
荒木 うーん、確かにね。これはダイちゃんの意を突かれた、グッド選曲です!
鈴木 良かった!これでシャーリー・パッシー、ジェリー・ゴールドスミスときて、鈴木ダイの選ぶ3大映画音楽の…。
荒木 わかんなくなってきちゃったな、大体予想はしてたけど…。
鈴木 もうね、3曲目っていうか、ある種ナンバーワンと言ってもいいと思うんですけども、曲自体は荒木さんと、また来週って言ったあとにおかけしたいんですが、
ここでお話だけしちゃうとですね。
もう1曲選んだのは、「スターウォーズ」のメインタイトル。
荒木 あ!あーそうですかー。これは3曲のうちに入るとは思ってたんですが、2曲目聴いた時点でわかんなくなってた。
鈴木 もう「スターウォーズ」だったり、「ロッキー」だったり、この辺りの交響曲ってのは、やっぱり映画音楽とはこういうもんだという定義付けを少年の私に教えてくれたっていうね。
「スターウォーズ」メインタイトル、1977年、正しくは「スターウォーズ エピソード4 ニューホープ」ということなんですけども、ジョン・ウィリアムス、ロンドン交響楽団ということで。これね、ロンドン交響楽団を使っていなくて、ジョン・ウィリアムスのタクトっていうのもいくつか音源あるんですけど、やっぱりオリジナルのサウンドトラックの演奏が、僕は一番好きで。この曲を聴いて、血が逆流して体温が間違いなく0.8度くらいは上がるなっていうね。これほどワクワクするって…。
荒木 ワクワクしましたよね。エピソード4が一番初めだったんですよね。
ホントにこんな映画があるのかと思いましたもんね。
鈴木 あれがエピソード1って、一作目なのに、後になって、イヤこれは実は4作目なんですって…。あの展開もちょっとないよって言うね!
荒木 まあね、そういう意味では、歴史を作ったですよ。そういう前日譚ってのは、最近 平気でやってますからね。
鈴木 そうですよね。
荒木 なるほどね~。へぇーそう…。ダイちゃんの選ぶのに相応しいと言えば相応しいですよ。
鈴木 ということで、アラキンのムービーワンダーランド、ゲストにお呼びした鈴木ダイさんが選ぶという、3大映画音楽が…。
荒木 それ、私が言わなきゃいけなかったんだね(笑)。ということで、スペシャルゲスト鈴木ダイさんをお迎えしました。素晴らしい選曲でしたね。面白いね。スペシャルを今後続けましょうかね。こっちもね、いくつかあるんで。
鈴木 これは、ディレクターのミスター新海さんもねぇー。
荒木 新海さんも参戦したい?
鈴木 あの方も、映画や映画音楽お好きですからね。
荒木 了解です。次にちょっとプログラミングします。
鈴木 あはははは。トータルリコールのようにお願いしますということで、
荒木さんありがとうございます。
荒木 ありがとうございました。
~「スターウォーズ エピソード4 新たなる希望」 1977年公開~

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。