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映 画

「第31回レインボーリール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」「交換ウソ日記」などのとっておき情報
(2023年7月17日10:00)
映画評論家・荒木久文氏が「第31回レインボーリール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」「交換ウソ日記」などのとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、7月10日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。

荒木 お暑うございます。今週から折に触れ、夏の映画イベントを紹介していきたいと思います。まず毎年ご紹介するイベントで31回を迎えます、「レインボーリール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」。
毎年紹介して、ダイちゃんにも注目していただいてるんですけど、今年度のスケジュールと上映作品が決定しました。ここでは、セクシャルマイノリティをテーマとした映画作品を、国内外から厳選して上映しています。
今年は「福岡地裁が、同性婚を認めないのは違憲状態」と判断が出たり、「LGBTの理解増進法案」でいろいろ議論がありましたけど、このイベントは、セクシャルマイノリティを取り巻く今をリアルに切り取った、世界中のヒューマンドラマやドキュメンタリーを上映することで、LGBTの人はもちろん、それ以外の人も一緒に感動を共有し合おうという企画です。
期間は7月15日から、場所は東京青山のスパイラルホールと、渋谷のユーロライブの2会場です。
鈴木 青山と渋谷ということですね。
荒木 去年と同じですね。6日間、11プログラム、21作品を上映だそうです。注目のオープニング作品は、釜山の国際映画祭や、サンフランシスコ国際映画祭にも出品された韓国映画で、「孔雀」という作品です。家族や故郷の人々と絶縁しているトランスジェンダーの女性の物語だそうです。他の注目作品は、デンマークのレズビアン映画の「ヴィーナス・エフェクト」だとか、オーストラリア映画の「ローンサム」とか。日本からは「幸運の犬」という作品が選ばれています。注目を集めているそうなんですが、他にもコメディやドキュメンタリー、ショートフィルムなど多岐にわたる充実の上映だそうです。「第31回・レインボーリール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」のお知らせでした。
ところで、ダイちゃんや僕らなんかはレコード外資のプロモートさんから、これ聴いてって発売前の新曲データなどを貰いますよね。 たくさん来ますでしょ?
鈴木 昔ほどじゃなくなってるんですけど、CDのサンプル版だったり、URLをメールなりで送ってきていただいて、それをクリックするとデータで音源が聴けるとかね。結構ありますね。
荒木 なるほどね。全部聴く?
鈴木 もちろんもちろん。好きだから聴きたいってね。
荒木 僕のところにも、新作映画観てくださいと案内いただくんですけど、それはスクリーン試写だったりオンライン試写だったりするんですけど、時間の許す限り観に行こうと思うんですけど、僕はダイちゃんと違ってたったひとつ苦手な分野があって、それは敬遠してるんです。
それは「高校生の恋愛もの」。
鈴木 あはははは。それはなんで?恥ずかしいから?自分にリアリティがないから?
荒木 若い美男美女が好きだの嫌いだの、振っただの振られただのと、あまりにも、この汚いじい様とは異次元なんですよね。
鈴木 あはははは。それはわかるよ。
荒木 もういい加減にして欲しいっていう範疇の映画なんですよ。だからこの番組では、高校生の恋愛ものってあまり紹介しないでしょう。
鈴木 あー!それは荒木さんの心のNGがあるからね。
荒木 ちょっとテイストが違うんで嫌だと思ったんですけど、この作品は面白いですよと言われたんで、久しぶりに高校生青春恋愛物を観に行ってきました。
鈴木 観に行った!うわー!もちろんひとりで行ってるわけですよね?
荒木 もちろんもちろん。それが現在公開中の「交換ウソ日記」というタイトルです。

鈴木 「交換ウソ日記」。
荒木 小説の「交換ウソ日記」を映画化したものなんです。
ストーリーは高校2年生の希美ちゃん。移動教室の机の中に「好きだ!」と書かれた手紙を発見するんです。送ってくれたのは学校イチのモテ男子の瀬戸山くん。希美ちゃんはイタズラかと戸惑いながらも返事を書くんです。その日から2人のヒミツの交換日記が始まるっていうわけなんです。ところが、実は瀬戸山くんからの手紙は、全部希美ちゃんの親友の江里乃ちゃんに宛てたものだったんですね。だけど希美ちゃんは本当のことを言い出せず、そのまま交換日記を続けてしまいますが…。交換日記を通して彼のことを知るうちに、だんだん好きになっていくというね。
鈴木 なんだなんだ、甘いな―。なんだこれ!
荒木 (笑)この時代に敢えて、手紙と交換日記というところがね、気に入りました。今どき、メールやLINEでサクサクでしょう?
鈴木 そりゃそうですよ、今は普通。
荒木 ところが、決められた場所に毎日ノートを投函して、一日一回やりとりをするというね。
鈴木 それがまたいいんじゃないの?ちょっと、ちょっと。プルプルするわけよ、それが。
荒木 ダイちゃんは交換日記って経験ありますか?
鈴木 交換日記まではいかなかったけど、交換紙ってのはやったことあります。
荒木 交換レターか。
鈴木 レターっていうか、一枚の紙にぺらぺらーに、なんか適当にちょこちょこ書いて、それを適当に折り紙のように折りたたんで、ラグビー部の友達に、あいつに渡しといてくれっていうふうにちゃんとやるんだけど、そいつ途中で読んでたらしくってさ!
荒木 (笑)そりゃみんな読まれるよ!
鈴木 ありえねーなーっていう。
荒木 この映画も読まれることでバレていくということなんです。その辺は興味のある方は観てくださいってことになるんですけど(笑)。
ヒロインの希美ちゃん役は桜田ひよりさんという女優さんです。二十歳過ぎてるんですけど、なんか気弱な自信のない女子高校生っていうのがスポッとハマっちゃっててね、ほんと守ってあげたいっていうか、こんな娘がクラスにいたら、いるだけで勉強できないですよ。なんか自信なさげな感じがね、素人目、魅力的。まあね、主人公の男の子と女の子が、超美男美女で目の保養にもなりますんで、なかなかいいかなと思いましたけどね。私とは住む世界が全く違う、女子高校生と男子高校生の青春恋愛映画「交換ウソ日記」という作品でした。
鈴木 どうしようかなー、観ようかな、やめようかなー。
荒木 あんまり無理しないで。心の穢れがね…。私映画見た後、ダメなんだ、こういうものを観ても心の汚れが落ちないんだと思いました。
鈴木 汚れじゃないんだよ、もともとなんだと思うよ。
荒木 ああ…、そうなのね・・・。納得しちゃうのも悲しいですけど。
最後は7月7日から公開中の「一秒先の彼」という作品を紹介します。2020年に台湾で大ヒット「一秒先の彼女」をリメイクしたものなんです。

鈴木 いやー記憶ないなー。
荒木 これ、単なるリメイクでなく、舞台を台湾から日本の京都にして男女の役柄が入れ替わった設定の作品なんです。だから「一秒先の彼女」から「一秒先の彼」。
台湾映画では、何をするにもワンテンポ早い女の子と男の子だったのを、日本映画ではと何をするワンテンポ早い彼を岡田将生さん。何をするにもワンテンポ遅い彼女を清原果耶さんが演じてます。
鈴木 ああー、また美男美女―。なんだかなぁ。
荒木 でもこれは青春ものとはちょっと違っていて、ハジメ君て主人公が岡田君です。人よりワンテンポ早く、かけっこではフライング、目覚ましより早く起きるというそんな男の子なんです。大人になって、今は郵便局で働いてます。ちょっとずれているんで、カッコいいんですけど、女性に告白されて付き合いはじめると、結局相手の女の子から、イケメンなのに何故か残念状態、必ずフラれちゃうんですよね。
それで、そのハジメ君が働く郵便局に毎日手紙を出しにくるのが、何をするにもワンテンポ遅いレイカちゃんっていう、清原果耶ちゃんです。彼女は留年し続けて、現在大学の7年生なんです。
ハジメ君とは何か関係がありそうなんですけど、映画の中ではその辺がよくわからないんです。で、ハジメ君は別の女の子、路上ミュージシャンの桜子さんという女のこを好きになってですね、必死にアプローチしてるんです。
で、やっとの思いで桜子さんと花火大会の日にデートの約束をするんですけど、目覚めると、何と…、翌日になっちゃってるんです。
鈴木 えー!?
荒木 一日消えてしまっているんです。
鈴木 えー!?
荒木 その日は何処へ行っちゃったのかということで、消えた一日を探すんです、ハジメ君が。
鈴木 UFOにさらわれていたとかじゃないんですか?
荒木 (笑)そうですね、そんなことかもしれない。それで、その鍵を握っているのが清原さん演じるところのレイカちゃん。知り合う前の大切なことを思い出すっていうことになります。
まず岡田さん。ホントにイケメンなんですけどちょっとイラっとする感じがあって、とってもいいんですよ。清原さんも地味な女子大生ってことで、いいキャスティングなんです。だから観たあと全体でいうとほっこりする、女子高校生の恋愛もそうなんですが、ちょっと違った意味でほっこりする、ユーモアがあって楽しい映画なんですけど。
鈴木 おおー?
荒木 構成的にいうとリメイクですが、男女逆転していて面白いです。ストーリーも前の作品をなぞってはいるんですけど、全然違う味つけをしているんです。
脚本が宮藤官九郎さんなんです。これ、説明しただけじゃわかんないでしょう?
鈴木 わかるようで、わかんなくて、わかんない。
荒木 全体の構造が非常に重層的で、しかも時間の問題が絡んでくるんで複雑なんですよ。それを、映画観るとわかりやすく見せてくれるんです。で、構造的には、前半の出来事を後半ネタばらしするっていう感じなんです。
鈴木 観終わったあとは、納得するんですか?
荒木 納得しますね。それと、京都が舞台ってことで、京都ってやっぱり雰囲気、別の時空の歪みとかありそうでしょ。
鈴木 わかる。ちょっと異次元的だもんね。
荒木 陰陽道とかもあるしね。そこに京都っぽい、「なのにあなたは京都に行くの」とか、古い歌謡曲も入ってきてなかなか面白い、シャレ気があります。
監督が山下敦弘さんですけど、軽い感じでとてもよかったです。音楽もいい音楽、YOASOBIのヴォーカルとしても活躍中の幾田りらちゃんが書き下ろしたっていうんで、話題です。7月7日から公開の「一秒先の彼」という作品。
注目なので是非観に行っていただきたいと思います。
鈴木 なるほどー。
荒木 ということでご紹介しました。
鈴木 なんか高校生の頃の記憶を手繰りながら観ても、あまりに昔な感じがしちゃってさ、自分の。
荒木 そうですね、その辺りはどっちかですね。ほんとにハマる人と、今の自分を考えるとちょっと違う世界だなと考えちゃう人と、いるかもしれませんね。
鈴木 試してみようかなとは思いますけど。ありがとうございます。
荒木 はい、真夏の大冒険やってください。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。