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映 画

「きさらぎ駅Re:」「Mr.ノボカイン」「トゥーランドット」のとっておき情報
(2025年6月22日9:45)
映画評論家・荒木久文氏が「きさらぎ駅Re:」「Mr.ノボカイン」「トゥーランドット」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、6月16日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 暑くなってくると、定番なのがダイちゃんも大好きな、私も好きなホラーとサメ映画ですよね。ところが、今年は今のところサメ映画がないんですよ、寂しいことに…。
鈴木 えっ!?ダメですねー、今年の夏は。
荒木 そうなんですよ。寂しいですね。風鈴のない夏みたいな感じになっちゃいます。
鈴木 ほんとですよ!荒木さんのいない人生みたいなもんですよ。
荒木 よく言うよ、上手いね…だけどその代わりホラー映画がとても充実しているんで、これから何本か紹介して行きたいと思っています。
まず、今日紹介するのは、「きさらぎ駅Re:」。きさらぎ駅リターンズってことですねぇ。

鈴木 なるほど。
荒木 2022年に公開されたインターネット発の都市伝説をモチーフにしたホラー映画『きさらぎ駅』の続編です。ちなみに「きさらぎ駅」というのはこの世ではない異世界にある鉄道の小さな駅のことです。
鈴木 杉沢村か、牛鳴村みたいじゃないですか。
荒木 そうそうそんな感じだね。あらすじです。主人公は明日香さんと言います。演じるのは本田望結さん。彼女は前作で異世界「きさらぎ駅」から奇跡の生還を果たしたんですね。で、この世界に戻ってくるんですけど。その姿、外見は20年前と変わらずその存在が世間の冷たい視線に晒されているんですね。
鈴木 竜宮城じゃないですか。
荒木 そうですね。孤独と絶望の中で明日香さんの前に現れたのはドキュメンタリーディレクターとして有名な瞳さんという女性、奥菜恵さんがやってるんですね。
ふたりが出会って、明日香に新たな決意を芽生えさせことになるんです。それというのは
かつて明日香を命を懸けて救って、きさらぎ駅に残ってしまった春奈さんという女性。
これは恒松祐里さんなんですけど、彼女や他の取り残された者たちを助けるため、明日香が再び「きさらぎ駅」へと足を踏み入れることになるんですね。
鈴木 救いに行くっていうか、助けに行くみたいな。
荒木 そうそう、そうなんですよ。果たして、彼女を待ち受けるのは?…ということなんですけど。前回主演の春奈さんがゲームのような映像で彼女の異界への迷い込みが描かれているんですけど、今回は春奈の身代わりとなって生還した明日香さんが主演で、逆になってるんですね。正直、ホラー要素はそんなに多くありません。
鈴木 えっ!?ホラー映画じゃないの?
荒木 ホラー映画だけど、心底怖いというよりも独特の世界観でちょっと明るいホラーゲーム的な怖さで統一されてるんです。だから、震えあがる感じじゃなくて正体の分からない化け物とのバトルとかね。
鈴木 ワンダーストーリーですね。
荒木 ああそうですね。何よりわかりやすく作ってますね。続編なんで前作を見てた方がいいんですが、見ていない人でも前作を意識して上手くできていますよ。頭のほうに結構長い時間かけて前回のあらすじ的な「モキュメンタリー」って言うのかな…。
鈴木 おさらい系があるんですね。
荒木 そ!おさらいがあるんで、見ていない人も忘れている人もOKですね。
私も見られなかったんですけど、とてもいいって言うんで無理して見せていただいたんですね。よかったですよ!ゲーム的青春ホラーというか。監督が永江二郎さんと言う方で、この人独特の視点を持っていて都市伝説などをうまーく掬い取ってホラーにするのがうまい監督ですよ。注目です。「きさらぎ駅Re:」現在公開中の作品でした。
さてダイちゃん、前回病気の話ししましたよね。手足口病、凄い痛かった?
鈴木 (笑)もうね、思い出させないでくださいよってくらい、歩けないし手は障れないし最悪でしたね。
荒木 痛いのイヤだもんね。普通みんな痛いのダメだけど、特殊な趣味でいたいの好きと言う人もいますけど(笑)、次の作品は痛みに関わるお話なんです。
鈴木 イヤだな―…。
荒木 ねっ。「Mr.ノボカイン」という6月20日公開の作品です。ノボカインというのは「局所麻酔」って意味なんですね。変な名前ですよね。
ストーリーです。小さな金融機関に勤めるネイト君。彼は生まれつきどんな痛みも感じないという身体の持ち主だったんですね。「無通症」というんですかね。

鈴木 そういう人、いますよね。
荒木 はい。彼は真面目で気弱な金融関係のサラリーマンとしてごく普通の人生を歩んできたのですが、ある日、彼の銀行が強盗に襲われます。大切な恋人で同僚のシェリーちゃんが人質にとられて攫われてしまうんです。思わず追いかけるネイトくん。
でも、彼には腕力にも体力にも自信がなく体も細くっていわば“戦闘力ゼロ”です。ただひとつ、彼女を助け出すために使える彼の武器は“痛みゼロ”の特殊な体だけということに気がつくんですね。生まれて初めて痛みを感じない自分の体が役に立つ時がきた、と張り切るネイトくんですが、身体に痛みを感じないだけで当然ケガするし血も流れるし、死なないわけじゃないんですね。
鈴木 でも痛くないんでしょう?
荒木 痛くないです。それでも、心臓とかやられたら即死です。
すごいアクション連続ですよ。ちょっと特殊なアクション。殴られても衝撃はあるけど痛くないからバンバン殴られるし、ガラスが顔に突き刺さっても全く平気なんです。
ナイフが手にささったまま殴りあったり、指の爪をはがされてもニコニコしてる。
更には、ぐつぐつ煮立っている油に手を突っ込んでひっくり返しちゃうとか…。
鈴木 それ、さっきの明日香さんの代わりに、ネイトくんが行ったほうがいいと思います。異界には。
荒木 (笑)異界にはね。見てる方が痛いんです。目を背けちゃいそうでね。
グロテスクです。流血多めでよくこんな痛そうなの考えたと思いますよ。
鈴木 マジで?
荒木 これね、病気なんですよ、痛くないのは。「先天性無痛無汗症」っていうんですって。無汗というのは汗をかかないという意味で、つまりは全身の痛覚、痛みの感覚と熱い冷たいを感じる機能が働かないんですね。だから痛みも感じず汗もかかないという難病なんです。日本には現在300人程度の患者さんがいるといわれています。
鈴木 300人いらっしゃるんですか?
荒木 そう。痛みって、防御反応じゃないですか。
鈴木 そうですよ!あった方がいいんですよ、痛みって。
荒木 ないと…、脳が危険信号を送ってるわけですから、危険だよ危険だよ!って。即死に繋がることもあるんですよね。だから、汗が出ないのも体温調整が出来ないし。だからネイトくんが、本当に注意しながら日常生活を送ってるのが映画でも描かれていますね。大変な病気ですよね。だから、最後にこの病気に対する理解を示すクレジットも出ています。気楽に見られるんですけど、さすがに残酷シーンとか血の流れるシーンが多いんでR15+なんですけどね。
鈴木 結構な仕切りじゃないですか、それ。
荒木 そうです。ということで「MR,ノボカイン」6月20日から公開です。
鈴木 ちょっと見てみたいなー。
荒木 さて、ホラーの次はガラッと変わって、オペラを収録した映画作品をご紹介しましょう。
鈴木 違い過ぎないですか!いくらなんでも!
荒木 あはははは。前にも紹介したことありますよね。オペラを海外の名門劇場で収録して上映するというパターンね。今日はそのうちのイギリスの名門歌劇場ロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたオペラやバレエの舞台を映像収録し特別映像も交えて上映している「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25」から、プッチーニ没後100年を記念して「トゥーランドット」。

鈴木 名作中の名作じゃないですか。
荒木 今年 4月1日上演されたものを収録して上映するということなんです。「トゥーランドット」というとみなさんご存じで、日本ではトリノオリンピックで荒川静香さんが使ったことで一気に広がったようです。
鈴木 金メダル取ったあれですもんね。
荒木 そうそう、一時期広まったですもんね。ダイちゃんもお好きとか、前に聞いたことがありますけど。
鈴木 三大テノール見に行きましたもん。ライブ、凄かったですよ!
荒木 そうですか。ところでダイちゃん、「トゥーランドット」の曲は有名ですが、ぞのストーリーについてはあまり知られていないと思うので、ちょっと紹介しますね、古代中国の話なんですよ。紫禁城が舞台で美しく冷酷で魅力的なプリンセス・トゥーランドットはお姫様。お姫様の名前なんですね。この人綺麗だからたくさんの王子たちが結婚してくださいとプロポーズするんですが、その人たちに3つの謎を出題し、解けなければ首をはねるという掟を設けます。で、たくさんの王子たちが挑戦して命を落とすんです。
その中でダッタンの王子カラフが挑戦し見事に謎を解いてしまうんです。
するとトゥーランドットは約束を反故にしようとします。するとカラフは逆に「夜明けまでに私の真の名を当てれば、死を受け入れる」と条件を提示します。
鈴木 全てに、情熱が過剰過ぎて怖いんですけど。
荒木 怖いよね。
鈴木 怖い怖い怖い。
荒木 すると、トゥーランドットは全国民に明日までにその謎を解けと命令を出します。解かなけりゃ全員殺すっていう。
鈴木 なんか、一千年前にはあったような気がする。
荒木 これ、アラビアンナイトあたりにある「謎かけ姫物語」系と呼ばれるストーリーですね。ちょっとかぐや姫にも似た部分もありますね。この有名なトゥーランドットのアリアの曲は、姫が国民に対して命令を出したところを聞いたカラフ王子が、その場面で歌われるんですね。第3幕の頭なんですけどね。今回は長年に渡って愛され続けるアンドレイ・セルバンという人の演出です。とても円熟味があります。
私も見せていただきましたがいやいや圧巻でした。6月20日から公開です。詳しいことは「英国ロイヤル・オペラ」で検索してみてください。「英国ロイヤル・バレエ&オペラ in シネマ 2024/25」のご案内でした。ちょっと敷居が高いと思わないで、この機会に見てみるのもいいんじゃないですかね。
鈴木 そうですよ、見ましょう。
荒木 ダイちゃんも大好きというそんなオペラを収録した映画でした。
鈴木 最後、トゥーランドット第3幕の「誰も寝てはならぬ」をですね、
さまざま素晴らしい方歌ってますけど、一番有名なルチアーノ・パヴァロッティが歌っているバージョンをかけようかなと思います。
荒木 いいですね。この番組は珍しいね、オペラが流れるなんて。
鈴木 ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。