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映 画

「てっぺんの向こうにあなたがいる」「フジコ・ヘミング 永遠の音色」のとっておき情報
(2025年10月27日9:15)
映画評論家・荒木久文氏が「てっぺんの向こうにあなたがいる」「フジコ・ヘミング 永遠の音色」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、10月20日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 まずお知らせから。来週から始まる恒例の「東京国際映画祭」
10月27日から始まるアジア最大級の国際映画祭です。今年は38回目なんですね。東京の銀座、有楽町周辺で展開されます。
映画祭って聞くと、ダイちゃんも含めて、レッドカーペットを俳優さんが歩くといった華やかなイメージですよね。業界人たちのイベントっていうイメージがあるんですが、それだけじゃないんですよ。私達もチケットを購入することで世界の貴重な公開前の映画を安く見られたり、トークショーで俳優さんや監督さんとお話できるということもあるんで、ぜひ興味のある人は行っていただきたいです。
文化の振興だとか、優れた作品の発表発掘とか、そういうのを目指すのが映画祭ですね。「東京国際映画祭」は具体的に部門別にわかれてるのはご存知だと思います。コンペティション。これが大会の花と言われてるんですけども、コンペの最優秀賞は「東京サクラグランプリ」って言うんですけど、こちらも楽しみです。映画ファンの方はぜひ「東京国際映画祭」で検索して見ていただくと詳しいことがわかります。…ということで第38回を迎える「東京国際映画祭」のお知らせでした。
鈴木 ありがとうございます。
荒木 ところでダイちゃん!山梨の山は、紅葉はどうなんですか?
鈴木 進んでます。
荒木 山梨の山と言えば富士山なんですけど。「GOGO富士山」。
鈴木 よくご存知じゃないですか、「GOGO富士山」。
荒木 ダイちゃんのことは何でも知ってますからね。ダイちゃんが富士山にはてっぺんまで登っていないってことも知ってますから。
鈴木 あらっ、8.5号目で断念。鈴木ダイですから。
荒木 でも、いつかは登りたいでしょう?
鈴木 ヘリコプターか何かで頂上まで連れてってもらえれば一番いいんですけどね。
荒木 まあね、山梨の方は意外に登ってないかも。
鈴木 そうなんだ、富士山は登るもんじゃなくて、眺めるもんだと言ってる方いますよ。
荒木 東京タワーと同じ感覚ですね。東京都民のね。
鈴木 都民にとってそうですよね。
荒木 ということでちょっと前置き長くなったんですが、今日は登山家。
それも女性登山家を主人公にしたドラマで、ちょっと先の10月31日公開の『てっぺんの向こうにあなたがいる』という作品です。この映画は1975年に女性として初めてエベレスト登頂に成功した登山家・田部井淳子さん、ご存じですよね?彼女の人生をモデルとして描いた作品です。



鈴木 これは劇映画ですか?
荒木 ドラマです。主演は吉永小百合さん。ドラマの中では田部順子さんという名の主人公です。紛らわしいですがフィクションなので「田部井」さんじゃなくて、「田部」さんです。
物語です。もう50年くらい前1975年。日本エベレスト女子登山隊の副隊長兼登攀隊長として、世界最高峰のエベレストの女性世界初登頂に成功した田部井淳子さんです。
当時はすごかったです。その偉業は世界を驚かせてご自身や友人家、族たちに栄誉を与えましたけども、彼女の登山家としての挑戦はその後も続いたんですね。よく知られてない部分なんですが晩年には病気と闘いながら、周囲を巻き込み山に登り続けたんですね。
鈴木 人生という山に登り続けたんじゃないですか。
荒木 いいこと言いますね(笑)。壮大なスケールで1人の女性の詳細を描いたということなんですけども、映画全体を通して描かれるテーマは山に登ることより、その先に何かを見るっていうことでしょうか。タイトルが象徴してますね。華やかな偉業の裏にある苦悩だとかね葛藤だとか、家族、仲間。そして挑戦をやめない人間の強さとかね。
鈴木 周りの人も大変でしょうね、いろいろ。
荒木 そうなんですよ。吉永小百合さんの124本目の映画出演作なんですね。田部さんを演じる吉永さゆりさんの他、佐藤浩市さん、天海祐希さんとかね。それから若い時の田部さん役にはのんさんです。阪本順治監督作品です。
鈴木 豪華ですね。
荒木 そうなんですよ。さっき言ったように単に登山映画じゃなくていろんな要素が詰まっています。時代は昭和なんで山登りはもちろんのこと、男の世界なんですよね。女性の山登りなんてちょっとあんまり考えられなかったですね。「山男の歌」って知ってます?
鈴木 なんとなく。♪…♪…どういう曲だっけ?
荒木 「娘さん~、よく聞けよ~♪」
鈴木 「山男には惚れるなよ~♪」か!!
荒木 それです(笑)。象徴的ですよね、「山男」山は男のモノだって言うね。
だけど映画の中では、吉永さんはそれを女のメッセージに変えて歌っているんですよ。
「男ども、よく聞けよ。山女には惚れるなよ。♪」って。
鈴木 でも、山女って単語、あまり耳にしないですよね。
荒木 そうなんですよ。山女って、なんか動物見たいな(笑)。
鈴木 ちょっとYUMAですよね(笑)。
荒木 当時の女性の登山は山への挑戦でもあると同時に男社会という険しい山への挑戦でもあったんですよね。女性だけの登山クラブを立ち上げて、女性たちが困難に挑む姿っていうのを描いています。当時の女性の悩みっていっぱいあったんですね
それはさておき、実は、私30年ほど前ですけどネパールのヒマラヤで、本物の田部井純子さんに会ってるんですよ。
鈴木 ちょっと荒木さん!しかもネパール行ってるしー!どういうことですか。
荒木 94年でしたかね、「ホテルエベレストビュー」ってホテルがあったんですけど、何故行ったかっていうと長くなるんで言わないんですけど(笑)。4,000mぐらいのところにあるんですよ。エベレストが目の前に見えるんです。
鈴木 4,000m、荒木さんはそこまで行っているわけですよね。
荒木 行ってます。
鈴木 富士山より上じゃないですか。
荒木 もちろん。1泊してるんですよ、そこで。さすがにちょっとエベレストには登らないですけど、正面に数々の峰が素晴らしい景色で。
鈴木 でしょうねー!
荒木 私はもともと無神論者ですが、その時は神はいるんだと思いましたよ。神しか作れないと思いました。こんなものは…。
鈴木 なんか、ちょっとわかるような気がします。
荒木 本当に素晴らしかったですよ。そして「ホテルエベレストビュー」って 日本人が作ったホテルなんですね。
鈴木 それ、空気薄いんですか?やっぱり。
荒木 薄い薄い。高山病って辛いよ、頭痛くて息苦しくて。
鈴木 じゃあ、ホテルに入ってゆっくりくつろぐとかワイン飲むって場合じゃないじゃないですかそれ。
荒木 一番基調で高額なのは、そこでは酸素でしたね。酸素ボンベ。ご馳走でした(笑)。そこに行った時に田部井さんとお話したんですよ。偶然いらっしゃって。55歳ぐらいの時かな。いろんなこと話してくれました。
鈴木 荒木さんの方で声かけたんですか。
荒木 もう有名な人ですから、みんなに囲まれてましたから、田部井さんだと思って私も話に加わったんです。元々、僕 山国育ちで、周り山ばっかで、山なんか興味なかったんですけど、そこに行って以来、田部井さんとお話して以来、毎年、年に一度ぐらいは2,000mぐらいのところに登るんですよ。
鈴木 えっ!?ちょっと荒木さん!また初めて聞くよ、そんなー。
荒木 登山って、最近はちょっと楽しいなと。そんなに登山趣味っていうことじゃないんですけどね。
鈴木 ハイキングっていうか、そんな感じなんですか。
荒木 トレッキングだね、簡単な。そういう意味で今の趣味のひとつにしてるんで、その目を開かせてくれた人っていう感じだと思いますよ。
鈴木 いい話じゃないですか(笑)。
荒木 ということで、山の映画でもあるんですけども、人間の田部井淳子の人生と、それを取り巻く夫婦だとか挑戦の映画なんだというふうに、非常に優れた映画だと思いました。先ほどご紹介した「東京国際映画祭」のオープニング作品でもあります。
10月31日公開の映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』、ご紹介しました。
鈴木 素敵なご紹介ありがとうございます。
荒木 次は最後、今週の音楽関連映画やります。
今週は10月24日公開の「フジコ・ヘミング 永遠の音色」という作品です。
フジコ・ヘミングさん、ご存知ですよね。

鈴木 もちろんですよ。
荒木 昨年、92歳で亡くなりましたけど、魂のピアニストと呼ばれてますよね。彼女の映画は初めてじゃないんです。この番組でも何本かご紹介したことあると思いますけど、12年間にわたって取材を続けてきた小松莊一良さんっていう人が、その心揺さぶる演奏と生きざまを描き出してるんです。
鈴木 ドキュメンタリー映画ですか。
荒木 ドキュメンタリーです。プロフィールについてはあんまりね、皆さんご存知なんで。スウェーデンのハーフとしてベルリン生まれ東京育ち。耳がちょっと両方とも不自由だったと言われてますよね。ヨーロッパでコンサートを行い、日本に帰国してブームになったということです。
鈴木 一時期、フジコ・ヘミングさんって誰もが知ってましたもんね。なんか普通に音楽にあまり興味ないような方でも、皆さんね。
荒木 そうです。まあちょっと個性的な人でね。この人下北沢に長く住んでたんですよ。僕、何回かお会いしてお話したことあります。
鈴木 下北にお住まいあったんですか。
荒木 そうそう、「ザワザワ下北沢」って映画があって、そこにもちらっと出てたりしました。彼女の代名詞「ラ・カンパネラ」は当然 この『フジコ・ヘミング 永遠の音色』の中にも出てますし、貴重なオリジナル曲もあって、初公開を含む演奏シーンを映し出してます。60代で初めて認められて、人気ピアニストになった方なんですけど、本当に波乱万丈な人生が描かれてます。この人の 半端ない人生を振り返えります。
ナレーションは女優の菅野美穂さんです。彼女がドラマでフジコ・ヘミングさん役をやったことかららしいです。
鈴木 半端ない人生ですか。
荒木 半端ないです。はい。それとともに音楽も楽しんでいただきたいと思います。10月24日公開の『フジコ・ヘミング 永遠の音色』をご紹介しました。
鈴木 荒木さん、毎回毎回の素敵なお話、そして音楽の映画も必ず添えてくれて、ありがとうございます。
荒木 今日は、偶然に私が実際に出会ったことがある方が出演した作品でしたんで、そういう意味じゃ思い入れもありました。
鈴木 ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。